[391]チャン・ゴンジェ監督が描くモノクロとカラーの世界


緑の木々や夜の空気。ふとした時に夏を感じることが多くなった今日この頃。初夏の淡い思い出を呼びおこし、また日韓の美しき架け橋となる愛と映画のファンタジー『ひと夏のファンタジア』が公開された。監督は、釜山国際映画祭・監督組合賞をはじめ、ロッテルダム国際映画祭などに選出され、韓国の是枝裕和として世界から注目を集めるチャン・ゴンジェ監督。河瀨直美監督のプロデュースのもと、奈良県五條市で撮影が行われた。

次回作の構想を練る映画監督の話をドキュメンタリータッチに描く第1章と、そんな人々の記憶をみずみずしい恋愛映画へと結実させた第2章は、切ない感情を呼び覚まさせ、儚さを捉えようとする監督の演出と、キム・セビョクと岩瀬亮の透明な演技に、心が奪われるだろう。また2つの世界を同じ俳優陣が演じわけ、それぞれの世界がモノクロとカラーで描きわけられている点にも注目だ。

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また第1章は、ドキュメンタリータッチからやがてフィクションの様相に変化していき、第2章もフィクションのように見えたものからドキュメントのように変化していく。ベクトルが逆なのだ。この様に1章と2章を異なるかたちで提示したのはなぜなのか?チャン監督はこのように述べている。

「映画全体の撮影期間はわずかだったため、2章のロケハンは、満足にできないまま撮影しなければいけませんでした。1章に出てきた同じ俳優で、奈良県五條の同じ場所で、どうすれば違うものを作ることができるのか。それを考えながら、その場で作り出していったのが2章です。つまり、この映画の撮影条件、つまり「環境」が作り上げたものだと思います。これは完成してから思ったことですが、2章は、1章に登場した人たちの過去にも思えます。映画の順序とは逆に。だから、現在と過去が同時に進んでいくような感覚を与えるのかもしれません。
また1章に登場する映画監督は、自分自身を描いていると言えます。この映画を撮るために五條という町に来て、どんな題材にしようか、ロケハンしたときのエピソードを基に、多少のフィクションを加えて作りました。なので、私の話として観ていただければと思います。2章はシナリオもない状態で作りました。もし、私が1章の監督だったら、自分が調査したものをどのような映画にしようか考えて作ったという側面があると思います。お客さんには、映画を作る過程はこのようなものなのだなと思ってもらえるかもしれません。」

観るたびに違う感覚になるであろう『ひと夏のファンタジア』。夢のような感覚を味わってほしい。

参照
http://star.ohmynews.com/NWS_Web/OhmyStar/at_pg.aspx?CNTN_CD=A0002119896

A Midsummer’s Fantasia: Trust in Characters and Their Stories (LAFF 2015)

船津 遥
World News担当。学習院大学文学部フランス語圏文化学科所属。サイレント映画、ウェス・アンダーソンのとりこ。日活映画にもはまっている20代女子。(量産型キラキラ系女子ではありません。)


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