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今月の28日からニューヨーク・ウォール・ストリートで開催されるゴッサム・インディペンデント映画賞のラインアップが先日発表された。それほど大きな規模の映画祭ではないが、インディ映画のスタート地点としては絶好の場となるこの映画祭は今年で26年目を迎える。主催者であるIndependent Filmmaker Project(IFP)は1979年に設立されたインディペンデント映画のためのNPO団体だ。過去35年の間にサポートした8,000ものプロジェクトには現在インディ映画界で活躍するミランダ・ジュライ、マイケル・ムーアやベン・ザイトリンなどが参加している。

今回のラインナップも近年同様にこれからブレイクしていくであろう作品たちが並ぶ。(過去にはアカデミー賞受賞のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作品『バードマン』もここで長編・俳優部門で受賞している)

今年インディ界で大きく取り沙汰されている『Moonlight』が長編部門、脚本、そしてキャストメンバーの特別審査員部門の三つにノミネートされている。([420] 秋の映画祭で注目を集める黒人映画『Moonlight』)いままでの映画にはなかった多様な映画を組み込んでいく第一歩として今年は各地の映画祭でこの作品がノミネートされていくことになるだろうが、ゴッサム・インディペンデント映画賞はこの時期に開幕する大きな映画祭の先駆け的存在として今作品をさらに広めていくことになるだろう。

同時にもうひとつ黒人映画としてノミネートされているのがジェフ・ニコルズ監督・脚本の『Loving』だ。1967年アメリカ・ヴァージニア州で白人男性リチャードと黒人女性ミルドレッド、愛し合う結婚したふたりの行為が違法とされ有罪にされる。最高裁判所までの彼らの闘いを描いた作品。派手な脚色をせず、実話に忠実に描いた今作品は主演男優部門、主演女優部門にノミネートされている。リチャードを演じるのは『華麗なるギャッツビー』や『ブラック・スキャンダル』のオーストラリア出身ジョエル・エドガートン、ミルドレッドを演じるのはルース・ネッガ。この作品での演技を絶賛された彼女はアイルランド出身でエチオピア系であるというバックグラウンドを持つ。*

撮影監督のアダム・ストーンは雑誌『Life』に連載されていたグレー・ビレットによる写真エッセイを参考にしたと述べている。広角で撮られたその作品はどれも自然なふたりの姿を納めている。

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「この物語は甘美にみせたり、ドラマチックな演出はしたくなかった」
アメリカでは11月4日が決まっている。

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3部門にノミネートされた『Manchester by the Sea』はケネス・ローナガン監督三作目の長編作品。ある日突然亡くなった兄の息子の後見人となったリー(ケイシー・アフレック)は死の悲しみ以上に自分の心をえぐる過去の問題と向き合っていく。

ドキュメンタリー部門にはキース・メイトランドによる『Tower』がノミネートされている。1966年にアメリカ・テキサス州で起こった大学キャンパスでの乱射事件を過去の実際のビデオ映像とアニメーションを使い一人称のインタビュー形式で蘇らせたものだ。今年度のサウス・バイ・サウスウエスト映画祭ではドキュメンタリー長編審査員大賞を受賞と共に観客賞をも受賞している。カラフルなアニメーション映像とは裏腹に繰り広げられる96分間に渡る乱射事件の始終。過去をいまこの瞬間に再構築する衝撃的な作品だ。

ゴッサム・インディペンデント映画賞は11月28日に発表される。

[参考] Gotham Awards 2016: ‘Manchester By The Sea’ Leads With Four Nominations, ‘Moonlight’ and ‘Paterson’ Also Dominate

mugiho
好きな場所で好きなことを書く、南極に近い国で料理を学び始めた二十歳。日々好奇心を糧に生きている。映画・読むこと書くこと・音楽と共に在り続けること、それは自由のある世界だと思います。


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