120a2ac24d73d270f1f486754a65fe08-640x360

CPH PIXはコペンハーゲン内に点在する映画館で約2週間に渡り新しい時代を担う映画監督を発掘する映画祭。デンマークで一番大きい長編映画の祭典であり、今年は10月末から11月頭に開催され、テレンス・デイヴィスの特集上映なども行われた。今年度初めて設けられたBest Children’s Filmに選ばれたのがスウェーデンの女性監督Alexandra-Therese Keiningの新しい長編作品『Girls Lost』だ。

それは彼女たちが願えばその度に男の子に変身することができるというもの。
スウェーデンの女性監督Alexandra-Therese Keiningの新しい長編作品『Girls Lost』は大人になっていく過程でアイデンティティの狭間に立ちすくむ少女たちを新しい視点から物語る。自分とは何か。性別を超えていくことによって見出されるそれぞれの新しい「自分」、いままでどこかにあった違和感を解きほぐされていくような発見。影と光が交差する中でどこか非現実的な雰囲気ながらも実は私たちの意識や想いの世界を現実の世界と重ねている、そんな印象を予告編から受ける。監督のAlexandra-Therese Keiningの前作『Kiss Me』では婚約した後に違う女性に惹かれていく女性のアイデンティティの葛藤を描いている。

今作品はスウェーデンでベストセラーとなったJessica Schiefauernによるヤングアダルト小説『Pojkarna』(The Boys)の映画化となっているが監督自身の新しい設定や理解、世界観が現れた作品となっている。今作品の制作過程についてのインタビューを紹介していきたい。

—最初の目標、どんな映画がつくりたいと思って始めましたか?
いままでとは全く別のものがつくりたいと思っていました。原作を読んだ時に「これだ」と思ってどうやったら
あの不思議な雰囲気を出していけるか撮影監督や音響、特殊効果などの分野で一緒に吟味しました。

—魔法的な世界のどこに惹かれますか?
まるでおとぎ話を魔法を使って作り上げたみたいな感じ。
性別にもアイデンティティにも流動性があってその夢心地のような雰囲気に
昔からとても惹かれていたからというのもあります。

ーどうやって女性版と男性版のそれぞれの役者を見つけたのですか?
700人くらいをスクリーンテストしました。それも全員演技経験のない10代という風に絞り込み、
物理的な相似ではなくて二人の価値観や物事の見方が似ている同士でそれぞれの性別で探しました。

—どのようなアーティストからインスピレーションを受けていますか?
若い頃にヴァージニア・ウルフのオーランドを読んでその後サリー・ポッターの映画を
観たところから今回の二人の役者に一人の役を演じてもらうというアイディアが浮かびました

—同時に自分の個人的な経験からインスピレーションを持ってくることはありますか?
あります。撮影を始まる前にあるシーンや設定の夢を見てそれが書いた脚本と違う場合があります。
その時は自分の夢で見た通りに撮影るすようにしています。自分の考えや感情に直接的につながっているような気がしてとても好きなプロセスです。

—前作品と同じ撮影監督と一緒に制作していますが今回は以前よりもさらに影を多いような印象を受けます。
おとぎ話のもう少しゴシック的な側をより強調していると言えますか?
はい。影のシーンが多く、また影が長いという設定を再現しようとしました。
おとぎ話の中の魔法的な非現実の感覚が現実に存在しているような世界を
作りたかったのでそれに少しでも近づけていくために全力を尽くしました。

—監督の作品はどれも自分の自由を探していく中で自分を含めたくさんの人たちが傷つきます。映画監督して自分自身と対峙していく過程が平坦ではないことを登場人物たちに投影していくことは重要だと思いますか?
とても重要です。私は自己発見やアイデンティティの問題にとても惹かれます。それは時には性的なテーマにもなりますが大人が同じような問いを持つことがもっとあってもいいと思います。「自分は誰?正しい場所にいる?自分の生きたいように生きているのかあるいは決められた道を歩いているだけ?」と。そしてその答えはノーかもしれないけれどその自由と自分を得るために周りを振り切り始めることで初めてたどり着ける場所かもしれないからです。

年齢関係なく常にまとわりついてくる「自分」という問題は他者との関係性によって見えてくる、そんな世界を描いていくAlexandra-Therese Keiningが次に誰にスポットライトを当てていくのか。それはすべての人だということ。

『Girls Lost』は11月4日に劇場とオンデマンド公開となっている。

Girls Lost offical site

CPH PIX

*1 INTERVIEW: ALEXANDRA-THERESE KEINING TALKS GIRLS LOST

mugiho
好きな場所で好きなことを書く、南極に近い国で料理を学び始めた二十歳。日々好奇心を糧に生きている。映画・読むこと書くこと・音楽と共に在り続けること、それは自由のある世界だと思います。


コメントを残す