[389]ディズニーの実写映画『ジャングル・ブック』:作曲家ジョン・デブニーの音楽が物語ること


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※会話文はすべてジョン・デブニーによるもの。

ラドヤード・キップリング原作の『ジャングル・ブック』は、ディズニーによって、1967年にアニメーション作品として映画化された。その後、1994年のスティーブン・ソマーズ監督による実写映画化を経て、今年、2016年にジョン・ファヴロー監督による新たな実写映画として公開される。
その最新版の『ジャングル・ブック』の音楽を担当したのは、ジョン・デブニーである。彼がこの作品の音楽を作曲することは、彼の人生において、1つの契機であるといえる。
ジョン・デブニーは、ディズニー・スタジオで育ってきたも同然であった。
彼の父、ルイス・デブニーは、14歳のとき、かつてディズニー・スタジオがあったシルバーレイクのバーモントとキングスウェル通りの近くで、新聞売りをしていた。それから3年後、彼は仕事でディズニー・スタジオへ行くようになり、映像の編集作業をした。そして、それからすぐの1937年に『白雪姫』の映像の組立作業を任された。
彼は、1934年に、そのスタジオが手掛けた最後のミッキー・マウスの白黒作品となる『ミッキーの二挺拳銃』のアシスタント・ディレクターを務め、1957年には自然を舞台にしたファンタジー映画『ぺリ』のプロダクション・マネージャーを担当した。
また、1950年代後半に、TV番組『ミッキーマウス・クラブ』、映画『怪傑ゾロ』のプロデュースをした。彼は他にも、長きにわたってTVで放映された『ディズニーランド』のコーディネーターとして活躍した。
息子ジョン・デブニーが生まれた際に、ジョン・デブニーには、『ミッキーマウス・クラブ』に登場するマウスケティアーズ(Mousketeers)のメンバーすべてによるサインが入ったカードが贈られた。ジョン・デブニーにとって、新たな実写映画『ジャングル・ブック』の音楽を担当することは、単に夢を叶えることではなかった。それは、彼にとって「家へと帰ること」であったのである。彼は、数々のディズニーの素晴らしい映画のもとで、創作の才能に触れながら育ち、そのことが、映画音楽を作曲したいと彼に抱かせたことであると語っている。

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ジョン・デブニーが8歳のとき、父ルイス・デブニーは、リチャード・シャーマンとロバート・シャーマンと1日の間、過ごす機会を彼に与えてくれた。そのシャーマン兄弟とは、『メリー・ポピンズ』、『チキ・チキ・バン・バン』、『ベッドかざりとほうき』、『シャーロットのおくりもの』、『おしゃれキャット』、さらに、ディズニーランドのアトラクションである『イッツ・ア・スモールワールド』等の作曲を担当し、ディズニーに多大な貢献をもたらしてきた人物である。そして、1967年のアニメーション映画『ジャングル・ブック』の音楽を作曲したのも、シャーマン兄弟であった。

「私の父にとって、シャーマン兄弟の2人は、良き友人でした。ある日、父がリチャードにばったりあった際に、こう言ったのです。「リチャード、僕の息子がギターを弾き始めて、音楽にとても興味があるんだ。君たちに息子を会わせてみても良いかな?」そして、シャーマンはとても素晴らしい人物であるがゆえに、「もちろんだよ。彼に来てもらって、僕たちと1日を過ごしましょう。」と言いました。だから、私の父は2人に会わせてくれたのです。私は恥ずかしがり屋の子供でしたので、2言しか話すことができなかったかもしれません。しかし、リチャードとロバートが数曲の楽曲に取り組んでいる際に、彼らと一緒に部屋で座り、心を奪われていたのです。私の人生には転機が訪れました。自分のことを自覚し、自分は音楽を書き、演奏したいと思ったのです。それがまさに始まりでした。」

ジョン・デブニーは、ディズニー・スタジオに勤めていた父の後を追った。彼はディズニーの音楽部門で働き始めたのである。

「大学を出てすぐに、私は幸運にも、ディズニーの音楽部門で充分な仕事を得ることができました。そこで、4年間ほど過ごし、すべてのパークのために多くの音楽を作曲しました。そのときは、自分にとってトレーニングの期間であり、始まりの時期でした。だから、多くの様々なことに挑戦しました。スプラッシュ・マウンテンを含む、ディズニーランドとディズニー・ワールドのためのアトラクション音楽も担当しました。」

2016-03-26-1459016172-6089302-ScreenShot20160326at2.13.42PMジョン・デブニーは、TV番組、映画、テーマパークのライドアトラクション、ディズニーのABCネットワーク、そして、彼が手掛けた初の長編映画『ホーカス ポーカス』と、ディズニーのプロジェクトで、何百時間もの音楽を作曲した。
彼は、今回の『ジャングル・ブック』のことについて知るとすぐに、この仕事を得ようと決めた。1967年のアニメーション版で、その物語を彩っていた忘れがたい音楽とはシャーマン兄弟によるものであり、当時、ジョン・デブニーの親友であるブルース・ライザーマン(1967年版の監督であるウォルフガング・ライザーマンの息子)がモーグリの声を担当していたからである。ジョン・デブニーと彼のエージェントは、彼がいかにこの仕事をしたいと思っているのかを伝えようと試みた。

「私がこの噂を知ると、本当に素晴らしく、情熱的で形にとらわれない人物である私のエージェントが、この仕事を得ようとするために、どのようにそのスタジオへ近づくのかについて、長々と話しました。」

幸運にも、そのスタジオが選出した監督とは、ジョン・デブニーが他の3作品(『エルフ 〜サンタの国からやってきた〜』、『アイアンマン2』、『ザスーラ』)で仕事を共にしたジョン・ファヴローであった。

「私たちは、私にとってのディズニーの歴史が詰まった小さなアルバムを、ジョン(・ファヴロー)と数人のスタジオの人たちに送ることを決めました。驚いたことに、私が音楽を担当することになったのです。それは、本当に驚くべき贈り物でした。ジョン・ファヴローとそのスタジオは、私に信頼を置いてくれたのです。もちろん、すべてを一任するということでした。そして、すべてを終え、今はこの映画を愛してくれるように、準備をしているところです。」

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さて、ここからは、少しばかり、最新版の『ジャングル・ブック』の音楽について具体的に探っていきたい。ジョン・デブニーによる音楽の制作とはいかなるものであったのだろうか。

「ジョン(・ファヴロー)は、新たなスコアを求めました。しかし、少しばかり、皆が知っていて、愛している歌曲を使うことの同意を求めたのです。自分の新たなスコア、かつては決して使われることのなかった新たなモーグリのテーマ曲を含め、キャラクターへの新たなテーマ曲にとっては脅威でした。ジョン(・ファヴロー)は、より広い範囲にスコアを施すことを強く求めました。その映画とは、とても広い範囲のものであったからです。それは、彼が創り上げた驚くべきほどに現実的な世界です。彼は、本当に高い冒険の性質を持ったスコアを欲しました。時に冒険を表現するとても深刻なスコアであること、時にとても陽気なスコアであること、たぶん、第3にその文化へ忠実なスコアであることを望んだのです。だから、私は、その世界におけるすべての地域の楽器を用い、そのことには多くの楽しさがありました。インドのフルート、原始的な竹のフルートやその他の種のフルートです。その世界の原始的な葦の楽器、それから、いたるところに伝わる打楽器を持っていました。私は、見つけることのできるすべての楽器を使い、何人かの素晴らしい楽器奏者を起用しました。さらに、大規模な合唱団に参加してもらい、1つの世界における音楽のアプローチのすべてを含むように試みました。しかし、古典的なディズニーのスコアとなるように常に気を配っていました。」

ジョン・ファヴロー監督が、この映画の製作に取り組み始めるに当たり、2年ほど前に、ジョン・デブニーを起用した。

「ジョン(・ファヴロー)は、その早期の段階で、「その音楽は、映画の中で重要な役割を担っている。その音楽は、映画に敷き詰められており、様々な場所において、キャラクターの感情の側面を伝えるために、観客を導く役割を担っていかなければならないからだ。」と語りました。」

実際に、ジョン・デブニーは、映画にために90分の音楽を作曲した。そして、105人編成のオーケストラと60人編成の合唱団によってレコーディングは行われた。それは、音楽に膨大な労力と資金が必要なことを意味していた。

「ディズニーは、(そのことに)動じることはありませんでした。つまり、最良の環境であったのです。映画製作者が望むスコアを映画に付けなければならないことを理解してくれていました。そして、そのことへ敬意を払っていました。自分が表現したいと思うことに対して、制限がないことで、私は本当に素晴らしき時間を過ごすことができました。」

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ジョン・デブニーは、音楽で多くのことを表現したいと考えた。それぞれの主要なキャラクターには、テーマ曲を作曲し、またそれぞれのジャングルのシーンでは、そこに個性を持たせた。つまり、様々な音楽の型を求めたのである。例えば、ビル・マーレイが声を担当したクマのバルーは、マリンバとチューバを含む楽器によって表現された。また、クリストファー・ウォーケンが声を担当したキング・ルイにおいては、彼の脅威を捉えるためにロードラムが用いられた。さらに、主要なキャラクターに限らず、細部にまで気が配られている。小さな森のキツネのような容姿のジャコウネコのために、ジョン・デブニーによって起用された木管楽器奏者は、新たな楽器を作り上げたのである。

「私は、木管楽器奏者に自分が求める音の印象を伝え、彼は、フルートとダブルリードの楽器を組み合わせた2本の竹でできたフルートを作りました。それは本当に素晴らしかったです。信頼性をもたらすために、スコアの中に知り得るすべての打楽器を使いました。」

ラドヤード・キップリング原作の『ジャングル・ブック』は、インドで物語が展開する。ジョン・ファヴロー監督は、インドがもたらす豊かな音楽の伝統に敬意を示したが、そのことによって音楽に対する制限はなかった。

「その物語は時間を超越しています。私は、早期の段階で、ジョン(・ファヴロー)に、スコアの中に、よりインドの影響を持たせたいかどうかについて尋ねました。彼は、文化におけるすべてに敬意を表したいが、1つの種類のスコアとして音楽を分類するために、(彼が求める)音楽を変えたくはないと言いました。彼は、古典的なディズニー作品を彩ったスコアを望みました。鮮明な色彩のスコアであり、単色のスコアでは決してないのです。」

最も挑戦的であったスコアの部分とは、最後の20分間であった。それは、ジャングルで、悪党のトラであるシア・カーンが、人間の子供であるモーグリを追いかけるシーンである。

「3から4カット、続くシーンです。たぶん、相当長い15分の音楽、途切れのない音楽です。ジョンは、そこで本当に仕事をさせました。その音楽を書き下ろし、書き直し、恐怖や2人のキャラクターを表現しました。その音楽には、まったく絶え間がありません。」

さらに、CGIが使用されているがゆえに、ジョン・デブニーは、音楽を作曲する部分のフッテージを定期的に観ることができなかったことは、彼に困難を与えた。

「すべての段階で、本当にジョンの指示を必要としていました。多くの部分で完成しておらず、彼は、私にどのように進行しているのかを説明しました。彼は、常に必要なことを提示してくれました。」

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今回の『ジャングル・ブック』のスコアは新しいものとして作曲されているが、ジョン・デブニーは、オリジナル版の『ジャングル・ブック』の歌曲を愛する人を落胆させはしないと約束する。そして、そこには、観客が興奮する素晴らしい驚きがあるとしている。その予告編には、最初のアニメーション映画の歌曲である“The Bare Necessities”が登場するが、それは1つのヒントとなっている。つまり、かつて、1967年のオリジナル版の『ジャングル・ブック』において、テリー・ギルキソンやシャーマン兄弟が作曲した歌曲が本編にいくつか使われているということである。
新たな『ジャングル・ブック』は、ミュージカルでないがゆえに、オリジナル版とは性質が異なったが、監督の意向により、テリー・ギルキソンやシャーマン兄弟によるオリジナルの歌曲を使用するシーンを探った。マーク・ロンソンは、“Trust In Me”をプロデュースし、スカーレット・ヨハンソンがその歌を披露した。それは、ジョン・デブニーによって、オーケストラアレンジされた。また、“I Wan’na Be Like You”においては、ドクター・ジョンがディキシーランド・ジャズを用いて録音したが、これは、1967年版のシャーマン兄弟による同じ楽曲を踏襲した結果である。その音楽は、エンドクレジットを通して流れ、そのトラックにおいて、ジョン・デブニーはニューオリンズのミュージシャンの音楽監督を務めた。
そして、リチャード・シャーマンがジョン・デブニーの指導者となっていた(残念なことに、ロバート・シャーマンは、2012年に亡くなっている)。彼がレコーディングセッションを訪れたとき、ジョン・デブニーにとってのすべてが1つになった。

「私は、本当に人生のすべてにおいて、リチャードのことを追い続けてきました。私は、彼が新たな『ジャングル・ブック』に取り組んでくれたことを心からうれしく思っています。そのことは、元の場所へと戻ることであり、1つのとても幸福な家族を意味することなのです。私たちがレコーディングを完了させる中で素晴らしい思い出ができました。リチャードをスコアリングステージに招いたことです。彼は、少し違ったアレンジで、時間を超越した彼自身の音楽が演奏されるのを聴き、その上で、私たちは、素晴らしき、素晴らしき旅をしたのです。」

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新たな『ジャングル・ブック』では、クマのバルー役を担当したビル・マーレイが、“The Bare Necessities”を歌っています。本編の映像とともにご覧ください。

ジョン・デブニー指揮による音楽の録音風景をご覧頂けます。リチャード・シャーマンが中盤と後半に登場しています。ジョン・デブニーが、彼をステージに招いている際の映像もございます。

参考URL:

http://variety.com/2016/artisans/production/jungle-book-composer-john-debney-1201746486/

http://www.billboard.com/articles/news/7334021/jungle-book-composer-john-debney-disney-film-jon-favreau-ukulele

http://articles.latimes.com/1986-04-11/local/me-3948_1_walt-disney

http://www.metronews.ca/views/in-focus-richard-crouse/2016/04/14/richard-sherman-talks-about-writing-jungle-book-song.html

http://www.huffingtonpost.com/nell-minow/john-debeys-real-life-dis_b_9551182.html

http://www.nola.com/movies/index.ssf/2016/04/new_orleans_jungle_book_2232342.html

宍戸明彦
World News部門担当。IndieKyoto暫定支部長。
同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科博士課程(前期課程)。現在、京都から映画を広げるべく、IndieKyoto暫定支部長として活動中。日々、映画音楽を聴きつつ、作品へ思いを寄せる。


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