先週の火曜日(7月8日)第12回中東映画研究会にてイラン人女性監督モナ・ザンディの初長編映画で日本未公開作品の『金曜日の午後に』が上映された。
『金曜日の午後に』は、近親相姦そして婚外出産といったタブーに大胆に踏み込んだ作品でありイランでは論争を巻き起こした。
この上映に合わせて来日されていたイラン人女性監督モナ・ザンディ監督は、映画上映後に登壇されイラン人女性監督のイラン社会における役割について語った。
イランでは文化・芸術活動を行う時に必ずMinistry of Culture and Islamic Guidance (ペルシャ語ではErshad)から活動許可を得る必要がある。Ershadはその文化・芸術活動がイスラム教的であるか、またどのような影響を社会に及ぼすか検討し活動範囲や条件を定める。Ershadの基準は政権交代に合わせて多少変動する。さて、『金曜日の午後に』は2005年ハタミ大統領政権時に撮影許可を得て2006年2月第24回ファジル映画祭にて上映そして受賞した。しかし、『金曜日の午後に』がイランの映画館で公開されたのは5年後だった。2006年に穏健派でしられていたハタミ政権からアフマディネジャド政権に政権交代がなされ映画上映の許可が得られなかった。2006年の2月にファジル映画祭での上映が許されたのは大統領の交代に遅れてErshadのトップが交代されていなかったからだ。
監督は1979年イラン革命後のイラン人女性監督を政権交代そして文化的成長に応じて三つの世代に分ける事が出来ると語った。第一世代のイラン人女性監督は革命後のイラン社会において女性の芸術活動がタブーであった環境下で勇敢に家族そして社会の批判と戦い女性の活動の可能性を広げたパイオニアである。第二世代は、第一世代が築き上げた環境を活かしイラン国内で触れられることのなかった問題にクローズアップし女性監督のイラン社会への影響力を高めた。そして第三世代である今は、イラン国内に限定せずに世界的に普遍的な問題を取り上げる事で、イラン人女性監督への国外からの注目が高まりつつある。
モナ・ザンディ監督が指摘したように、現代のイラン人女性監督は精力的に活動している。
また、同じ第三世代のイラン人女性監督プーラン・デラフシャンデ監督(Pouran Derakhshandeh)の日本未公開作品『Hush! Girls don’t scream!』は強姦そして声を上げる事の出来ない被害者女性の長年にわたる苦しみを題材とし、第31回ファジル映画祭の受賞作品である。プーラン・デラフシャンデ監督は記者会見で次のように述べている。
「この映画は、2001年、クルディスタン地方のある男性から自分宛てに送られてきた2冊のノートから始まりました。ノートはある男性の過去について書かれたものであり、その内容が強烈すぎて私はノートを封印しました。後の2007年に、ある少女が私のもとにやってきて、彼女の人生について打ち明けてくれました。その内容もまた強烈で、私はとても心を動かされ映画を作ることに決意しました。映画を制作するにあたり700人の少女のインタビューをして、より一層この映画製作への責任を感じました。社会的タブーの題材を扱ったテーマの映画制作の資金調達は厳しいものでしたが、インタビューをしてきた少女らの話を思い出し、借金を抱えてでもこの映画は完成させなくてはならないと強く思いました。・・・私が作った映画はイラン社会のみの問題ではなく多くの社会が抱える問題で、早急に明らかにし解決をする必要のある問題なのです。」
インタビューのソース:http://www.tabnak.ir/fa/news/335638 (ペルシャ語)
Hush! Girls don’t scream! : http://youtu.be/CtM-3nBMJEw
By Sevin
中東現代アートの研究・ペルシャ文学の翻訳をしています。https://facebook.com/sevan419
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