experimenter (1)

初めまして。新しくWorld Newsで活動させていただくことになりました、早稲田大学1年生のmugihoです。

さて、スターウォーズ公開を間近に控え、(2ヶ月を切りました!)既に各国で公開され絶賛されている『オデッセイ』等、映画界に科学と宇宙の風が吹いています。そしてインディ映画界でもサイエンスが今熱い!ということで今日は科学の方にフォーカスして、先日ニューヨーク映画祭で公開された心理学的伝記映画、Experimenterについて紹介したいと思います。

この作品は2008年にサンダンスラボによる奨学金を受け、その後スローン財団によるインディペント映画の助成を受けて、長い年月をかけて完成されたスタンリー・ミルグラムという人物と彼の行った実験を描いた伝記映画です。今月16日にアメリカで劇場公開されました。(*1)

ミルグラム実験とは1961年にイェール大学の社会心理学者、スタンリー・ミルグラムによって行われたもので、彼は、権威に命令された時一般市民がどのように振舞うか調査しました。今作品はこの実験の結果を示すと共に、それが公開された時の社会的影響、そしてミルグラム自身の人生も描いています。彼の人生の三つのステージにフォーカスしたものとなっているのです。(これはまた、彼が実際に雇われた3校の違う大学がそれぞれの背景となっています。)監督・脚本は現代版『ハムレット』のマイケル・アルメイダ、主演は『ニュースの天才』で名前を挙げたピーター・サースガードに妻役は『エイジ・オブ・イノセンス』からのウィノナ・ライダーとなっています。(*2)

アルメイダはインタビューで科学技術とその可能性について次のように語っています。

――あなたの多くの映画は科学や技術というものを題材にしていますが、そうしたテーマをどのように映画に組み込んでいくのでしょう?

アルメイダ:テクノロジーというのはどうやら自分たちの毎日の生活の表面ばかりではなく、もっと実質的な中身に織り込まれているみたいだ。私たちはそれを発見するたびに驚く。それにとても魅了されるしテクノロジーに希望と恐怖を同時に抱くことができる。

また、Experimenterの製作過程については、次のように語っています。

アルメイダ:自分にとって一番勉強になったのはミルグラムを直接知っていた人と話したことだ。特に彼の奥さんはこのプロジェクトに非常に貢献してくれた。そしてミルグラム自身が撮影した映画を観て大きく影響されたんだ。彼は才能のある監督だった。ロジャー・イーバートが重要だと認めるドキュメンタリー十作品のうちのひとつにミルグラムの処女作が含まれている。映画の中盤で彼が直接カメラに向かって話し始めるシーンもミルグラムの映画を観て思いついたんだ。彼は多くの作品で、まるでロッド・サーリング(『トワイライト・ゾーン』の脚本と出演などで有名)やアルフレッド・ヒッチコックのようにおどけた調子でカメラに向かって語りかけていた。これは彼が観客に向かって話すのに一番本質的な方法のようだった。(*3)

アルフレッド・P・スローン財団は、科学や技術の世界を幅広く認識してもらうというビジョンを掲げ、科学技術に関する芸術作品全般の助成団体も運営しています。映画の分野で言えばサンダンス映画祭で実施される科学技術関連映画賞もこの団体によるものです。過去にはサンダンス映画祭で審査員大賞を受賞した『プライマー』や観客賞受賞の『聖者の谷』等もこの賞を受賞しました。他にもマイケル・ケイヒルの『アナザー・アース』、『アイ・オリジンズ』も同賞受賞作です。今までのサイエンス・フィクションとはまた異なった流れで、より哲学的で人間によりフォーカスしたもの、また、科学色を強く出す作品がこのタイプのインディ映画における特徴であるような気がします。(*4)

*1 http://scienceandfilm.org/articles/2597/experimenter-set-for-nyff-premiere-on-october-6

*2 http://www.imdb.com/title/tt3726704/
http://www.imdb.com/?ref_=nv_home

*3 http://scienceandfilm.org/articles/2599/michael-almereyda-on-experimenter-the-sloan-interview

*4 http://www.sundance.org/blogs/news/sundance-institute-and-alfred-p-sloan-foundation-award-60-000-in-science-in-film-prizes-at-the-2015-sundance-film-festival

http://www.cinemarise.com/theater/archives/films/2005016.html

mugiho
早稲田大学在学中。
日本国内を南から北へ、そして南半球の国を行き来していまはとりあえず東京に落ち着いています。ただただ映画・活字・音楽・書くことが好きな人間です。物語を語るということが好きなものにすべて共通していて映画もそこに一番惹かれます。知識などもなくまだまだ学ぶことがたくさんありますが自分なりの映画の見方を持ちながらどんどん学んでいきたいです。好奇心旺盛で飽き性な人間で集中力が乏しいのがいまの課題。最近、短編を書き始めました。


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