[380]ノア・バームバックらによるドキュメンタリー映画『De Palma』


ノア・バームバックとジェイク・パルトロウの共同監督による、映画監督ブライアン・デパルマについてのドキュメンタリー映画『De Palma』がアメリカで公開される。
70年代、マーティン・スコセッシやスティーブン・スピルバーグとともにハリウッドに新しい時代を告げる監督の一人となり、『殺しのドレス』や『ボディダブル』といったヒッチコックの影響を色濃く受けた作品や、『ミッション・インポッシブル』といったハリウッドの超大作までも手がけたデパルマだが、近年では監督作の興行的不振もあり、予算的に小規模な環境での作品作りが続いている。そういったハリウッドの制作環境を横断した映画作家とも言えるデパルマの監督作の映像を交えつつ、バームバックとパルトロウがインタビューを行ったのが本作である。
インタビューは二人が2010年に一週間に渡り行ったもので、デパルマの作品やこれまでの人生のみならず、商業映画監督として駆け出しだった頃の70年代初頭のハリウッドのスタジオシステムという環境や、いかにして映画製作の予算をやりくりしてきたのかなど、監督としてのデパルマの体験について広い範囲で語られている模様だ。(本作に関連してIndieWireが行ったインタビューにおいて、デパルマが「当時、おおがかりな機材を使って映画を作るには非常に資金が必要だった。今はバームバックのような、当時とは違った映画の作り方をする人物が現れているが、映画作りに取りかかった頃、私は1本も大きなヒット作がなかった。私はいくつかのインディペントの映画で成功したが、最初の10本の映画のうち、スタジオ下で作ったものはわずか2本のみだった」「私はスタジオシステムの幻想を破壊したいと思う人間の一人だった。なぜならそれが、私たちが何をするかということにおいて過剰に影響力の強いものであったからだ」*1と語っていることからも、デパルマという映画監督を語るときに、ハリウッドの制作環境が切り離せないものであることが伺える。)

『De Palma』ポスタービジュアル

『De Palma』ポスタービジュアル

監督のバームバックは47歳、パルトロウは41歳で、現在75歳のデパルマとは世代が離れている。二人はFilmmaker Magazinによるインタビューで、デパルマの作品に初めて触れたときの思い出を語っている。パルトロウは12、13歳の頃ビデオで、まだ見慣れていない年齢制限の対象の作品でもあった『ボディダブル』を観て、『裏窓』との関係性を感じ非常に強い印象を受けたという。バームバックは父親の集めていた映画のスチル写真で『殺しのドレス』の一場面を見て、映画の本編を観ていないのに猛烈な好奇心がわいてきたと回想している。バームバックはデパルマの作品について、「観客も批評家もしばしば見落としてしまうことだが、彼の映画はシリアスな場面にもユーモアのセンスが潜んでいる.。彼の映画を観て、人々は時々、笑うべきかそうではないのかわかりかねることがある。『キャリー』のショッキングなエンディングはとても恐ろしいが、同時に奇抜でユーモアのある画面でもある」と語っている。*2
インタビュアーは二人に、ドキュメンタリー中でデパルマが若い世代である二人に対ししばしば「きみたち」と呼び、自分と彼らとの世代が違うということの印象を強めていることについて尋ねている。デパルマが過去に貢献した映画の革新を引き継ぐ世代でもありながら、また違った形の映画作りをしていることを彼から強調されているのではないか、というこの問に対し、パルトロウは「確かに私たちと彼の間には世代が違うという事実による隔たりがあるように思われました。しかし、彼が言うには、私もいずれ年を取り、どのような環境で作品をつくっていくのかということについて、より深い考えを持つようになるそうです」と答えている。バームバックはパルトロウの発言に対し、とても面白いとうなずきつつも、「映画を作るということは常に、視覚から得たものに対してやりとりをすることです。たとえそれが私自身の作品であっても、環境や他者の意見といった外的要因を無視することはできないでしょう」と述べている。*3

ドキュメンタリーの中で、デパルマはバームバックについて「私が彼に会ったのは20年ほど前のことだ。彼は非常に快活で、私は彼のことをすぐに気に入った。なぜなら、私たちの映画演出におけるアプローチのやり方は全く異なっていたからだ。物語をいかに映像で語るか、といった際のお互いの違いに、私たちはすっかり魅せられてしまった。」と語っている。また撮影時のことをこう回想してもいる。「5年前、パルトロウの家のリビングルームでインタビューを受けた。パルトロウがビデオカメラを回し、バームバックが録音をしていた。まるで昔大学で映画を学んでいた頃のようだったよ。そこにいる3人の人々が、一つの映画を作るチームなんだ。」*4

参照
*1http://www.indiewire.com/2016/06/brian-de-palma-documetary-hollywood-tv-noah-baumbach-jake-paltrow-1201683547/
*2https://www.theguardian.com/film/2016/jun/07/brian-de-palma-carrie-scarface-retrospective-documentary
*3filmmakermagazine.com/98774-this-is-what-movie-feels-and-breathes-and-looks-like-noam-baumbach-and-jake-paltrow-on-de-palma/#.V1f8gZFWBit
*4http://www.imdb.com/title/tt1683048/?ref_=tttr_tr_tt

吉田晴妃
現在大学生。英語と映画は勉強中。映画を観ているときの、未知の場所に行ったような感じが好きです。映画の保存に興味があります。


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