[258]『Haramiste』禁断の果実


 

禁じられているからこそ、のめり込んでいく。

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 『Haramiste』(原題)が製作国フランスで公開された。尺が40分というこの中編作品は、多くの映画館では上映されていないものの多くのメディアに取り沙汰され、その内容の真新しさに注目が集まっている。”Haram“とはアラビア語で禁止事項、罪のあるものを意味し、フランス語で人物を指す”-iste“が付いていることから、禁じられたことを行なう人、すなわち”型破りな姉妹“といった意味合いの造語であると考えられる。主人公はイスラム系フランス人の18歳と17歳の姉妹。一体、この姉妹の何が型破りなのか。

 

 物語は、街で姉妹が男性にナンパされているシーンから始まる。肌をしっかりとヒジャブで隠したいかにも敬虔そうな姉妹、しかしその上に羽織るのはファー付きダウンジャケットだ。イスラム教では婚前交渉は禁止されている。タブーであるにも関わらず、姉妹の会話はかなり際どいセックスの話題で持ちきりだ。姉が出会い系サイトを利用していることを知った妹は猛反発。「スケベとシリアルキラーと小児愛者をからかうのよ!」と言い訳する姉。時に笑い合い、憎しみ合い、突き放し、また寄り沿う。とある姉妹の物語だ。

 ムスリム同胞団、性具の購入、オーラルセックスのテクニック、pécher(罪を犯す)とpêcher(釣る)の区別・・・冒頭から絶え間なく続く姉妹の会話の連続に圧倒される。これらによってイスラム教徒に対する我々が持つイメージとの矛盾やギャップを示すことはあまり重要ではなく、込められたメッセージの難解な言語化の結果であると言える。恋愛に積極的である姉のリムに対し、「人生とは、死後の世界。そこで楽しむの。今じゃない。」と言う保守的な妹、ヤスミナ。この言葉には、信教を全うした最善な者のみが救われるという教えに従った、全知の神への忠誠を誓う意味が込められているが、この誓いは後の夜間の出来事によって崩される。

 この映画では、テキストメッセージ、スカイプ、“チャットルーレット”(無作為に抽出された利用者がビデオチャットを行なうサイト)などの画面を介した擬似恋愛の経過と共に物語が進行していく。最近では、『Unfriended(原題)』(アメリカ、2014)がスカイプを舞台にした新感覚スリラーとして話題になった。そして、サウンドトラックにあえて60年代のポップな楽曲を使用している。その軽快なリズムと、同時に画面に表示される翻訳技術によって“ロマンティックさを欠いた”男女のチャットのやりとりが妙にマッチしている。また、アントワーヌ監督は60年代の楽曲をした理由について、「今日のヴェールを被った女性たちと60年代当時の女性たちは、“性の解放度”の点で共通している。」と述べている。少しすれた姉妹をドキュメンタリータッチで描き、ステレオタイプにしないことで、イスラム教徒の若者が他の十代の若者となんら変わりのないことを主張しているのだ。

 姉妹を演じた彼女たちは移民フェミニスト集団“blédardes”のメンバーであり、素人ながら素晴らしいパフォーマンスで、脚本の執筆にも携わった。元知事であるセゴレーヌ・ロワイヤルの協力もあり、フランス、ポワトゥー · シャラント地方での撮影が実現した本作は、今年6月に開催されたパンタン短編映画際で観客賞を受賞した。女優ジュリー・ガイエを一躍有名にした長編処女作品『A la belle étoile(原題)』を最後に賞レースから遠ざかっていたアントワーヌ・デロジエール監督にとって、久しぶりの快挙となった。

 彼が描きたかったのは、現代的恋愛。これを若い姉妹に豊富な言葉を与えることによって形にしたものであって、アラブ人女性に対する白人男性の好奇の眼差しはそこに一切存在しない。監督はこう続ける。

 “ヒジャブやブルカ着用の権利についても様々な議論が交わされているが、僕はそこに言及する気はないし、二つの文化間で育つことの難しさを扱った映画ではない。タブーを犯すことを推奨しているわけでもなければ、女性とはこうであるべきといった本質主義でもない。インターネットはある一部の“男女の出会いを禁止された”人々、いわゆるこのような矛盾した手段を取らざるを得ない人々にとっては非常に便利なものである、ということ。これが主題なんだ。“

 ここに新たなガールズ・ムービーが誕生した。日本公開に期待したい。

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参考資料

http://next.liberation.fr/cinema/2015/06/30/haramiste-l-essence-de-l-interdit_1340450

http://cinema.arte.tv/fr/article/haramiste-de-antoine-desrosieres

http://www.allocine.fr/film/fichefilm_gen_cfilm=231945.html

http://www.cinematraque.com/2015/07/haramiste-anatomie-dun-rapport-sexuel/

http://www.cotecourt.org/

http://www.leparisien.fr/ivry-sur-seine-94200/ivry-rencontrez-le-realisateur-d-haramiste-au-cinema-le-luxy-16-07-2015-4949585.php

 

 

田中めぐみ

World News担当。在学中は演劇に没頭、その後フランスへ。TOHOシネマズで働くも、客室乗務員に転身。雲の上でも接客中も、頭の中は映画のこと。現在は字幕翻訳家を目指し勉強中。永遠のミューズはイザベル・アジャー二。


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