[365] 女性撮影監督であること


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(画像:ICFCより)

Cinematographer(シネマトグラファー)、Director of Photographyは直訳すると「(写真)撮影監督」という意味になり、いわゆる映像の責任者である。監督のイメージする世界観を表現すべく基盤を築いていく指揮を担い、映像を主とする映画というメディアにおいては大きな責任を伴うポジションである。映画から受ける印象やイメージを大きく左右し、欠かせない存在だ。

映画界における男性社会はしばしば議論にあがるが、その傾向は役職によっても大きく異なる。撮影監督はそんな男性社会においてもっとも偏りがあると言って過言ではないだろう。実際、2013年度のデータによると、この業界で活躍する女性の割合はなんと2%(2013年興行収入トップ250の中より)同年の同じデータ内における女性監督は6%よりもはるかに少ない。 (*1)

ここ数年間、積極的に女性監督を後押しする活動が目立つようになってきているが、女性撮影監督においてはまだまだ認知が足りておらず、映画界で見落とされがちなマイノリティだとみなされている (*2) そんな究極的な男性業界と化している撮影監督の世界の女性たちが声をあげはじめている。

最近、映画業界に限らず広告メディアやミュージックビデオなど広いジャンルでシネマトグラファーとして活動しているすべての女性たちのためのICFC(International Collective of Female Cinematographer)という組織が発足した。世界中の女性撮影監督の集う場所として、現在活動中のメンバーたちのプロフィールを掲載。そこから興味のある撮影監督と直接連絡が取れるようになっている。ある委員は創立にあたってこのような言葉を述べている。「女性シネマトグラファーも別に魔法を使うわけではなく、男性同様に技術的な意味でのマジシャンなのです。女性シネマトグラファーというのは決して珍しくなく、その点においては誇張されすぎていると思いますが、雇用環境や条件における問題はしばしば見落とされがちな傾向にあります」(*2) 全米撮影監督協会(ASC)に登録されている347人のうちの女性はたったの14人しかいなく、その枠外で活動している数の方が圧倒的に多いという事実がある。そしていままで、女性(単独で)がアカデミー賞撮影部門にノミネートされたことは一度もないのだ。(*1)

これらの問題について現在女性撮影監督として活躍するElle Schneiderはカメラという技術的な観点からの考察を述べている。

「撮影監督として仕事が取れるようになる前の段階では自分たちの持っているカメラや道具のラインナップによって差がつけられているということがよくあります。特に駆け出しの頃に参加するインディ映画の世界では(デジタル化あとの世代)そのカメラのリストによって選ばれることが当たり前のようになっています。また、意識的に差別をしているわけではありませんが、テクノロジー=男性のようなステレオタイプを含む構図が存在していることは事実であり、それによってカメラ自体を手にする機会が圧倒的に少なくなってしまうということが起こります。例えば、大きなプロダクションのカメラ部門に知り合いがいて、そこからカメラを借りることができるという関係性を持っているのは、やはりそこで働く割合から男性の方が多くなる。最初の段階でどれだけカメラで撮影できるか否かは経験を積んでいくうえでは大きな差につながっていくことになるので、これは大きな問題です」(*2)

カメラやその他の細かいギアに関するステレオタイプが業界にかかわらず大きく影響していることは明らかだろう。しかし、その壁を乗り越えていくことができれば、男女関係なくそれぞれのスキルで勝負していくことができる。その機会を増やしていくためにも上記で述べたElle Schneiderは女性撮影監督のための助成制度を始めた。(Digital Bolex Grant for Women Cinematographers

現在活躍中の多くの女性撮影監督たち、そして男女関係なく同じ業界で活動しているすべての撮影監督たちによってチャンスの場を提供していくことが必要なのかもしれない。また、相性のいい監督とタッグを組むことも自分の仕事をやっていくうえでとても大切だとElle Schneiderは言う。(*2)

同時に撮影監督を目指す人たちにとって重要なことは、積極的に撮っていくことだろう。『パロアルト・ストーリー』の撮影監督を務めたAutumn Duraldは自分の経験則よりElle Schneiderと同様に実際に撮ることの重要性について語っている「撮った分だけそれは自分の糧になります。私は片っ端から撮れる機会に。撮れば撮るほど撮りたくないものがわかってきて自分のスタイルというものが浮かび上がってきます」(*5)

ICFCのサイトを見ているとそこには大勢の女性撮影監督たちが登録されている。映画を手がける人が多く、インディ映画界でも名を聞く作品も多い。背景に隠れてしまいがちなその存在を知っているだけでも大きな変化となるはず。これからの彼女たちの活躍に注目していきたい。

(*1) http://www.digitalbolex.com/grant/grant-statistics/

(*2) http://www.indiewire.com/article/female-cinematographers-collective-international-icfc

(*3) http://icfcfilm.com/

(*4) http://www.digitalbolex.com/grant/

(*5) http://www.indiewire.com/article/tribeca-film-festival-autumn-durald

mugiho
早稲田大学休学中 日本国内を南から北へ、そして南半球の国を行き来していまはとりあえず東京に落ち着いています 映画・活字・音楽・書くことが好きな人間 物語を語るということが好きなものにすべて共通していて映画もそこに一番惹かれます。


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