台湾を拠点に活躍する若手の映画監督 ミディ・Zの最新作が世界各地の映画祭で公開されている。
今作が劇場用長編映画としては4本目になる。彼は中華系の両親を持ち、5人兄弟の末っ子として貧しい家に育った。
奨学金を頼りに16歳でミャンマーから台湾へ渡り、大学卒業後は侯孝賢の元で映画作りを学んでいた。推測するに4年生の大学だったとして「百年恋歌」あたりを手伝っていたのではないだろうか。
第1作「歸來的人」から彼は故郷のミャンマーを舞台に撮っているが、今回も同様に「The Road To Mandalay」とタイトルにはヤンゴンに次ぐ第二の都市マンダレーが使われている。

2014年に公開された「Ice Poison」のちは新作のニュースがなかったが、8月末に予告編が公開された。
ベネチア国際映画祭で今作を見たIndieWireの記者は賞賛の声を上げた「(観る者に)強く迫る悲惨な愛の物語」であると。
時代は軍事政権下のミャンマー。
タイへ逃げる一組の男女がいた。美しいリャンシンとグオという優しい男だ。主人公たちはそれぞれの理由から密入国をする。
女は貧困から逃れるために、男は出稼ぎのために、彼は再びビルマへ戻ることを考えていた。
しかし、身分証を持たない二人はまともな仕事につくことはできず、
行き場のない状況になってしまうのだ。

TAIWAN TODAYの記事では、台湾の映画監督と比較されている。
1989年に金獅子賞を受賞したホウ・シャオシェン「非情城市」、
同じく金獅子賞のツァイ・ミンリャン「愛情萬歳」1994年、
2006年アカデミーで監督賞を受賞したアン・リー「ブロークバック・マウンテン」などあるが、
彼の作品は見劣りしないという。

しかしミディ・Zをどの国の映画監督か分類するのかはとても難しい。
今回の作品は、フランス(France’s House On Fire Films )、
ミャンマー(Myanmar’s Montage Film.)、
台湾(Taiwan’s Flash Forward Entertainment,Seashore Image Productions)
そしてドイツ(Bombay Berlin Film Production)の共同出資という形式をとっており、全世界でプレミア上映が行われている。

特にドイツは移民受け入れ問題で大きく揺れており、
BBFPのカトリーナ・サッケルは、
「世界が向き合っている移民問題にとても重要な意味を持つ作品だ」と言い、
加えて、彼の作品でユニークな点は人間味があり感性あふれていることだと称している。

彼は今作の撮影に臨むのに1年の準備を必要としたという。
「俳優たちがビルマの郊外に住む農家やタイの工場で実際に働いている人たちと1年間一緒に暮らすことで、映画で見られるような親密さが生まれている。彼らは真実を感じているし、あとはドキュメンタリーを撮るように彼らを撮影すればいいんだ」
もはや役作りという領域は越えて、体験学習であるかのようだ。

現在、本作が日本で公開される予定はない。              
11月の東京フィルメックスで上映があることを祈っています。

★参照URL★
http://www.tiff.net/films/the-road-to-mandalay/
http://www.indiewire.com/・・・/the-road-to-mandalay・・・/
http://taiwantoday.tw/ct.asp?xItem=247543&ctNode=2194
http://www.screendaily.com/・・・/midi-zs・・・/5103979.article
https://m.youtube.com/watch?v=MhJMEVcBoq0

伊藤ゆうと

イベ ント部門担当。小さなラジオ局で働く平成5年生まれ。趣味はバスケ、自転車。(残念ながら閉館した)藤沢オデヲン座で「恋愛小説家」を見たのを契機に 以後は貪るように映画を観る。脚本と執筆の勉強中。


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