[361]クストリッツァのカンヌ未出展をめぐる騒動


クストリッツァ
 今年5月11日から22日にかけて開催されるカンヌ国際映画祭でセルビアを代表する映画監督、エミール・クストリッツァの最新作は上映されない。過去『パパは出張中!』(1985)と『アンダーグラウンド』(1995)の二作品でパルムドール受賞を果たし、2016年に新作『On The Milky Road』が発表されたとなれば、カンヌ出品を期待されるのは当然である。しかし、今月14日に発表された公式セレクションに含まれていなかった。
 これを受け今月19日、「クストリッツァ、プーチンを支持したことによりカンヌ映画祭に拒否される」と見出しが付けられた記事がthe Hollywood Reporterで発表された。そしてさらに、これが嘘であったことが数日後の記事で発表された。
 最初のthe Hollywood Reporterの記事によると、『On The Milky Road』がロシアの大統領、ウラジミール・プーチンを支持する内容であったため、政治的偏見によりカンヌ映画祭に出展を拒否されたという。今月に入ってクストリッツァは、彼のバンドNo Smoking Orchestraとともにロシアの州の賛美歌でパリのショーのオープニングを務めたり、ここ数年、プーチンとクレムリンのウクライナに対する政策を支持していることを表明したりしていたことが要因であったようだ。記事のなかで、ロシアの通信社が「最近政治はますますカンヌの仕事に干渉してくるようになった。誰かがわたしの映画を受け入れるべきではないと要請したのではないかと疑っている。映画を締切の一日遅れで提出したが、見てもらえなかった」とクストリッツァが言ったと伝えられたという記載があった。
 数日後に上の報道を撤回した記事では、クストリッツァがプーチンを支持したためにカンヌ映画祭に拒否されたことを否定したと報じている。嘘の報道はロシアの通信社によって捏造されたものであると、Screen Dailyの独占インタビューでクストリッツァ本人が語った。さらに、「非常に混乱しています。何が起きているのかわかりません。誰にも何も言っていません」とも述べている。締切の一日後に提出したという報道については、映画祭の締切さえも知らなかったという。カンヌはクストリッツァの映画をほしがったようだが、まだ完成していなかった。映画祭に間に合うように映画を撮影していたが、カンヌ映画祭前にパリで映画のワンカットを上映したとき、特殊効果や諸々の編集、映画を短くする作業などやるべきことが多く、映画祭には間に合わないと悟った。
 確かにクストリッツァはプーチンをセルビアの後援者と見なして支持していることを公にしている。しかし、そのことが彼の仕事の妨げとなったことやカンヌが彼の映画を拒否する偏見となったことはないと主張している。「こんなことはありえません。なぜなら映画はまだ完成していないのだから」

 『On The Milky Road』は、ある男の人生の三つの期間を三部に分けて構成された物語で、主人公の男をクストリッツァ監督自身が演じている。主演女優は昨年公開の『007 スペクター』のボンドガールで注目を集めたモニカ・ベルッチだ。秋のベネチア映画祭で発表される見込み。

http://www.hollywoodreporter.com/news/emir-kusturica-cannes-vladimir-putin-885466
http://www.screendaily.com/news/production/emir-kusturica-hits-back-at-cannes-reports/5102874.article?referrer=RSS
http://www.theguardian.com/film/2016/apr/21/emir-kusturica-denies-saying-cannes-rejected-him-over-putin-the-milky-way

原山果歩 World News部門担当。横浜国立大学教育人間科学部人間文化課程所属。ウディ・アレンとウィキッドとチーズと緑色。


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