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先日、トロント国際映画祭が幕を閉じた。今年度のクロージングナイトセレクションのひとつとして選ばれたのはケリー・フレモンの監督デビュー作品『The Edge of Seventeen』。17歳の主人公Nadineはスクールカースト底辺に属しながら学校で一番人気であるという兄を持つ。唯一の友達で親友であるKristaが彼女の兄Darianに恋してしまってから彼女の守られた平和な高校生活が崩れ始める。相談に乗ってもらえるのは変人である歴史の先生しかいない、好きな男の子は自分の存在を知らない、たくさんのジョン・ヒューズ青春映画要素と監督ケリー・フレモン独自のリズミカルなコメディ溢れる作品。Nadineはたくましく、繊細にたくさんの複雑な心を抱えながら生きていく。

青春映画のポイントを押さえながらも時代の変化とともに、大きく変わってきたコミュニケーションの形や学生生活自体の形態をしっかり組み込んでいるのも今作ならではの魅力だろう。(Nadineは早速好きな男の子にとんでもないメッセージを送りつけてしまい先生に相談している)

いままでは脚本家としてキャリアを積み重ねてきたケリー・フレモンは、自分で今作品を監督することになるとは思っていなかったという。脚本を書き終え、どうしても映画化したかった彼女は尊敬しているプロデューサー・映画監督のジェームズ・L・ブルックスに脚本の原案を送った。ジェームズ・L・ブルックスはプローデューサーヤ映画監督として長く活躍している人物で、『ザ・シンプソンズ』や『トレイシー・ウルマン・ショー』のプロデューサー、アカデミー賞やゴールデングローブ賞受賞作品『愛と追憶の日々』の監督として有名である。

「最初に会った時、この作品をとても監督したい気持ちはありました。でもいつかできたらいいな、くらいに思っていました。そうしたら、彼が『これは君にしか語り得ない物語だ、君が監督したらいい』と。ショックでその言葉を紙に書いてくれますか?と思いました(笑)」(*1)

ジェームズのような大物プロデューサーと仕事をすることになったケリーは最初、とても緊張していたようだ。

「最初は本当に怖かった。でも初めて一緒にこの作品について考えたときに、彼は『まず一番大切なことは君がこの物語を通して人生について、何を伝えたいかを知ることだ』と言いました。それからも彼は幾度となく『なにに興味がある?どんなことが痛む?なにを探求していきたいのか?』という問いを投げかけてきました。彼は誰よりもこの作品の真実、言いたいことを捉えようと真剣に向き合ってくれていたと思います。常に『この辺りの細かい設定はこれでいいか?作品に忠実でいようとしているか?』と決して妥協を許さないその姿勢に、自分が本当に書きたい・撮りたい作品を作り上げることができました。」(*1, 2)

『ブレックファスト・クラブ』の監督ジョン・ヒューズや『あの頃ペニー・レインと』監督のキャメロン・クロウなど青春映画を代表する監督たちとその作品に魅せられ続けていたケリーは彼らの存在は今作品に大きく影響していると答える。しかし、彼女自身はこの作品の根本はコメディであると語っている。

「私が影響を受けてきた青春映画の数々はどれもティーンの時期の複雑な心境というものに敬意を払っているという印象を受けます。でも今作品は根っこのところではコメディであると思っています。私は常に物事の一番コアにある部分をコメディという手段を使って探そうとしています。」(*2)

今作品は原題にもあるように17歳というひとつの年齢、そしてティーン・思春期という年代にフォーカスしているが、ケリー自身はこの迷いや選択というものはいくつになっても変わらずあり続けるものだと言っている。

「この作品のアイディアは常に私たちに期待される「あるべき姿」というものについて考えていた時に浮かびました。この期待が一番と大きい時期というのがティーンの時期だと思ったのでその年代にフォーカスしました。しかし私たちが新しい毎日、選択を迫られる岐路にぶち当たるのは毎日のことで、不器用な言動や悩み痛む心をなんとか隠そうと必死になるそのプロセスを踏んでいくことで自分というものを見つけていく。そんな小さな成長というものを私たちは日々行っていると思います。」(*2)

17歳でなくとも、どこかの時点で大きな期待や迷いを体験したことのある人に。毎日のどこかに必ずある迷いと選択と失敗と涙を知るすべての人たちに向けられた作品だ。アメリカでは11月18日公開が決まっている。

*1 http://deadline.com/2016/09/toronto-the-edge-of-seventeen-hailee-steinfeld-1201820991/

*2 http://www.indiewire.com/2016/09/the-edge-of-seventeen-kelly-fremon-craig-tiff-2016-1201727552/

mugiho
好きな場所で好きなことを書く、南極に近い国で料理を学び始めた二十歳。日々好奇心を糧に生きている。映画・読むこと書くこと・音楽と共に在り続けること、それは自由のある世界だと思います。


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