[285] 新“ボンドガール”レア・セドゥが語るいくつかのこと


007シリーズの第24作『007 スペクター』(サム・メンデス監督)の公開まで1ヶ月を切り(日本では12月公開)、予告編をはじめ様々な情報が続々と公開され、出演者のメディアへの露出も増え始めました。『007 スペクター』で主人公のジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)と絡む女性=“ボンドガール”をモニカ・ベルッチとともに演じるレア・セドゥも例外ではありません。今日はそのレア・セドゥの最新インタヴューの中から興味深い発言をいくつかご紹介したいと思います。

1985年パリ生まれのレア・セドゥは2006年に” Mes copines”で映画デビュー。08年、ヒロインに抜擢された『美しい人』(クリストフ・オノレ監督)で一躍脚光を浴びました。そしてカンヌ映画祭でパルムドールを受賞した『アデル、ブルーは熱い色』(13年、アブデラティフ・ケシシュ監督)、『美女と野獣』(14年、クリストフ・ガンズ監督)によって世界的なスター女優となったのは皆さんご存知だと思いますが、『美しい人』から『アデル』の間で彼女が何本かのハリウッド映画に出演していたことに気づいていなかった人は意外に多いのではないでしょうか。『イングロリアス・バスターズ』(クエンティン・タランティーノ監督)、『ロビン・フッド』(リドリー・スコット監督)、『ミッドナイト・イン・パリ』(ウディ・アレン監督)、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロコトル』(ブラッド・バード監督)、『グランド・ブタペスト・ホテル』(ウェス・アンダーソン監督)……フランスで何本かの映画に主演する一方で、彼女はこれだけの英語圏の大作に脇役で出演しています。今回『スペクター』のヒロインに選ばれたのはこの活動の幅広さというか、バランス感覚も考慮されているように思えます。
インタヴューでハリウッド大作とアート作品の差異について尋ねられたレアは「製作費も違うし、観客も違う」とは認めながらも「でも、映画を作るという作業はいつも変わらない」と言います。
「エンタテイメント大作でもアート映画でも、適応することが大事。かつてフランソワ・トリュフォーは“女優は花を生けるための花瓶だ”と言ったわ。役者はいつも花瓶のようでいなきゃ。監督がその花瓶をどのように使おうが、受け入れるだけよ」

映画作品をその規模や性質では区別しないらしいレアですが、アメリカとフランスの役者にはちょっとした差異を感じているようです。
「アメリカやイギリスの俳優は遊び心があるわね。フランスはもうちょっと厳格なの」
「私にとって興味深いのは常に予想を裏切る演技に到達している俳優なの。フランスでは俳優はいつも同じ。たとえばジェラール・ドパルデューは本当に素晴らしい俳優だけど、彼は常にジェラール・ドパルデューを演じている。私はレア・セドゥを演じるように頼まれても、どうしたらいいのか皆目見当がつかないと思うわ」
そんな彼女が感銘を受けた俳優として名前をあげたのは――「私の心をとらえた女優は、アデル・エグザルホプロス。(『アデル、ブルーは熱い色』で)一緒に仕事をした時、彼女はまるで竜巻のようだった。常にそうだったのよ…。あれこそが真の演技だわ。それから、トム・クルーズ。彼は全ての仕事にその都度全力で打ち込んでいる。本当に魅了された」

アデル・エグザルホプロスとの共演作『アデル、ブルーは熱い色』は、アデルにとってもレアにとっても現時点での代表作であり、その体験は強烈なものだったようですが、この映画の公開後、レアは同作でのセックスシーンの撮影が悲惨な体験だったとメディアに語り、監督のケシシュとは二度と一緒に仕事をしたくないと発言。ケシシュもレアの発言に対し、傲慢で甘やかされた子供による誹謗中傷だと怒りを表明するなど、両者の確執が取りざたされました。彼女はその件について今このように語っています。「時々彼(ケシシュ)の夢を見るの……でも彼に腹を立ててはいない。論争になってしまったけど、自分の発言を後悔はしていないわ。映画は変わらず残り続けるもの」
また同作が女性同士の恋愛を描いているにも関わらず結局のところは男性のファンタジーに過ぎないと批評されたことに対しては「その通りだと思う」と同意を示し、こう続けます。「男性がふたりの女性について映画を撮ればどうしたってそうなるでしょ。でもあの映画にはあの作品にしかない真実や力があるわ」
「男性監督は常に自身の女性に対する欲望を(映画に)投影している。女性にどんなドレスを着てほしいか、どんな髪型をしてほしいかってね。女性の監督作品はもっと自分自身を投影したものになってる。でももし私が映画を作るとしたら、間違いなく自分の好みの顔つきの男性をキャスティングするわね。それこそが性的な投影になると思うから」

そんなレア・セドゥは、まさしく男性の女性に対する欲望が投影されたキャラクターの典型とも捉えられる “ボンドガール”を自身が演じることについてどのように感じているのでしょうか。
「ボンドガールのクリシェは気にしてないの。でも私が演じるマドレーヌという女性はとても異質な存在。だから私がボンドガールに選ばれたというのは、ひとつの選択、発表に過ぎないわ。だって私は典型的なボンドガールじゃないもの」
詳細はまだ明らかになっていませんが、彼女が演じるマドレーヌ・ホワイトという役柄はダニエル・クレイグ版007の最初の2作『カジノ・ロワイヤル』『慰めの報酬』に登場した敵役ミスター・ホワイト(イェスパー・クリステンセン)の娘で医者という設定とのこと。The Guardianの記者に、“マドレーヌ”という役名をプルースト愛読者は半ば冗談のようにとらえるのではないかと問いかけられた彼女は、「そうね。実際、この作品の全てのことは追憶とともに起こるのよ。『スペクター』ではボンドの過去が掘り起こされる。そしてマドレーヌはまさしく彼の思い出をよみがえらせる存在なの」と答えています。

UK版「VOGUE」では、「私は典型的なボンドガールじゃない」と発言しながら、いかにもボンドガール的なコスチュームでグラビアを飾ってみせる。007新作『スペクター』のPRの一貫として取材されたインタヴューで好きな俳優に“イーサン・ハント” であるトム・クルーズの名前をあげる。「女優をやっているのは他の人が世話をやいてくれるから。一種の逃避」と発言しながらも、取材場所にはひとりで時間通りにやってくる。
そんな女優レア・セドゥがボンドガールを演じる『スペクター』、そして彼女が次に出演するのがどんな作品になるのか、楽しみに待ちたいと思います。

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http://www.theguardian.com/film/2015/oct/11/lea-seydoux-interview-james-bond-spectre-blue-is-the-warmest-colour

http://screenrant.com/spectre-interview-lea-seydoux-bond-girl/

http://www.telegraph.co.uk/news/celebritynews/11910701/Bond-girl-Lea-Seydoux-became-an-actress-so-people-would-take-care-of-her.html

黒岩幹子
「boidマガジン」(http://boid-mag.publishers.fm/)や「東京中日スポーツ」モータースポーツ面の編集に携わりつつ、雑誌「nobody」「映画芸術」などに寄稿させてもらってます。


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