[150]ベルトラン・ボネロが見据える現代の若者たち


昨年のカンヌ映画祭のコンペティション部門でイヴ・サンローランの悲劇的な半生を描いた伝記映画、『Saint Laurent』を発表したベルトラン・ボネロ監督。日本では『メゾン ある娼館の記憶』の監督として知られる彼がles inrocksのインタビューで次回作について語っており(*1)、その内容は現代社会が直面する問題を主題としたものだった。
以下インタビューの抜粋:
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ベルトラン・ボネロ(以下BB):次の私の映画は『Paris est une fête』(意訳:パリのまつりごと)というタイトルで、現代のパリに爆弾を仕掛ける若者たちの行方を追うものです。時代の風潮を取り扱う作品というよりも、もっとアクション映画のようなものになるでしょう。
つまり若者によって実行されるテロリスムのようなものですね。なぜそういった題材を選ばれたのですか?
BB:それは私がこの時代の空気に感じていることなのです。こういった行為に社会的、または政治的な弁明を与えたくはないのですが、それもまた政治的と言えます。その若者たちはただ行為に準じているだけなのです。映画は実際の18歳から21歳の若者たちに焦点を当て、役者経験の無い人たちによって演じられる予定です。登場人物たちは様々な社会的背景を持っています。何故なら、「郊外だから」または「イスラムだから」といった類の烙印を押すことを避けたいがためです。
しかし、彼らは現状の苦境に対して、そのような決断を取っているのでしょうか?
BB:私はその行為を裏付ける必要性はないと思っています。何故なら、それはとても明白な緊張状態に対して示されるものだからです。おそらくですが、もし裏付けた場合は、理解の及ぶ範囲をやや狭ませることになるでしょう。しかし、私の関心があるのはもっと全般的で普遍的なものです。それに、映画はまだ出資されていません。すでに書かれてはいますが、資金を調達している段階です。
では、政治的な観点から、あなたにとって昨年はどのような年でしたか?
BB:2017年には最悪な事態になると危惧しています。また、これほどまでにグローバル化が進んだ世の中で、どのようにして政府が必要とされるのかが分かりません。政治的な観点からすると、私達が体験した危機から立ち直るには何十年もの時が必要だと感じます。別のものへと移行するためにも、完全に低迷するところまで、もう行き着くところまで辿り着かなければならないでしょう。人々が政治に対して信頼を完全に失ったことは間違いありません。それは政治家が(右翼か左翼であっても)、票を得るために、言説を変えることが可能だからです。ニコラ・サルコジは票が得られると分かれば、言説をかなり右寄りに、また真ん中にすることが出来ます。そのようなことに対する報道が、何故未だに多く取り上げられるのかが理解出来ません。もはやなんの意味もないですし、興味深くもなくなってきています。私が思うに、本当の問題は経済的であり、私達が気づかない複雑さにあります。
貴方の次回作はそういったコンテクストと繋がっているように思えます。
BB:少なくとも私にとってそれは確かです。今こそ、やらなければならないのです。『メゾン ある娼館の館』の後にやろうと思っていましたが、『Saint Laurent』を提案された際に、見送られてしまいました。早く取り掛かりたいですね。本当に今、やっておかなければならない。
その主題には何かとてつもない暴力が絡んでいますね。
BB:ええ。逆説的ですが、よく科学とテクノロジーが頂点へと達するときに、最も残酷なことが起こると思います。人間の奇妙なパラドックスです。私達は1930年代のドイツにそれを見たはずです。まるである文明が進歩の頂点へと達し、破滅に打ち沈んでいきました。もしかすると、私達も近いところまで来ているのかもしれません。
『Paris est une fête』の中では、その破滅はテロリスムといった形で現れるのですね。
BB:テロリスム以上のことですよ。問題に対する行為の欲望です。果たして発言は未だに聞き入れられているのでしょうか?政治的な発言は、聞こえなくなりました。人々の発言も、聞こえなくなりました。デモさえも、人目につかずに終わってしまうような体制の中に、完全に取り込まれています。私はこれらの3つの段階を信じています:発言、執筆、そして行動です。
現代の映画で、18~25歳たちの世代の苦悩をそこまでとらえているものは少ないです。
BB:そのことに私も気がついたのは、多くの若者たちに正規外のキャスティングをしているときで、彼らが驚くほど興味を示してくれたのです。そして私が自分の映画のストーリーを話すと、彼らは冷静に「まあ、仕方ないね」と答えるのです。爆弾を仕掛けるという事実は彼らにとって苛立たしいことでもなく、ショックなことでもなんでもないのです。
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 このインタビューはシャルリ・エブド襲撃事件が起こる数日前に行われており、まるでボネロ監督がフランス社会に漂う何か不穏な空気を捉えていたとさえ思わせる。あのような事件が起こってしまった今、この企画が果たして日の目を見ることができるのか危ぶまれるが、こうなってしまった今、むしろ完成させてほしいとさえ思う。現代社会が抱えている問題を描写する、エッジの効いた映画となるのは間違いないだろう。
楠 大史
参考資料:
http://www.lesinrocks.com/…/2014-vue-par-bertrand-bonello-…/ (*1)
http://www.france10.tv/international/4581/


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