[406]「ロマンチックな友情ではない」―ミシェル・ゴンドリー最新作『グッバイ、サマー』


 ミシェル・ゴンドリー監督の最新作『グッバイ、サマー』(原題:Microbe et Gasoil)が9月10日(土)より公開される。ミシェル・ゴンドリーと言えば、ビョークやザ・ローリング・ストーンズ、ケミカル・ブラザーズ等のミュージック・ビデオを数多く制作する一方、第77回アカデミー賞脚本賞を受賞した*1『エターナル・サンシャイン』(2004)、その映画の内容から、ハリウッドの大ヒット作を一般人がリメイクする「スウェーデッド」(米:sweded) というブームを巻き起こした『僕らのミライへ逆回転』(2008)、アメコミ原作でハリウッド進出となった『グリーン・ホーネット』(2011)、ボリス・ヴィアン原作『日々の泡』を特殊効果を駆使して映像化した『ムード・インディゴ うたかたの日々』(2013)、アニメ―ション・ドキュメンタリーの『Is the Man Who Is Tall Happy?』(2014、日本未公開)といった様々な映画を生み出すなど、その活躍ぶりは言うまでもない。今作『グッバイ、サマー』はそのようなゴンドリーの長編第11作目、短編と合わせると第15作目となる。

グッバイ・サマー2

 本作は、14歳の少年、ダニエル(アンジュ・ダルジャン)とテオ(テオフィル・バケ)の物語だ。絵を描くことが好きなダニエルは、女の子のような容姿で、周囲からは「ミクロ」(チビ)とからかわれている。テオは新しくダニエルの学校へ入ってきた転校生で、機械をいじってモノを作ることが好きであるため、常にガソリンの臭いを漂わせている。学校で浮いた存在のダニエルとテオは次第に仲良くなっていき、ある計画を思いつく。それが、スクラップを集めて「動くロゴハウス」を作り、フランスを旅することだった。

 この物語は、ゴンドリー本人の「記憶」がもとになっているが、このようなパーソナルな題材に行き着いた理由について彼は、「『ムード・インディゴ うたかたの日々』を撮ってからは特に、自分に起こったこと、個人的なことを撮りたかった」と語っている。彼の作品作りにおいて「記憶」というのは一つ大きなポイントである。『エターナル・サンシャイン』は「記憶除去手術」を受けた男女の物語であり、『僕らのミライへ逆回転』では、マイクとジェリーがかつて見た映画の記憶をもとにそのリメイク版のビデオを作ることを試みる。このようなことについては監督本人も「私はかなりノスタルジックな人間なので、よく記憶というものに立ち戻ってしまうのです」と語っている。『グッバイ、サマー』についてのインタヴューでも「記憶」という言葉を多用しているゴンドリーだが、今回「記憶」はどのように作品と関わっているのだろうか。

 彼はこの作品で、自身の記憶をもとに、「自分が14歳の時に経験したこと」*2を描いた。「監督になってからの時間や状況をはぎ取って[物語を]創造することは難しい」*3ことから、「監督になる前に立ち戻り」*3、最終的に「14歳という時期に降り立った」*3という。

 この映画では、まさしく14歳であるダニエルとテオの「友情」が描かれるが、それは、「ロマンチックな友情」ではない。ここでは、もっと「率直な友情の描写」がなされている。そのために脚本に力を入れたというゴンドリーは、この作品を撮るにあたって、「自分にとって何がその時期[思春期]に問題だったか」また、「どうやって友人とそのような問題、いらいらの種をぶつけ合ったか」、「どのように友人は私の抱える問題に応じたか」ということを思い出したという。そして物語を進めるにあたってまず重視したのは、「どうして、二人の個人が、二人の少年が友達になっていったのか」ということだった。*2

 絵を描くことが好きなダニエル、機械をいじることが好きなテオ、そのような彼らの共通点は「手でモノを作ることが好きである」というところだ。「彼らはテレビゲームやiPhoneといったテクノロジーには夢中にならない」とゴンドリーは言う。それは、「私と私の友人は、時代に即したもの、共通するものに乗り気ではなかった」と語る彼にも共通するところであり、つまりそれはこの映画において、14歳だったゴンドリー少年の経験を現代の子どもたちに当てはめたことなのである。「クラスの輪に入れていない子とばかり友達になっていた」ゴンドリーは、「みんなから拒絶されている彼らには、より面白い話、より熱烈な経験があった」そしてまた、「彼らも私に興味を抱いていた」と言う。そのようなことを回想しながら、彼はこの物語を描き始めた。そして、かつての自分に「スクラップを集めて車を作り、休暇に山へ行くという野望」があったことを思い出したのだった。*3

 監督が、「自分自身に戻って」、「14歳の時に経験した人生の要素」を丁寧に組み立てていった『グッバイ、サマー』、ゴンドリー持ち前の発想力によってファンタスティックに表現されているリアリスティックな彼の「記憶」を、覗いてみてはどうだろうか。

 

 

グッバイ、サマー』(原題: Microbe et Gasoil、2015)グッバイ、サマー1

監督・脚本 ミシェル・ゴンドリー(Michel Gondry)

出演 アンジュ・ダルジャン(Ange Dargent)

   テオフィル・バケ(Théophile Baquet

   オドレイ・トトゥ(Audrey Tautou)

撮影 ローラン・ブリュヌ(Laurent Brunet)

音楽 ジャン=クロード・バニエ(Jean-Claude Vannier)

製作 ジョルジュ・ベルマン(Georges Bermann)

配給(仏) パルチザン/スタジオカナル(Partizan et Sutudiocanal)

配給(日) トランスフォーマー

*1 共同原案のチャーリー・カウフマン、ピエール・ビスマスと共に受賞。

 

*2 http://www.filmcomment.com/blog/interview-michel-gondry-microbe-and-gasoline/

 

*3 http://www.slantmagazine.com/features/article/interview-michel-gondry-on-microbe-and-gasoline

 

 


原田麻衣
WorldNews部門
大阪教育大学芸術専攻芸術学コース4年生。フランソワ・トリュフォーについて研究中。
フットワークの軽さがウリ。時間を見つけては映画館へ、美術館へ、と外に出るタイプのインドア派。


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