みなさん、こんにちは!今月の10日から27日にかけて、ニューヨークで、サブウェイ・シネマ(Subway Cinema)主宰のアジア映画祭(New York Asian Film Festival/NY AFF)が開催されます。同映画祭は2000年に始まり、今年で14年目を迎えます。
日本映画も複数の作品の上映が予定されていますが、本日はその中から落合賢監督『太秦ライムライト』(2014年6月公開)を取り上げたいと思います。本作は、東映時代劇を長年支え、京都の太秦撮影所で活躍して来た71歳の斬られ役の名優、福本清三さんを主役に迎えて、その視点から時代劇の名作を生み出した、かつての「日本のハリウッド」、太秦の物語を描いています。本作は日本外国特派員協会(FCCJ)、ジャパン・ソサティの紹介もあり、日本のサムライ映画を題材とした作品として、海外でも注目を集めようとしています。
1950年代、映画の花形は時代劇でした。京都の太秦には多くの映画会社の撮影所が設けられ、賑わいました。戦前からの時代劇スター、片岡千恵蔵、市川右太衛門に、中村錦之助や東千代之助の大型新人が加わり、市川の息子の北大路欣也も子役として活躍した時代でした。1956年には配給収入が松竹を越え、東映は時代劇人気を背景に黄金期を迎えます。それでも60年代に入ると映画の中心は現代劇へ、撮影所も京都から東京へ、主力が移り、娯楽時代劇は斜陽期に入りましまた。
エンターテイメントとしての時代劇の要はなんといっても殺陣でした。「5万回斬られた男」(ご本人談では、それは大げさで、実際には2万回くらいだろうとのこと)、福本さんは「大部屋俳優」としてのキャリアを貫き、斬られ方も探究し続け、「えび反り斬られ」の開発でも知られています。映画の中では、若い女優と師弟関係を結び、その技術を継承させます。スター俳優を輝かせる多数の中で一人として散る美学が光ります。
FCCJで、本作は落合監督がアメリカ、南カリフォルニア大学で映画制作を学んだ時に、時代劇の世界的認知の必要性を確信したところから始まったと紹介されています。アメリカでロサンゼルスを基盤に活動するプロデューサー、コウ・モリ、そしてその友人のアメリカ人撮影監督の協力を得て、「日本の伝統」と「世界の感性」が見事に出会った作品となったと評価されています。
太秦の「サムライ映画」はハリウッドの西部劇とも重なるかもしれませんが、タイトルから先ず、チャップリンの『ライムライト』を思い起こす人は多いでしょう。落ちぶれたかつての人気道化師、カルヴェロ(チャーリー・チャップリン)が、若く才能触れるバレリーナ、テリー(クレア・ブルーム)を助け、彼女をスターダンサーに押し上げます。年老いた道化師は、美しい踊り子の手助けも得て、奇跡的なカムバックを果たすも、彼女の愛を拒絶し、彼女がスポットライトで輝く姿を見届けて、生涯と閉じます。かつて舞台照明に使われた石炭製の強烈な白光を出すライムライト(灰白灯)は、電球にとって代わられることになりますが、脚光を浴びる名声やスターダムの意味も持ちます。『ライムライト』は、チャップリンの米国での最後の作品であり、それまでライバル言われてきたものの、当時人気の衰退にあったバスター・キートンの配役も話題になりました。
今も日々生み出される映画が、映画の大きな歴史の中にあることが思い出されます。2012年のクエンティン・タランティーノ監督の『ジャンゴ』も記憶に新しいですが、アメリカでも西部劇は伝統のパターンを受け継ぎながら、新しいエッセンスも加えられ、一つのジャンルとして生き続けています。日本の時代劇というジャンルにも希望を込めた『太秦ライムライト』が日米の観客にどう受け入れられるか、楽しみです。
なお、『太秦ライムライト』では、東映テレビで映像化された司馬遼太郎原作『新撰組血風録』の土方歳三役で、人気を博した栗原旭、かつての主役スターが脇をしっかりと支えています。
(記事 コキマダエウ)
Subway Cinema:http://www.subwaycinema.com/
『太秦ライムライト』
HP:http://uzumasa-movie.com/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=2DkvIhuL8x0
ジャパン・ソサエティ: http://www.japansociety.org/event/uzumasa-limelight
The Foreign Correspondents’ Club of Japan / FCCJ: ://www.fccj.or.jp/…/item/397-uzumasa/397-uzumasa.html
Subway Cinema | NYC’s Source for Asian Film since 2000
www.subwaycinema.com
Subway Cinema (New York Asian Film Festival, Ltd.) is America’s leading non-profit organization dedicated to increasing exposure and appreciation for asian popular film culture in all its forms.


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