ダウンロード1月30日、世界最大のインディペンデント映画の祭典、サンダンス映画祭が閉幕した。当サイトでも既報の通り、今回のサンダンスでは、アマゾンやネットフリックスなどの大手映像配信会社の参入や、黒人監督によるもう一つの『国民の創生』が大いに注目を集めた(参照:[322] 進化するサンダンス映画祭[325]もう一つの『国民の創生』)。ニュースなどでは劇映画に関する報道が目立ったが、ドキュメンタリーに関してはどのような動きがあったのか。今回のサンダンスで明らかになったインディペンデントなドキュメンタリー映画の行方について詳しく伝えたい。

アメリカでは、27歳で死去したイギリスの歌手、エイミー・ワインハウスのドキュメンタリー『AMY』(2016年夏日本公開予定)や『Making a Murderer』などの成功があり、ノンフィクション映画の市場は急成長している。今回のサンダンスでも、タイム・ワーナー傘下のケーブルテレビ局HBOが7本の映画を出品するなど巨大資本の参入が目立った。しかし、こうした巨大資本が提供するドキュメンタリーが「インディペンデント」なサンダンス映画祭に進出した結果、インディペンデントなドキュメンタリー作家たちは活躍の場を失ってもいる。

こうした状況があり、いま、ドキュメンタリー映画は岐路に立たされている。これから真にインディペンデントなドキュメンタリー作家たちは生き残りをかけた戦略を描く必要があるだろう。

こうした中で二つの大きなニュースが報じられた。一つは、サンダンス・ドキュメンタリー・フィルム・プログラム(DFP)が200万ドルを拠出し、新しい「Art of Nonfiction」のためのイニシアティブを発表したこと、もう一つはドキュメンタリー・セラーのサブマリンが、投資会社のGrosvenor Park Mediaと合同でドキュメンタリーのために数百万ドルの資金を提供することを決めたことだ。

DFPは、新たな才能を持つアーティストの発掘のために財政的・創造的支援を行うことを決め、1月18日には、『Kate Plays Christine』のロバート・グリーン監督、『The Great Invisible』のマーガレット・ブラウン監督、『These Birds Walk』のオマル・ミュリック監督とバサム・タリック監督を第一回該当者として発表したばかりだ。このイニシアティブは、プロジェクト単位ではなく、1年にわたってアーティストが自由にお金の使い方を決められる点に特徴があり、よりアーティスト主導型のプログラムになっている。
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また、著名なドキュメンタリー・セラー、サブマリンが投資会社Grosvenor Park Mediaと組み、数百万ドルを拠出して、演劇やテレビなどを含むノンフィクション作品を支援する投資ベンチャーを立ち上げたことも関係者を驚かせた。サブマリンは今年サンダンスに『NUTS!』や『All These Sleepless Nights』などの作品を送り出しており、インディペンデントな才能を支援する団体として大いに期待することができる。

サブマリンの代表、ジョシュ・ブラウンはIndie Wireの取材に対し、商業的関心と同じくらいドキュメンタリーに対する情熱も持ち合わせていると答えたうえでこう語った。
「僕らが夢描いているシナリオは、映画ファンがすごい映画だと好きになった映画にお金を払うことで、市場にお金を還元していきたいということだね」。

私たち映画ファンも彼らと同じ夢を共有しているだろう。果たしてこの夢は現実のものとなるのか。世界のドキュメンタリー市場に注目が集まっている。

参考サイト:
[1] Reality Checks: This Year’s Sundance Showed How the Documentary Film World is Changing

[2] Sundance Launches New Initiative to Spur Inventive Artistic Practices in Nonfiction Film

[3] Sundance: Documentary Gets a Multi-Million Dollar Boost From Submarine and Grosvenor Park

坂雄史
World News部門担当。慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程。学部時代はロバート・ロッセン監督の作品を研究。留学経験はないけれど、ネイティブレベルを目指して日々英語と格闘中。カラオケの十八番はCHAGE and ASKA。


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