フランスの映画監督アルノー・デ・パリエール(Arnaud des Palières)。彼の作品は未だ『バトル・オブ・ライジング コールハースの戦い』『Parc』など、わずかである。しかし彼の最新作である『orphan』が、先日行われた第41回トロント国際映画祭、今月24日まで開催されていた第64回サンセバスチャン国際映画祭に選出された。

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私たち自身の内面に存在する人格は一つであると言い切れるだろうか?おそらく、そうは言い切れないだろう。『orphan』は、一人の女性の人生の四つの場面を中心に、彼女の中にあるまったく違う人格と、人生という長い旅で自由を追い求める中で徐々に起こる変化を、時系列をバラバラに描いた作品である。

パリエールはとても大胆な行動に出たとcineuropaのFabienLemercierは述べている。時間軸が動き、彼女の人生の断片が現在に向かうように散りばめられ、糸を織るように曲がりくねるように進む。さらに、この作品の主人公である一人の女性の四つの場面をそれぞれ、四人の異なる役者が演じているのだ。役者が変わるのと同時に、主人公の名前も変わる。名前も顔もスタイルも雰囲気も、そして人格も異なる彼女たちに、類似点を見つけることが難しくなっているため、私たちはパズルを組み立てるように物語をつなぎ合わせていかなければならない。

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しかしそれでもつなぎ目のない映像が一つの作品に成りえたのは、パリエール監督のドキュメンタリー映画を撮っていた経験によるものである。深刻な社会や心理的レアリズムなどの繊細な表現を可能にし、彼は私たちの内面に潜みながら消えることのない力強い感情に光を照らしてくれるだろうとFabienは述べている。

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この非常に美しく巧妙で感情の動きを表現する映像の撮影を行ったのは、レオス・カラックス監督『ホーリー・モーターズ(2012)』の撮影を務めたイヴ・カペである。また、主人公を演じる四人をアデル・エネル(『水の中のつぼみ』)、ジェマ・アータートン(『ボヴァリー夫人とパン屋』)、アデル・エグザルホプロス(『アデル、ブルーは熱い色』)等が演じているのにも注目だ。

劇中、主人公が立ち向かう人生は厳しい。自身が解放されること、特に男性の力や暴力、社会的な決定論からの束縛から自由になることへの希望は、過去の不幸によって導かれる必然性に囚われることで繰り返し押しつぶされてしまう。しかしこれは喜びの物語であると、第41回トロント国際映画祭の公式ホームページで紹介されている。彼女はどのような終わりを迎えるのだろうか。日本での公開を待ちたい。

参考URL
http://cineuropa.org/nw.aspx?t=newsdetail&l=en&did=315238

http://www.tiff.net/films/orphan/

http://variety.com/・・・/orphan-review-orpheline-1201857892/

三浦珠青
熊本出身、早稲田大学二年生。都内の映画館でアルバイトをしています。岡崎京子と映画と本が好きです。


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