スコセッシを「凄まじいほど不快」と唸らせた幻の豪映画、40年以上の時を経て今秋初公開

「オーストラリアを描いた、史上最高で最恐の映画」(ニック・ケイヴ)、「言葉を失った」(マーティン・スコセッシ)、「パワフル、ショッキング、でも凄い」(ロジャー・エバート/CHICAGO SUN TIMES)…1971年のカンヌ国際映画祭上映時、猛烈な反響を呼んだ幻の作品『Wake In Fright』。製作から40年以上を経たこの秋、新宿シネマカリテで行われる日本未公開の驚愕映画特集「初公開!世界のどす黒い危険な闇映画」第1弾として、『荒野の千鳥足』との邦題で9月27日からレイトショーにて初上映される(*1)。

本作は、『ランボー』でお馴染みのテッド・コッチェフが監督、『ハロウィン』シリーズの故ドナルド・プレザンスが主演した1971年のオーストラリア映画。オーストラリアの灼熱の砂漠地帯を舞台に、ビール、乱闘、博打、狩猟といった誘惑により、若い男性教師が破滅へ向かう姿を描いた作品である。

長年にわたり、『荒野の千鳥足』は“オーストラリアの失われた素晴らしい映画”としての定評を維持し続けていた。それもそのはず、1971年のカンヌ国際映画祭で出品された本作は、その後欧州、北米、豪州などで立て続けに公開されながらも、以後長年にわたりネガ、プリントが行方不明となっていたためである(*2)。もちろんオーストラリア本国でさえもテレビ上映はおろか、VHSやDVD化もされていなかったため、「幻の映画」と揶揄されていた。しかし、2004年に米国ピッツバーグにて良好なプリントが遂に発見され、待望のデジタル化。2009年にオーストラリアの映画館で上映されると、瞬く間に反響を呼び起こした。また、1971年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門出品時に「凄まじいほどに不快。視覚、物語、空気感、そして精神的にも素晴らしく、観る度に皮膚の裏側に衝撃が走る…」とまるで酷評のような絶賛をしていたマーティン・スコセッシだが、彼の推薦により、2009年カンヌ映画祭クラシックス部門でも上映された。

欧米ではリバイバル公開が大きな話題となり、特にアメリカでは「世界最高の映画館」とも言われるALAMO DRAFT HOUSEの配給によって公開、圧倒的な支持を集めた。いまや『荒野の千鳥足』は“オーストラリア・ニューウェイヴ(1970年代初期から80年後期にわたるオーストラリア映画の世界的流行)”の流れに大きく影響を与えた一作品として評価されている。日本では一度も公開されることなく終わっていた衝撃作がこの度、奇跡の映画館上映である。70年代独特の凄絶なバイオレンス描写と後味の悪さを期待できるだろう。

『荒野の千鳥足』は、9月27日(土)より新宿シネマカリテにてレイトショー上映。

(記事・内山ありさ)

*1 映画.com
http://eiga.com/news/20140618/4/

*2 Rooftop
http://rooftop.cc/news/2014/06/18123000.php

*3 The Guardian
http://www.theguardian.com/film/2014/mar/09/wake-in-fright-kermode-kotcheff


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