[448] エマ・ストーンとライアン・ゴズリングが語る『ラ・ラ・ランド』


『セッション』で一躍脚光を浴びたデミアン・チャゼル監督によるミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』が12月9日からアメリカで劇場公開されています。8月末のヴェネチア国際映画祭を皮切りに約3ヶ月の間に20近くもの映画祭で上映され、前評判も非常に高かったためか、現時点では全米5館での限定公開であるにも関わらず全米ボックス・オフィスで15位にランクイン、1館あたりの1日の興行収入では歴代2位の記録をつくったといいます。[*1] 本作がこれほど話題となっているのは、もちろんチャゼル監督の脚本や演出、ジャスティン・ハーウィッツ作曲/ベンジ・パセック&ジャスティン・ポール作詞による劇中歌が評価されているからですが、主演のエマ・ストーンとライアン・ゴズリングのパフォーマンスによるところもかなり大きいでしょう。ちょうど12日に発表されたゴールデングローブ賞、14日に発表されたばかりの全米映画俳優組合賞にもふたり揃ってノミネートされており、もちろんアカデミー賞へのノミネートも有力視されているようです。今回はこのふたりが『ラ・ラ・ランド』について語ったインタヴュー記事[*2][*3]をもとにこの作品についてご紹介していきます。

『ラ・ラ・ランド』はロサンゼルスを舞台に、それぞれショービジネスの世界で成功することを夢見る女優の卵のミアとジャズピアニストのセバスチャンの出会いと別れを描く恋愛映画であり、ミュージカル映画です。
エマ・ストーンは14~15年に上演された『キャバレー』でブロードウェイデビューを果たしており、ライアン・ゴズリングもデッドマンズボーン(ザック・シールズとのデュオ)名義での音楽活動に加え、13~15歳の時にはジャスティン・ティンバーレイクやブリトニー・スピアーズとともにTV番組「ミッキー・マウス・クラブ」に出演していたわけですから、音楽的素養にも恵まれたふたりだと言えます。しかし、両者ともに自分がミュージカル映画に出演することになるとは想像していなかったとのこと。
エマ・ストーンは幼少のころからブロードウェイに立つことを夢見ていたものの自分にミュージカルはできないと思っていたといいます。
「ユースシアターに在籍していた時はミュージカル劇にも出演したし、ボイストレーニングやダンスレッスンも受けていたわ。でも自分にはブロードウェイに立てるほどのスタミナも歌唱力もなかった。『ラ・ラ・ランド』の素晴らしい点のひとつはね、ミュージカルをやる能力はある程度は求められたけど、技術的に完璧である必要がなかったということ。私は決してサットン・フォスターやイディナ・メンゼルに匹敵することはないけれど、この作品では彼女たちになる必要はなかったのよ」
「(撮影時に生で歌ったオーディションのシーンについて)歌えるようになるまでに時間が必要だった。沈黙の時間が。撮影前は気持ちを押さえ続けることに集中したわ。あの場面はすごく楽しかったしやりがいもあった。歌うときに『キャバレー』の最後の場面、毎晩やっていたサリー(『キャバレー』のヒロイン)がステージですべてをさらけ出して歌う場面を思い出したわ。ミアはあの瞬間に自分の殻を破るの。“くそっ、私は夢見る愚か者だ。これが私、あらゆるものを失ってもまだ私はここにいるわ”ってね」

一方、特にミュージカルのファンではなく、この映画への出演を決めたのも「“わお、ミュージカルをやれるチャンスだ”と思ったからじゃなくて、この映画をつくる人たちと彼らの関係性があったから。自分がそこにどうやって関わっていくかが大事なことだった」というライアン・ゴズリングは、本作のミュージカルシーンについてこのように述べています。
「僕らは登場人物が歌うときに、突然別のキャラクターにならないようにしたかった。この映画の登場人物たちは歌やダンスを通して心を通わせていくんだ。だからキャラクターに一貫性を持たせたまま歌うために様々な方法を模索した。僕が演じるキャラクターは皮肉屋で時に辛辣、そしてちょっと熱しやすい人物だ。だから彼がわざとらしく大袈裟に歌い出すのは変だろう。だから彼はどのように歌うのか、歌への取り組み方を考える必要があった。彼は歌手でもないから、ただ音楽を通して自分自身を表現しているだけなんだ」
「デミアンたちはダンスシーンをワイドショットかつワンテイクで撮りたがった。つまり混乱したら、そのテイクが台無しになる状況さ。“本当にこのテイクを台無しにすることなく、ワンショットで撮ることなんてできるのか?”って思いながら撮影に臨んだし、一種の賭けでもあった。だからみんなが見ているのは綱渡り的な行為なんだ。ミスしたらすぐわかっちゃうしね。でも何らかのトリックを使うより、その方法のほうがずっと観客を引き込むんだ」
また、ゴズリングはエマ・ストーンとの共演が『ラブ・アゲイン』(11)、『L.A.ギャングストーリー』(13)に次いで3度目だったことも役立ったといいます。
「彼女と仕事するのは楽しいし、やっぱりよく知らない人間とやるよりはいろんな場面に一緒に携わってきた相手とやるほうがうまくいくものだ。それぞれ相手がどんなふうに台詞を言うかを聞き、どういうふうに演じるのかを見ることで互いに呼応し合うわけだから。この映画では彼女と僕に役者同士のダイナミズムをつくるという点でかなり即興的な要素が求められていた。それはただ台詞を読むのとはかなり異なる要素で、速記的な演技といえばいいのかな。面白かったよ」

『ラ・ラ・ランド』で語られるのは、夢への希望と挫折、それにともなう恋愛関係の変化といった、これまでもたくさんの映画で語られてきたオーソドックスな物語です。でも現在においてこの作品がこうして多くの観客に支持されるのは何故なのか。エマ・ストーンはその質問にこう答えます。
「この映画には独創的な何かがあり、観客はそれによって楽しみを得られると思うの。2時間の逃避でもあるけれど、同時に希望や創造力の重要性を思い出させるし、希望がなくなったと感じた時でもまだ夢を見ることはできると教えてもくれる。映画を観た人が自分のより深い部分、胸が張り裂けるような思いや愛情、私たちの人生においてそういった感情が共有されていることを思い出してくれたらいいなと思う。どんな時代でも新しいものを作ることはできるし、独創的でユニークなものを作る術はまたまだたくさんあるのよ。どんな世界情勢であってもね」

『ラ・ラ・ランド』は日本でも来年2月24日から公開される予定です。

*1
http://variety.com/2016/film/box-office/la-la-land-box-office-2-1201939356/

*2
http://time.com/4588441/emma-stone-la-la-land-interview/

*3
http://www.latimes.com/entertainment/movies/la-et-mn-la-la-land-ryan-gosling-20161201-story.html

黒岩幹子
「boidマガジン」(http://boid-mag.publishers.fm/)や「東京中日スポーツ」モータースポーツ面の編集に携わりつつ、雑誌「nobody」「映画芸術」などに寄稿させてもらってます。


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