[286]ポール・ヴェキアリ新作、カトリーヌ・ドヌーヴとマチュー・アマルリック出演


paul vecchiali

 ジャック・ドゥミのかつての盟友、またジャン・ユスターシュの初期作品もプロデュースした、フランスの老練の映画作家ポール・ヴェキアリ。85才になった今もなお、意欲的に映画を撮り続け、昨年のロカルノ国際映画祭ではドストエフスキーの『白夜』を下敷きにした『Nuits blanches sur la jetée』を発表し、独立批評家連盟特別賞と監督賞を受賞している。*(1)

 そんなヴェキアリの次回作、『Le Cancre』は感受性の強い父と子の対立関係を描く9年に渡る物語で、ヴェキアリ自身によって演じられる父親が癌に侵されたことを機に、自分の初恋の相手であるマルグリット(カトリーヌ・ドヌーヴ)とのことを思い出す。彼女との再開を強く夢見て、今までの人生を振り返りつつ、様々な人たちと再開を果たしていき、何とかマルグリットの居場所を突き止めていくものらしい。*(2)

 本作を撮るにあたってヴェキアリはカトリーヌ・ドヌーヴ、マチュー・アマルリック、フランソワーズ・ルブラン(『ママと娼婦』)、ノエム・シムソロ(映画評論家)とエディット・スコブなどに出演を依頼したが、スケジュールや予算の都合で撮影期間がそれぞれ1日しか抑えられず、1人につき、1シーンの撮影を行う予定だという。

 ヴェキアリによってカトリーヌ・ドヌーヴ、フランソワーズ・ルブランやエディット・スコブといった女優たち、またマチュー・アマルリックがどのように描かれるのか興味は尽きない。作品は10月から撮影に入り、2016年に公開予定とのこと。最後に『Nuits blanches sur la jetée』で行われたヴェキアリとのインタビューの言葉を抜粋しつつ、新作を待ち侘びたいと思う。*(3)

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映画制作を始めるとき、演出家にとって最も重大な問題とは何か。それは魅了させることだ。役者を魅了させ、技術スタッフを魅了させなければならない。しかし、もし既にお互いをよく知り得ていれば、膨大な時間を稼げる。しかも、わたしは朗読させるから尚更だ。ある定義を主張させてほしい:言葉とは衣装のようなものだ。似合うか、似合わないかだ。だから俳優や女優と朗読を行うことで、言葉やあるフレーズにつまずくかどうかを見計らう。必ず朗読は行わなければならない。わたしが嫌うような、演劇などで行う読み合わせはしない。登場人物がその時どう思っているかなどの心理学は要らない。必要ないのだ。ただ言葉だけがそこにあり、もしそれで不十分ならば、仕方がない。それは映画が良くないからだ。そうしたことから、わたしは撮影監督や音響監督、ブームオペレーター、また時にはメイクアップアーティストと食事に行く。食事をして話し合う。映画の場面を思い出しながら。そして『Nuits blanches sur la jetée』にあるような光をわたしは得られると思っていなかったよ。

- あの光は見事でした。

素晴らしいものだった。わたしたちが5Dカメラと幾つかの日中のシーンをiPhoneで撮影を行ったにもかかわらずに。そしてボッティ(撮影監督のフィリップ・ボッティグリオーヌ)がピクセルに対してかなり懐疑的だったことから、少し不安もあった。すると彼がカメラに3つのレンズをくっつけることを提案してきた。わたしが頭に思い描いていたイメージは、街が夜に浮かんでいて、様々な光が後ろを動き回るもので、それは映画の少し不吉な側面を描くものだった。街が登場人物たちを脅かしているように:「あなたはわたしから逃れようとするのか。そんなことはできない!」というふうに。それが映画の着想だった。そして撮影初日の夜の音を聞いたとき、わたしは童心に返っていた。皆が水面の波打つ音をよく作り上げたと言ってくるが、あれは同時録音だ!おそらく役者たちは意識的に、あるいは無意識にそうした一種の音楽と戯れたと思う。
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ヴェキアリが5DカメラやiPhoneを駆使して撮影したという『Nuits blanches sur la jetée』はフランスで1月に公開されている。

NUITS-BLANCHES-SUR-LA-JETÉE-2

参考資料、引用元:
『Nuits blanches sur la jetée』予告編

http://www.lesinrocks.com/cinema/films-a-l-affiche/nuits-blanches-sur-la-jetee/ *(1)
http://www.lesinrocks.com/2015/10/05/cinema/catherine-deneuve-et-mathieu-amalric-au-casting-du-nouveau-film-de-paul-vecchiali-11779056/ *(2)
http://ceciditaubasmot.blogspot.jp/2015/07/de-lecriture-filmique-conversation-avec_89.html *(3)
http://www.shellac-altern.org/films/384 

楠大史
World News担当。慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科修士2年、アンスティチュ・フランセ日本のメディア・コンテンツ文化産業部門アシスタント、映画雑誌NOBODY編集部員。高校卒業までフランスで生まれ育ち、大学ではストローブ=ユイレ研究を行う。一見しっかりしていそうで、どこか抜けている。


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