ドキュメンタリー映画への関心が高まるに連れ、その弊害も見えてくる。中立な視点を巡る議論は語り尽くされることはないだろうし、どこまで映してよいのかというはっきりした線引きはいつまで経っても決まらないはずだ。
 World Newsでもしばしばドキュメンタリー映画の話題を取り上げ、ドキュメンタリー映画を撮る際の倫理面における心構えを紹介したこともあった。今回はドキュメンタリー映画の法的側面に注目して、映画制作者の援助を専門にしているという弁護士が書いた記事を紹介したい。

 契約書を作っていないことで大きな損害を被った制作者が後を絶たない。あらかじめ契約書に署名しておくことがいかに大切であるか。配給会社は、契約書のない映画をわざわざ法的な罪に問われるリスクを冒してまで買い取ることはないのだ。
 特に「ドキュメンタリー映画」に絞って言及するのは、物語映画ではあまりこの問題にぶつかることが少ないからだ。おそらく物語映画においては、個人の資本提供に依拠している性質上、事前に配当や権利を決めるために弁護士を雇わざるを得ないため、契約書を書いていなかったという事態になりにくいのだろう。一方ドキュメンタリー映画においては、あらかじめ法的問題を想定した対処を怠りがちなことが問題点である。
 金銭的な問題の他に、知的所有権や評判、信用度といった問題もある。具体的な契約に基づく協定は、ドキュメンタリー映画を製作する上で重要な、強い信頼関係を築く助けともなる。
 契約がなければ映画は買い取ってもらえないし、たとえ買い取ってもらえても、後になって問題が浮上することもある。法的問題に巻き込まれないためには、上映のオファーが来たり、映画祭での上映が決まったりする前に権利について理解し、契約をしておくことが重要である。
 権利を守る手助けをする弁護士、法的なアドバイスを無償で提供してくれるボランティア弁護士、法的被害を課題としたワークショップ、この問題を取り扱った良書など、参考にできるものは数多くある。労力の5%を、問題の想定にあてるだけで、最悪の事態を免れることは多いのだ。

http://www.indiewire.com/article/documentary-filmmaker-legal-business-contracts-independent-film-20160330

原山果歩 World News部門担当。横浜国立大学教育人間科学部人間文化課程所属。


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