今年は第二次世界大戦のナチスによるホロコーストから、70年に当たる年です。そのことと関連して日本で2月には、『ショア』のクロード・ランズマン監督特集が行われます。これからも改めて考えなければいけない難しい問題であり、いまだにホロコーストを巡って多くの映画が製作されます。今回取り上げる『Night Will Fall』もそのひとつに当たります。(以下「」内を引用として交えながら紹介させてもらいます)
「70年前の強制収容所解放時にイギリス・ソ連・アメリカの連合国側はその惨劇に驚き、兵士やニュース映画のカメラマンにベルゲン・ベルゼンやダッハウ、アウシュヴィッツ強制収容所を記録させました。その映像は『German Concentration Camps Factual Survey』という映画にして、1945年ナチス政権崩壊後のドイツで公開が試みられました。(…)しかし、アルフレッド・ヒッチコックが監督しているにもかかわらず、1945年版の映画は完成させられませんでした。」(*1)
このヒッチコックによるドキュメンタリーは未完成ながら他の記録とともに保存されました。(今年その映画が70年後にデジタル修復され、編集も本来のかたちに修繕されて公開されることにもなったようです。)
「『Night Will Fall』は今年の初めにベルリン国際映画祭でプレミア上映され、そのあとシェフィールド国際ドキュメンタリー映画祭やコペンハーゲン国際ドキュメンタリー映画祭などを含む幾つかの映画祭で上映されました。シドニー・ベルンシュタインやリチャード・クロスマン、アルフレッド・ヒッチコックを含む映画製作チームが、共和国軍が解放するときに発見した否定しようのない証拠、を見せるために映画を共同して作ったことについて、この映画は問いを深めて行きます。」(*2)
つまり『Night Will Fall』は、1945年に公開されようとした映画についての、強制収容所解放時に撮影された映像についてのドキュメンタリーです。注目されているのは昨年話題を呼んだ『アクト・オブ・キリング』のアンドレ・シンガーが制作総指揮を務めており、数々の生き残ったひとやその場に居合わせたひとたちへのインタビューとアーカイヴからの引用で映画が構成されることです。果たして、どのような視点を我々に与えてくれるのか、参考にレヴューを引用すると
「一言で言えば、政治です。戦争が終わるとプロパガンダ映画がアメリカやヨーロッパで問題になりはじめました。何千人もの強制収容所からの生還者たちが行き場所を失い問題になります。ですがまったく信じられないほど驚いたことがあり、多くの連合国側の国が彼らの受け入れを渋ったのです。ベルンシュタインとヒッチコックの映画から見えてくることですが、政治家は公共の民衆が犠牲者に対する同情の念を抱くことを恐れ、犠牲者に専用の避難所を与えたいと思っていたのです。ここがSingerによる映画が真に歴史を捉えているところだと思うのです。ヨーロッパが再編し、ドイツが復興し、いま向かっている新しい世界をどうしていくかという戦後政治の状況が、何故『Factual Survey』が最終的にお蔵入りになり長らく公開禁止となっていたのか、を理解するうえで極めて重要な点であることを示しているのです。」(*3)
この『Night Will Fall』は先日、アメリカ、ドイツ、フランス、イギリス、ポーランド、スイス、イスラエル、デンマーク、スロベニア、フィンランド、ノルウェー、ポルトガル各国のテレビで放映されました。日本でも公開はされるのでしょうか、是非『Factual Survey』と合わせて見ることで考えてみたいです。
(*1)http://www.latimes.com/…/la-et-st-hbo-night-will-fall-alfre…
(*2)http://variety.com/…/holocaust-doc-night-will-fall-gets-gl…/

(*3)http://blogs.indiewire.com/…/review-documentary-night-will-…
参考
『アクト・オブ・キリング』公式サイト
http://www.aok-movie.com/
三浦 翔
横浜国立大学3年/映画雑誌NOBODY


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