[324]LGBT映画賞のさきがけーテディ賞30周年によせて


[324]LGBT映画賞のさきがけーテディ賞30周年によせて

 テディ賞という映画賞の存在を、あなたはご存知だろうか?
 テディ賞は、ベルリン国際映画祭の中の一部門で、LGBTIQをテーマにした映画におくられる、世界で初めて誕生した公式クィア映画賞だ。そのテディ賞が、本年度のベルリン国際映画祭で30周年を迎えることとなった。
 テディ賞は短編門、ドキュメンタリー部門、長編映画部門に分かれており、今年は例年通り候補作の選定のほか、30周年記念として、今までの受賞作のなかから17作品を上映するレトロも企画されている。
 テディ賞の始まった1987年には、当時無名だったガス・ヴァン・サントの”Five Ways to Kill Yourself and My New Friend”が短編部門の大賞に、長編部門の大賞にはペドロ・アルモドバルの『欲望の法則』が選ばれた。この賞ができるまでは、彼らのようなセクシュアルマイノリティの作家たちは、賞レースを中心とする映画文化のなかではある意味ないがしろにされてきた傾向があった。シャンタル・アケルマンやウルリケ・オッティンガーなど、女性作家たちも同じような状況に苦しんでいた。アウグスティ・ヴィァロンガ、ダン・ウォルマン、ローター・ランバートなど、男性の監督たちもないがしろにされてきた。
 今回のテディ賞の文脈は、こういった光のあたってこなかったLGBTの作家/LGBTをテーマにした作家たちを特集するものであるので、ゲイの監督として世界に名高いローザ・フォン・プラウンハイムやヴェルナー・シュレーター、R.W.ファスビンダー、デレク・ジャーマンなどの作品はあえて上映されない。
 2016年のレトロ企画では、特にアケルマンの作品など。なかなか観ることのできないレアな作品を上映することが決まっている。そうして作品を通して、なぜテディ賞という賞ができなければならなかったのかという歴史的意義について立ち返ってもらうのが目的だ。(*1)
 もちろん、テディ賞ができる前にもクィア映画は存在した。オーストリア人の作家であるリチャード・オズワルドの”Anders als die Andern”(1919)などがそれだ。テディ賞は30周年を記念して、映画史における最初のゲイの監督といわれるオズワルドのこの作品のリマスター版もプレミア上映される。(*2)

(*1)ベルリン国際映画祭HP
(*2)テディ賞HP

藤原理子
World News 部門担当。上智大学外国語学部ドイツ語学科4年、研究分野はクリストフ・シュリンゲンズィーフのインスタレーションなどドイツのメディア・アート。上智大学ヨーロッパ研究所「映像ゼミナール2014」企画運営。ファスビンダーの『マルタ』のような結婚生活をおくることを日々夢見ております。


コメントを残す