[047]革命後イランにおける映画と社会


イラン映画のシンポジウムに関する情報〜『革命後イランにおける映画と社会―権威主義体制下の娯楽と抵抗の文化―』

イラン映画と聞いてどの監督を、そしてどの作品を連想するでしょう?
一番記憶に新しいイラン映画は今年の4月19日に日本で公開された『ある過去の行方』ではないでしょうか?『別離』でアカデミー賞を受賞したアスガー・ファルハディ監督の新作です。
アスガー・ファルハディ監督は『別離』と『ある過去の行方』を通して1979年に勃発したイラン革命から35年近くたった現在のイラン社会が直面している’危機’を伝えようとしています。

1979年に勃発したイラン革命はイラン国家の舵を180度回転させイスラム教を国家の重要な判断基準に位置づけたイスラム共和国を建国しました。イラン国民は今までの価値観を否定され、イスラム教が絶対である世界に放り出されたのです。そしてイラン革命後、毎年増加する外国移住の結果、国外のイラン人による新たなイラン文化そして次第に新たな”イラン”が築かれています。国外の”イラン”が成長するに連れて本当の”イランらしさ”とは何なのかという疑問を抱いた多くの国内外のイラン人がアイデンティティ・クライシスに直面しているように思えます。彼らは時には他者である西洋を真似、また時には西洋を否定することで新たな価値観を築こうとしています。そしてアスガー・ファルハディ監督は2作品を通して価値観の違いによりる家庭崩壊を描いていますが、家庭を”イラン国民・国家”に置き換えることで監督の隠されたメッセージが見えてくるのではないでしょうか。

さて7月5日に『革命後イランにおける映画と社会』と題する公開シンポジウムが開催されます。日本とイラン両国の研究者によるイラン映画の背景を理解するための報告に加え、プロジェクトの一環として制作された初公開のドキュメンタリー映画2作品上映されますが、イラン人女性監督モナ・ザンディ監督による未公開作品は必見です。モナ・ザンディ監督の初の長編映画『ある金曜の午後』(日本未公開)はイラン人女性の苦しみと葛藤を描いた作品であり、試写会後5年間政府により公開上映の許可がおりなかった事で話題になりました。『ある金曜の午後』は16歳の時に親戚にレイプされ妊娠し父親に絶縁された女性が主人公です。身寄りの無い女性が巨大都市テヘランで生き抜こうとする葛藤と努力の姿がドキュメンタリータッチで描かれています。この事からも、モナ・ザンディ監督のイラン人女性への関心そして問題意識の高さが伺えます。今回イランから来日されるテヘラン大学日本文学の教授ゴドラトッラー・ザーケリー氏は俳句そして『方丈記』の翻訳家でもあり日本の文化に精通されています。また、テヘラン大学芸術学部の教授であり女性脚本家でもあるナグメ・サミーニー氏によるイラン人女性と映画に関する報告はイランの現状を知れる生の声が聞ける貴重な機会です。

・『ある過去の行方』の公式サイト:http://www.thepast-movie.jp/
・シンポジウムの公式サイト:http://www.kikou.waseda.ac.jp/ias/research/nihu2.php?id=892
・ゴドラトッラー・ザーケリー氏に関する日本語の記事:http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/html/pc/News20131112_132557.html

Posted by Sevin
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