[417]特集上映『1950年以前の女性映画監督たち』


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主に実験映画の収集・保存・上映を行っているニューヨークのAnthology Film Archivesが、‘Woman With a Movie Camera: Female Film Directors Before 1950’ と題した特集上映を今月の15日から28日にかけて開催する。

この企画では、映画の黎明期から活動していたアリス・ギィ=ブラシェ(1873-1968)や、女性で初めて長編映画を監督したことで知られるロイス・ウェバー(1881-1939)、ドイツのアニメーション作家ロッテ・ライニガー(1899-1981)、映画監督でもあり理論家でもあったジェルメーヌ・デュラック(1882-1942)など、国を問わずサイレント映画からトーキーへと移り変わっていく時代のなか活躍した女性の映画監督や脚本家の手がけた作品を上映する。*1
この特集上映についてAnthology Film Archivesは、「映画が産業の形をなして以来、映画製作における女性の役割の歴史は人々が思うよりずっと複雑なものです。サイレント映画の時代においての女性は、他のどの時代よりも制作の現場で大きな役割を担っていました。映画が完全に産業と合体する以前は、多くの女性が脚本家や撮影スタッフ、あるいは監督としても働いていたのです。映画のもつ商業的な意味での大きな可能性というものが急激に重視されるようになっていった結果、アイダ・ルピノやドロシー・アーズナーといったごく少数の例外的人物を除いて、女性は映画作りの過程から締め出されてしまいました。
映画の初期における女性監督たちの仕事は注目されるべきものであるにも関わらず、それらは殆ど知られていないままです。」と述べている。また、この上映を企画するにあたり着想を得たものとして、英Sight&Sound誌が2015年に発表した記事“The Female Gaze: 100 Overlooked Films Directed by Women” のほか、2013年に設立されたウェブ・プロジェクトWomen Film Pioneers Project (http://wfpp.cdrs.columbia.edu)の存在を挙げている。*2
このWomen Film Pioneers Project は、女性の映画監督の歴史に対する研究の発達を目的としてコロンビア大学教授のジェーン・ゲインズ氏が2013年に興したウェブ上のデータベースで、映画のサイレント期に活躍した女性たちについての情報を詳細に公開している。

Women Film Pioneers Project によると、サイレント映画期の20年ほどの間では、女性が女優やコスチュームデザイナーとしてのみならず、カメラオペレーターや劇場支配人としてなど、現代からは想像されないような形で映画に関わっていたという。映画製作における仕事は、当初は必ずしも男女の性差が意識されることはなかったようで、1923年の女性の職業リストには、電話交換手やタイピスト、帽子屋や美容師といった職業に混じり、映画編集者やスクリプター、セットデザイナーやタイトルライターなども掲載されている。サイレント映画期において女性の働き手が多かったことには、当時労働に出る女性が増えていたことが要因とされている。また、それはハリウッドに限った話ではなく、例えば中南米の国々では国の映画産業を女性の労働力が支えていたという。*3

Women Film Pioneers Projectでは、このように述べている。
「1970年代、学術的な映画研究においてフェミニズムというものが意識され始めたとき、こんなにも多くの女性がアメリカの初期の映画業界で働いていたとは誰も思っていませんでした。
女性の作家を主流たる映画監督として重要視するようになったのは、1970年代にニューヨークとシカゴで開催されたWomen’s Movement film festivalsの功績です。 この映画祭では、過去の数十年にわたり女性の映画作家が手がけた16mmや35mmのプリントが上映されました。それにより監督の仕事には大きな注目が集められ、アメリカ初の女性映画専門の雑誌Women & Film誌の紹介もありアリス・ギィ=ブラシェやロイス・ウェバーといった名前は広く知られるようになりました。1990年代になりこれらの人物は、女性の映画人の一角であるということがわかってきました。サイレント期、多くの女性が監督としては働いていませんでしたが、プロデューサーやスタッフとして働いていたのです。その後、1999年に国際会議Women and the Silent Screenが創立され、サイレント映画期における女性の役割についての研究が始まりました」*4

今回の特集上映では、ロイス・ウェバーによる1916年の作品『毒流』の新しく修復されたものが、オリジナルのインナータイトルで初めて上映されるという。
映画業界における男女間の格差は現在でも多く取り上げられる問題であるが、こうした上映や保存がきっかけで過去が顧みられるということが、進展への一助になるのではないだろうか。

参照
*1http://www.indiewire.com/2016/08/anthology-film-archives-woman-with-a-movie-camera-1201720398/
*2http://anthologyfilmarchives.org/film_screenings/series/46227
*3https://wfpp.cdrs.columbia.edu/essay/how-women-worked-in-the-us-silent-film-industry/
*4https://wfpp.cdrs.columbia.edu/about/

吉田晴妃
現在大学生。英語と映画は勉強中。映画を観ているときの、未知の場所に行ったような感じが好きです。映画の保存に興味があります。


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