カンヌ映画祭に出品され、話題を呼んだアブデラマン・シサコ監督『Timbuktu』が、アカデミー賞の外国語映画賞にモーリタニア代表としてノミネートされたことで再度注目が集まっている。
監督は、マリ共和国に生まれ、モーリタニアで育ち、現在はフランスに住んでいるアブデラマン・シサコ。本作は彼の4本目の長編作品である。街の占領時の紛争に巻き込まれて死んだ恋人たちの報道に基づき、マリに住むイスラムの人たちの間に根強く残る文化の対立、言語の壁などの根強く残る影をフィクションの形で強烈に映し出した。
Filmcomment誌で行われた監督のインタビューを以下に訳出する。
――あなたの映画は欧米の国にアフリカ的な視点を伝えようとしているように見えます。どうやって撮影にはどう取り組みましたか?
はっきりとした意思をもって作ったわけではありません。違いを強調しようとしただけです。住むところに関係なく人間は等しく、しかし人間像は同じではないというのが僕の考えた問題でした。どこの文化もそれぞれの問題を孕んでいて、その問題の違いが、人間が住んでいる場所によって違っているように見える原因なのです。アフリカの人々は、西洋人から見ると不思議な暮らしをしているように見えます。それが実はヨーロッパの人たちと変わらない生活をしていたとしても。本当は、地理的な住むところの違いや、現在起こっているような対立の違いが、特異性を与えているのです。
――ナイジェリアのノリウッドのおかげで、アフリカは映画産業において3番目に大きい市場です。その数字だけで欧米とのギャップを感じさせなくなっていますが?
事実として、ナイジェリアは今、巨大な映画産業があります。それは、ナイジェリア国内で消費される映画です。しかし同時にナイジェリアは、大量のタイヤと大量の偽物の薬を作っている国であることを忘れてはいけません。生産性がものを言う国で、ナイジェリアにおいては、質は二の次なのです。車の部品も作っていますが、広く普及するようなものではないと思います。とはいえ映画においては、彼らの映画を見ると、ナイジェリアでの彼らの日常が反映されていてとっても面白いと思います。
――この映画を撮影するにあたって、報道の他に基にしたものはありますか?
インスピレーションを受けたのは、そこに住む人々からでしょう。ご近所さん、ご近所さんのご近所さん、牛乳屋さんのお兄さん――出会ったすべての人です。普段何をしているか誰も知らない「匿名の」人と言ってもいい。僕が電車や、道端で見かけた10歳の子供を持つ女性も、誰なのかは全くわからない。でも、彼らもまた僕にインスピレーションを与えてくれるんです。
――『Timbuktu』には、様々な立場の人が出てきます。完全にストーリーからは独立した人もいますね。そういった人たちには編集過程でどのようにアプローチしたのでしょう?
一本の筋の物語のあるような映画でないのは事実ですね。ちゃんと筋の通った脚本がもともとあって、その通りに撮影して編集するなら場所は関係なく作ることができるのですが、僕はトゥンブクトゥという場所で撮影しながら考えながら、いろんな人と出会って面白いアイデアを付け加えながら撮影するのが好きで、僕にとって映画を撮ることはそういうものだと思うのです。その時その時の感覚で撮影した沢山のイメージをよく考えて繋げる必要があるので、僕の映画それ自体は、とっても脆いものなんだと思います。その時々で撮ることができた生き生きとしたイメージを並べるのは楽しい。
――撮影の計画を立てている段階で、撮った映像すべてがうまくつながると思っていたんですか?
撮りながら考えました。頭の中にたくさんアイデアを組み立てていくのですが、それは僕と違う考え方をする人と一緒に映画を撮っていると、しばしばトラブルが生じるからです。撮影をしながらその都度変えるところは変えていきます。
カンヌ映画祭の他にも、すでにいくつかの映画祭で受賞しており、オスカーの行方も気になるところ。日本での公開は未定。
則定彩香(のりさだちゃん)
カンヌ映画祭HP ストーリーはこちらから
http://www.festival-cannes.fr/jp/theDailyArticle/60753.html
Filmcommentインタビュー
http://www.filmcomment.com/e…/interview-abderrahmane-sissako
Timbuktu IMDb
http://www.imdb.com/title/tt3409392/


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