先週末、リース・ウィザースプーンの主演最新作“Wild”がアメリカで公開されました。アメリカ西海岸を南北に縦走する自然歩道「パシフィック・クレスト・トレイル」を1770㎞、単独で踏破した女性シェリル・ストレイドの自叙伝を、ニック・ホーンビィ(『ぼくのプレミアム・ライフ』『ハイ・フィデリティ』etc.)が脚色し、昨年『ダラス・バイヤーズクラブ』でマシュー・マコノヒーにオスカーをもたらしたジャン=マルク・ヴァレが監督……と、これだけでも十分注目に値するこの作品ですが、やはり一番話題になっているのは主演のリース・ウィザースプーン(以下リース)の演技、そして彼女自身が製作を手掛けていることです。
 “Wild”でのリースは険しい山道や雪の中を歩き続けるだけでなく、薬物を使用するシーンや激しいセックスシーンなど、文字通り体を張った演技を披露しているとのことですが、興味深いのはそういう作品を自らが起ち上げた製作会社パシフィック・スタンダードで、彼女自身が主導して製作したということでしょう。
 Indiewireのインタヴュー(#1)でこの作品を作った経緯を聞かれた彼女は以下のように語っています。
「思い立ったのは2、3年前。ひらめいてこのプロダクション(パシフィック・スタンダード)を始めて、貪欲に読書をするようになって、みんなに声をかけて、そして(映画の)題材は芸術的好奇心に溢れた時間から生まれた。あらゆることが同時に起こったのは運命だったと思うわ」
「私の元に届いたり、オファーされる題材を読んでいると、オファーの数が減っているわけではなく、その題材のレベルが下がっているように思えた。たいして良くもない役柄を5~6人の女性で奪い合っているような状態で、私はこう考えたの。“ワオ、市場には紛れもない空白があるわ。その空白を埋めるのは女性映画への興味であり、間違いなく観客もそういう映画を求めている”ってね。でも明確に興味深い女性が主人公の映画を作ろうとしている会社は見当たらなかった。それで素晴らしい映画プロデューサーであるブルーナ・パパンドレアと一緒に自分たちの会社を設立したの。誰の指図も受けたくなかったから。そしてとにかく本を読んで読んで読みまくったってわけ」
 そうやってリースが出会ったのが“Wild”の原作本“Wild: From Lost to Found on the Pacific Crest Trail”、そしてギリアン・フリンのスリラー小説“Gone Girl”でした。そう、彼女は今週末から日本でも公開されるデヴィッド・フィンチャーの最新作『ゴーン・ガール』のプロデューサーでもあるのです。つまり、彼女は製作者としても今年大きな成功を収めたことになります。
「私たちはブラッド・ピットの会社プランB、ジョージ・クルーニーの会社スモークハウス、それからドリュー・バリモアのフラワー・フィルムズをモデルにして会社を作ったの。必ずしも私が出演する企画を手掛けるわけではないわ。強く、ダイナミックで、複雑な女性が主人公の作品を作ることが私たちの使命よ。だからその役を演じるのは私でも、ローラ・ダーンでも、ナオミ・ワッツやニコール・キッドマンでも、才能ある女優はたくさんいるのだから、その中の誰かがやればいい。彼女たちと映画における女性について対話を続けていくことに興味があるのよ」
 とは言うものの、実のところリースは『ゴーン・ガール』でロザムンド・パイクが演じた失踪する妻・エイミー役をやる気は満々だったようで、結局プロデューサーに徹することになった理由については、Hollywood Reporterに掲載された6人の女優による座談会(#2)の中で口にしているので、そちらも紹介しておきましょう。
「出演する用意はあったわ。でもデヴィッド・フィンチャーがあるプロジェクトをやりたいと言うときはいつだって口を挟まずに“やりたいようにやって”と言うべきなのよ。私たちはじっくり話し合って、彼が “君はこの役に合わない。それが理由だ”と言い、私も100%賛成したの」
 出演は叶わなかったにせよ、リースは『ゴーン・ガール』で(おそらく“Wild”でも)プロデューサーとして成功し、そして、“Wild”で女優としても転換期を迎えたようです。ただ、『カラー・オブ・ハート』『ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!』や『キューティ・ブロンド』などを観て、彼女のファンになった人たちにとっては、今後彼女がコメディ映画から遠ざかってしまわないか少し不安なところでしょう。
 Indiewireのナイジェル・M・スミス記者が、「『キューティ・ブロンド』がヒットした当時、自分のキャリアがロマンティック・コメディによって制限されたと思うか」と彼女に質問したところ、彼女はこのように答えています。
「わからないわ。全ての女性、全ての女優の人生にはたくさんの局面があると思う。ひとつかふたつの局面しか訪れない人なんていないと思うのよ。絶えず新しいことに挑戦し続けることがアーティストの仕事だし、怖くて怯みそうになることでも、とにかくやるしかないのよ。目標に向かって前進したり、自分を作り直したりすることは、冷たいプールに飛び込むようなもの。先のことはわからないの! だって“Wild”への反応が散々なことだってあり得るわけでしょ? でもお客さんたちが私を違う見方で見てくれて、この作品を受け入れてくれるなら本当に感激だわ。観客たちも変わっていると思うし、もちろん私のファンも私と一緒に成長している。20歳の時に『キューティ・ブロンド』を観ていた女性はもう20歳じゃないのよ! 彼女たちは35歳になって、子供だっている。人生の酸いも甘いも経験している。だから彼女たちがスクリーン上で見ていた女性も彼女たちと同様に変わるべきだと思うわ」
黒岩幹子

#1
http://www.indiewire.com/…/reese-witherspoon-explains-how-f…
#2
http://www.hollywoodreporter.com/…/reese-witherspoon-julian…


コメントを残す