[414] 進撃のマイルズ・テラー


デイミアン・チャゼルの『セッション』で一躍脚光を浴びたマイルズ・テラーは、この2年の間で10本を超える作品にメインキャストとして出演しています。しかもその出演作は多様で、『ダイバージェント』や『ファンタスティック・フォー』などのアクション大作から、『恋人まで1%』『Two Night Stand』といったラブコメにも出演、今冬公開の『Bleed For This』では2階級を制覇したボクサー、ビニー・パジェンサを演じているといいます。そして、先週からアメリカで封切られたのが『ハングオーバー』シリーズで知られるトッド・フィリップスの最新作『War Dogs』です。今回はテラーが同作とこれまでのキャリアについて語ったインタヴュー記事を紹介します。

マイルズ・テラーが役者を志したきっかけは高校の時に教わった「ものすごくホットな」演劇教師との出会いでした。その先生の勧めでニューヨーク大学のティッシュスクール(芸術学部)に進学、演劇を学びます。同校在学時の2007年、テラーはグレイトフル・デッドのコンサートに行った帰り道に同乗していた車で事故に遭います。運転していた友人がハンドル捌きを誤り横転した車から投げ出されたテラーは九死に一生を得たものの、手首を骨折し、顔面にひどい怪我を負いました(その時の傷跡はまだ顎や首に残っているそうです)。さらに不幸は続き、テラーは翌年2人の友人をそれぞれ別の交通事故で失ったといいます。
何の因果か、彼がその翌年、長編映画デビューを飾った『ラビット・ホール』で演じたのは道路に飛び出して来た4歳の少年を車でひき殺してしまう高校生の役でした。
「最初にオーディションを受けた時 “マイルズはいい役者だが、この役を演じるのは酷なんじゃないか”という関係者もいたみたいだ。でも監督のジョン・キャメロン・ミッチェルが僕の事故の話を知って、僕を推してくれたんだ。撮影中に“マイルズ、今すぐに(事故で亡くなった)君の親友のボーのことを思い出してほしいんだ”って、ジョンに言われたこともあった。初めての映画で、しかもあのニコール・キッドマンと一緒で、ただでさえかなりナーバスになってるのに、そんなこと言われて参ったよ」
「僕と友達の事故のことがその後の僕の人生に大きな影響を与えたのは確かだ。僕は常にその問題と向き合い続けてる。戦争映画で親友を亡くしたりとか、消防士についての映画で一度に19人の友人を失うといった役柄を演じることもあるわけだけど、実際にそういう経験をしていなくても、その経験がどんなものであるかを想像することはできるし、そこには何がしかの真実がある。でも実際に経験したことがある人のほうが、経験がない人よりもその役柄により近づけるのは間違いないだろうね」
図らずも再び劇中で自動車事故に遭うはめになる『セッション』においてもテラーは自身が持つドラムの“経験”を、長時間のレッスンを受けることでさらに深めることに心血を注いだといわれます。しかし『セッション』で彼が楽しんだのは自分とはまったく違う性格の人物になることだったそうです。
「僕はかなり呑気な性格なんだ。だから(『セッション』の主人公である)アンドリューの自分を精神的に追い詰める方法や人の関わり方、その起伏の激しい気性といったものは、僕とはまるでかけ離れたものだった。でもアイツのことを好ましく思ったのは、彼が負け犬だという事実があったから、そしてそれでも彼が誰よりも強い心と粘り強さを持っていたからだね」

『セッション』出演以降、一気に出演本数を増やしたテラーですが、作品選びに関して強いこだわりはなく、また今でもオーディションに落ちることもあるそうで、例えばハン・ソロを主人公にした『スター・ウォーズ』のスピンオフ作品でもハン・ソロ役の候補にその名前があがっていたものの、オーディションを受けて落ちたことをあっさり認めています。
「(オーディションに落ちて)がっかりはしなかったけどね。これまでオーディションに落ちて一番がっかりしたのは『ファミリー・ツリー』(アレクサンダー・ペイン)かな。ただ僕はあらゆることが起こるのには理由があると思っているんだ。人生においても、演技の世界においてもね。例えば僕が主人公をやった『The Spectacular Now』にしても、僕をキャスティングしたくない人はいたかもしれない。でも誰かが僕をあの役に巡り会わせてくれたわけだ」
「僕がこれまで関わってきた作品には、常にその監督の洞察力や信頼が働いていた。『Bleed For This』のベン・ヤンガー監督が僕をキャスティングした時、僕は『恋人まで1%』を終えたばかりで、あの作品の役柄どおりの青い顔をした友人って感じだったと思うんだ。そんな俳優を5回も世界タイトルを獲得したボクサー役の候補に加える人はほとんどいないと思うけど、ベンは僕を選んだんだ」

そんなマイルズ・テラーが自ら出演に名乗りをあげたのが『War Dogs』です。20代のマリファナ常用者2人組が、ペンタゴンからアフガニスタン駐在部隊に武器を供給する契約を3億ドルで勝ち取ったという実話をもとにした同作に、テラーはジョナ・ヒルとともに主演しています。
「実はトッド(フィリップス)がこの話の映画化権を買ったという記事を読んだ親父がメールをよこしたんだ。“おい、トッドにその映画に出してもらえないか聞いてみろよ”って。それで数か月後にトッドとレストランで会って聞いたんだ“よう、『War Dogs』はどうなってる? 俺を出してもらえないか?”ってね(笑)」
『War Dogs』で彼が演じるデヴィッドは高校中退後マッサージ師として働いていたところ、学生時代の友人・エフレイム(ジョナ・ヒル)にアメリカ軍と契約して兵器を調達するビジネスを一緒にやらないかと持ち掛けられます。そして2人はペンタゴンと巨額の契約を結ぶことに成功、しかし大量の武器の調達と輸送が計画通りうまくいくはずもなく、次第に騒乱に陥っていく……という物語で、一見、無節操な2人組のドタバタ劇であるかのように思えます。しかし、テラーはデヴィッドという役柄について「道徳的指針を持った誠実な奴」と評しています。
「20代の若さで大きな責任や成熟を求められる仕事をしている奴らを描いた作品は滅多にないから、すごくワクワクした。デヴィッドはマイアミ出身だけど僕が育ったフロリダの小さな町とはそう離れていないし、年齢も近いから育った環境も似ているんだ。彼がギターを弾くように、僕もギターをやるし、僕もデヴィッドのようにマリファナを吸っていた時があったしね。実際にデヴィッドのやった仕事をやれたかどうかはわかんないけど。たぶんハイになってる時にへまをするだろうな」
監督のトッド・フィリップスはテラーについて「僕は彼が何の努力も必要としていないように見えるんだ。それは悪い意味ではなく、彼が天性の才能を持っているということ。見ていてびっくりするよ」と評しています。が、それを聞いたテラーは不満をあらわにしてこう言ったといいます。
「まったくイラつくね。努力してないみたいって言われるのはムカつくよ。だって俳優にとって一番素晴らしく重要な手段はどれだけ準備するかってことなんだから。僕は他の誰よりも予習してると思うぜ」

1320

https://www.theguardian.com/film/2016/aug/21/miles-teller-i-felt-extremely-misrepresented-war-dogs

http://www.indiewire.com/2016/08/miles-teller-war-dogs-bleed-for-this-interview-1201717227/

黒岩幹子
「boidマガジン」(http://boid-mag.publishers.fm/)や「東京中日スポーツ」モータースポーツ面の編集に携わりつつ、雑誌「nobody」「映画芸術」などに寄稿させてもらってます。


コメントを残す