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先日、フランシス・フォード・コッポラが母校であるカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)にて二ヶ月間にわたり”Live Cinema Project”のワークショップを行った。
この企画は”Distant Vision”というタイトルがつけられており、イタリア系移民の一家を3世代に渡り描いた叙事詩的な物語であるという。「これは、テレビが発明され発展を続け、そしてその存在がインターネットにとって変わられるという時代を生きた家族の物語です。そこで私はこの物語の演出を、テレビの生中継として行いたいと思いました」とコッポラは語っている。既に昨年、学生向けワークショップとして50分程度のものを制作している。*1

コッポラはこの企画を考えたきっかけについて、数年前に3Dが”未来の映画”としてもてはやされたことを挙げている。「その頃『アバター』が公開され、みんな3Dこそが映画の未来だというように語っていたが、私はそれはあり得ないと思いました。私たちは既に『ブワナの悪魔』や『蝋人形の館』で1950年代に3Dを体験しているというのに。メガネをかけて観ることが、映画の未来であるとは思いません。映画とは3Dでは表現しきれないほど奥深く、大きなものなのだから」*2
生中継として行うにあたりコッポラは、その場で行われている演技を見てカットを変更できるように多数のカメラと即時再生サーバを用いているという。生放送で行われるミュージカルに見られるような類型的で大げさな表現から脱し、より映画的で自然な”Look And Feel”を獲得することを目標としている。生の瞬間のエネルギーを持ったものこそが、映画的なものであるとコッポラは言う。
「生中継で映画を作る方法論を探る実験の必要性を感じています。それは演劇、映画、テレビが混在しあったものです。普通の映画と同じように、”ショット”は基本的な要素です。演技の躍動感は演劇から来たものですし、スポーツ中継のようにその場の熱気を伝えているのは、テレビ放送の持つ技術です。現場はとても刺激的で楽しい」*3

UCLAで行われたワークショップでは、75人の学生が参加し、学内の劇場に向けて27分間の生放送を行った。そこでの学生の役割は、40台以上用意されたカメラで撮影したり、録音を担当したりといった他、衣装や美術セットのデザイン、現場進行まで多岐にわたっていたという。ワークショップはUCLAとコッポラの制作スタジオAmerican Zoetropeが共同でスポンサーになっている。

ワークショップについて映画学部長のテリ・シュワルツ氏は「偉大な卒業生であるF・フォード・コッポラを迎えることができて大変光栄です。”Distant Vision”という彼の革新的なプロジェクトのワークショップを行うことに、我々はどきどきしていました。フランシスは、映像で物語を語るということに対する柔軟で大胆な統率力で,我々みんなを驚かせ、同時に惹き付けました。
学生に刺激的な映画作りの場で彼と並んで働くという素晴らしい機会を与えてくれたことを、フランシスに感謝しています。」と述べている。

実際のワークショップの様子をまとめた動画も制作されている。若い学生たちと巨匠とがひとつの映画作りに取り組む現場の雰囲気が伝わってくるだろう。*4

参照
http://www.imdb.com/title/tt4762692/
*1http://www.indiewire.com/2016/04/watch-francis-ford-coppola-explains-his-live-cinema-project-distant-vision-and-more-in-57-minute-talk-292200/
*2http://variety.com/2015/film/festivals/marrakech-coppola-live-cinema-plans-talks-career-sausage-movies-1201655634/
*3http://variety.com/2016/film/news/francis-ford-coppola-experimental-live-cinema-ucla-1201820998/

*4https://vimeo.com/175960112/3846472146

吉田晴妃
現在大学生。英語と映画は勉強中。映画を観ているときの、未知の場所に行ったような感じが好きです。映画の保存に興味があります。


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