キルスティン・ダンストが初の長編映画監督として、アメリカの詩人シルヴィア・プラスの1963年の小説『ベル・ジャー(原題:The Bell Jar)』を映画化することが決定した。

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『ベル・ジャー』は1950年代のアメリカを舞台に、ニューヨークで雑誌社のインターンシップとして働くエスターが故郷のボストンに帰った後に心のバランスが崩れていくという様を描いた物語である。この小説は『エアリアル(原題:Ariel)』、『The Colossus and Other Poems』を代表作とする詩人シルヴィア・プラス自身の孤独と苦悩、葛藤の詰まった自伝的な作品である。あまりにも自伝的な要素が強いため、公開当初はモデルとなった人々を気遣い、ヴィクトリア・ルーカスという別名で、祖国であるアメリカでの出版をしないという条件のもとに出版された。アメリカでの出版は、彼女の母親と、夫であり詩人のテッド・ヒューズの希望で彼女の死から8年後にようやく達成された。

この小説は1979年にラリー・ピアース監督、マリリン・ハセット主演としても映画化されている。今回は、キルスティン・ダンストが監督のもと、今年公開予定であるユアン・マクレガー監督『American Pastoral(原題)』で主演を務めた女優ダコタ・ファニングを主演に迎えいれての映画化となる。キルスティン・ダンストはこれまでに『Bastard』(2010)や『Welcome』(2007)などの短編映画の監督は務めてきたが、長編映画に取り組むのは今回が初である。

繊細な感性を持ち、それゆえの苦悩に悩まされたシルヴィア・プラスはこの『ベル・ジャー』を出版したのちの約一ヶ月後、彼女が30歳の時にガスオーブンに頭を突っ込み、自殺した。そんな彼女が、若さという言葉だけでは言い表すことのできない、一人の女性の孤独と葛藤を、そして人生を繊細で美しい文体で描いた『ベル・ジャー』。かつて、ジェフリー・ユージェニデスの小説『ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹 』を原作にソフィア・コッポラが映画化した『ヴァージン・スーサイズ』(1999)で、繊細でかつ危うさを秘めた思春期にいる少女であるリズボン家の四女ラックスを演じたキルスティン・ダンスト。彼女はこの、一人の少女の孤独や疎外感そして自尊心の間で揺れ動く心情を表現した小説を、どのように映像作品に落とし込むのだろうか。ダコタ・ファニングとのタッグにも期待したい。公開は2017年予定とのこと。

参考URL
・http://www.indiewire.com/2016/07/the-bell-jar-kirsten-dunst-dakota-fanning-sylvia-plath-adaptation-1201708060/

・http://deadline.com/2016/07/kirsten-dunst-the-bell-jar-movie-dakota-fanning-sylvia-plath-1201789487/

・http://www.imdb.com/title/tt0844467/

三浦珠青
熊本出身、早稲田大学二年生。都内の映画館でアルバイトをしています。映画と本が好き。


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