[429]ジェームズ・グレイ最新作『The Lost City of Z』が初上映


先週末、ニューヨーク映画祭でジェームズ・グレイ監督の最新作『The Lost City of Z』がワールドプレミアとして上映されました。
『The Lost City of Z』はグレイにとって『エヴァの告白』(2013)以来の長編映画になりますが、そのプロジェクトは前作以前、約10年近く前から始まっていたそうです。しかし主演男優の降板――最初はエグゼクティブプロデューサーを務めるブラッド・ピットが主演する予定だったけれど降板、その後白羽の矢がたったベネディクト・カンバーバッチも妻の妊娠により辞退したとのこと――、大手スタジオが手を引いたことによる資金難の問題――パラマウントの撤退により一時は暗礁に乗り上げたものの、アマゾンとブリーカーストリートが配給権を獲得したことで完成・上映までこぎつけた――など、さまざまな困難を乗り越えなければならなかったといいます。そして、グレイ自身も過去2作『トゥー・ラバーズ』『エヴァの告白』の興行的失敗や不評の声に「しばらくの間心が折れ、立ち直るのに長い時間がかかった。でも一度その苦境を体験したことで肩の荷が下りたのも事実だ」と告白しており、本作をグレイの“復帰作”として見る向きも多いようです。ではその内容は――

『The Lost City of Z』の主人公はチャーリー・ハナムが演じる、英国の探検家パーシー・フォーセットです。インディ・ジョーンズのモデルとも言われている20世紀初頭に活躍した探検家で、特にアマゾン奥地に眠るといわれる伝説の都・エル・ドラード(本人はその都市を“Z”と呼んでしました)を探した人物として知られ、本作でもその伝説の都市を探す3度に渡る旅が描かれています。原作となったのは、フォーセットの業績を調査し、その足跡を追って自身もアマゾンのジャングルに足を踏み入れたデヴィッド・グランの著書『ロスト・シティZ』。グレイは原作と映画の関係について上映時にこのように説明しています。
「デヴィッド・グレンの本は彼自身がジャングルに入る部分と、フォーセットの人生について記された部分で構成されていますが、私の映画では本の半分(フォーセットの人生)を取り上げています。それは私の導きによってジャングルを描くような内容にはしたくなかったからです。かといって私は伝記映画を作りたくもなかった。ただフォーセットについてだけ語るのではなく、ひとつの時代について言及したかったんです。先達たち、そして今いる私たちが何者であるかを問うだけではなく、両者がいかに同じ闘いに挑んでいるかを描きたかったのです。新聞の一面を見ればいまなおこの社会が家父長制に支配されていることが簡単にわかるでしょう。ですから私にとってシエナ・ミラーの役柄(フォーセットの妻・ニーナ)はかなり重要なものでした。持続的な影響を及ぼす作品をつくるためには自分たちの共感を拡張させることが不可欠です。ですから私はフォーセットについて語る上で彼女の役柄、そして(ふたりの息子ジャックを演じる)トム・ホランドや彼の副官であるトム・パティンソンの役柄により重点を置き、その人間性を重視しました」「私はニーナという役柄をただ妻であるだけではない女性として描く方法を探りました。なぜならあの時代において彼女は非常に男性的で女性を蔑視する社会と闘っていたはずだからです」
一見して実在する冒険家の果てしない冒険譚を描いた作品に見えるこの作品は、彼と長年離れて暮らしながらも妻であると同時に自分の人生を歩み続けた女性と、父親と日常的に接することなく育ちながらもその後父親とともに旅をする人生を選んだ息子との関係性を主題とする家族映画でもあるのです。つまり本作はグレイが初めて実話を元に撮った冒険映画でありながらも、その主題は『リトル・オデッサ』や『アンダーカヴァー』といった過去の作品から引き継がれていると言えるでしょう。
映画評論家のオーウェン・グレイバーマン氏はVariety掲載の作品評でこのように書いています。
「ジャングルのシーンは、風を切る鋭い音を立てる武器を持つ原住民や野生の生き物、泥の中での孤立など、スリルに満ちている。しかしフォーセットの家庭生活を描く温かな場面によって均衡が保たれている。彼の妻は、彼が自分のミッションを遂行するのと同じ執拗さで彼をサポートする。ふたりの間には3人の子供が生まれるが、夫が育児に携わることはほとんどない。しかしこの映画はそのことを人間味のある犠牲として扱っている。(フォーセットを演じる)ヘナムの生命力に満ちたパフォーマンスは博愛のひとつのかたちを示している。この映画においてひとつのポイントとなるのが、彼の長い不在を非難していた長男のジャックが父親と和解し、一緒にジャングルへの長旅に出る場面だ。パーシー・フォーセットの伝記において最も有力な説として伝わっているのは、彼がその旅で消息を絶ったというものである。グレイはその時一体何が起こったのか想像することを余儀なくされるが、それによって彼の映画監督としての力量を示している。映画は詩的な運命の記録によってクライマックスをむかえるが、不思議なことにそこには希望があふれているのだ」

そして、もちろんこの『The Lost City of Z』の最大の注目点のひとつはコロンビアのジャングルで撮影された映像です。これまで一度もデジタル撮影をしたことがないジェームズ・グレイは(いわく「簡単な理由だ。35㎜のほうが良いからだ」)本作でもすべての映像を35㎜のセルロイドフィルムで撮影しています。撮影監督はデヴィッド・フィンチャーの『セブン』やウディ・アレンの『ミッドナイト・イン・パリ』、そしてグレイの『エヴァの告白』を手掛けたダリウス・コンジが担当。長期に渡るロケでフィルムがだめになったこともあったそうですが、グレイは「好き嫌いに関わらず、デジタルではこのような映像は撮れなかった」と断言しています。

『The Lost City of Z』は来年4月から劇場公開される予定です。

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http://www.latimes.com/entertainment/movies/la-et-mn-lost-city-gray-20161017-snap-story.html

http://theplaylist.net/james-gray-the-cast-of-lost-city-z-talk-jungles-35mm-the-future-of-film-20161017/

http://variety.com/2016/film/reviews/the-lost-city-of-z-review-new-york-film-festival-1201890183/

http://www.indiewire.com/2016/10/the-lost-city-of-z-james-gray-trashes-digital-amazon-nyff-2016-1201736877/

黒岩幹子
「boidマガジン」(http://boid-mag.publishers.fm/)や「東京中日スポーツ」モータースポーツ面の編集に携わりつつ、雑誌「nobody」「映画芸術」などに寄稿させてもらってます。


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