甘い生活

ローマを拠点に急成長中の映画会社AMBIグループが、この度フェデリコ・フェリーニの甘い生活」を再映像化すると発表した。資金政策、プロデュースにはイタリア人プロデューサーのダニエル・ディ・ロレンゾが加わり、監督、キャストなどその他の人選は現在選考中としている。AMBIグループは今回の企画をリメイクではなく、「再映像化」「オマージュと表現しているが、偉大な映画作家フェリー二の中でも代表作と称されることも多い名作だけに、このニュースは世界のシネフィル達の間で物議を醸している。

正式発表の中でフェデリコの姪にあたるフランチェスカ・フェリーニはこう語る。「私たちは幾度にも渡り、作品のリメイク、再映像化、続編や番外編など、様々は企画を持ちかけられてきました。しかし家族の了承を得るためには特別なプロデューサー、説得力のある製作計画が必要です。その点この企画のプロデューサーであるダニエル、AMBIグループ代表のアンドレアとモニカは現代映画に対する美しいヴィジョンを持っており、彼らの持つイタリア人としてのルーツ、また叔父の作品に対する深い愛情と理解を考えれば、これ以上の人物はいないと考えました。」

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「甘い生活」は1961年4月、アメリカの劇場に上陸した。その前年にイタリアでプレミアを迎えた本作は、公開後すぐにカトリック教会から非難を受け(スペインでは1975まで公開禁止)、1960年のカンヌ国際映画祭ではパルム・ドールを受賞するなど、すでに様々な話題を引き起こし、一つの現象となっていた。アメリカで公開すると大勢の批評家からの賞賛を受け、興行的にも成功を収める。また翌年のアカデミー賞では監督賞、脚本賞を含む四つの賞にノミネート、衣装デザイン賞を受賞している。※1

甘い生活 2

「時代を超越する映画というのは限られているが、『甘い生活』は間違いなくそのうちの一本だと考えます。一人の映画製作者として、これ以上の製作材料、インスピレーションを望むことは出来ないでしょう。私たちの責任は、この素晴らしいオリジナル作品に恥じぬ映画を創り、届けることです。」AMBIグループ代表の一人であるモニカ・バカルディは語る。

共同代表のアンドレア・レエルボリーノも「『甘い生活』を傑作に仕立て上げたすべての要素は、私たちの創る映画にも受け継がれることでしょう。舞台を現代に移し、オリジナル作品同様に商業的かつ象徴的、そして評価に値する作品を創ります。」と熱意を込めて表明している。

しかしこれがハードルの高い試みであることは明らかだ。現代を舞台に退廃的な快楽主義を扱った作品として2014年アカデミー外国語映画賞受賞のパオロ・ソレンティーノ監督「グレート・ビューティー 追憶のローマ」を思い出す人も少なくないだろう。それでも尚、このような主題を世界が求めているということか。

the great beauty

近年映画界ではリメイク、再映像化が流行しており、「マレフィセント」や「スノーホワイト」など、商業的成功を収めた作品も多い。されど映画史においてこの作品が持つ意味を考えれば今回の企画は特異なもので、様々な議論が沸き起こることが予想される。

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カビリア

さてここまで「甘い生活」の再映像化について書いてきたが、どうやらフェリーニの作品を語り直すという動きはそれだけに留まらないようである。「『カビリアの夜』を基にした新たな作品が製作されている」と報じるのはHindustan Times紙だ。タイトルは「The Days of Mary(マリーの日常)」。オリジナル作品では娼婦だったヒロイン(ジュリエッタ・マシーナ)が、今作では若き働く女性となり(ジュリエット・ルイス)、話の舞台もローマからアメリカのネバダ州、リノに移るなど、設定に変更はあるものの、ヒロインがロマンスを探し、夢見て生きる姿は描くところに変わりはない。※2

このようなプロジェクトの存在自体が、フェリーニ懐古の波を思わせ、人々を魅了しつづける彼の作品力を私たちに再認識させるのである。

http://variety.com/…/ambi-group-options-rights-for-la…/

http://www.indiewire.com/…/federico-fellinis-iconic-la…

http://www.foodworldnews.com/…/la-dolce-vita-remake…

http://blogs.indiewire.com/…/5-things-you-may-not-know… ※1

http://www.hindustantimes.com/…/article1-1368760.aspx ※2

 

梶原香乃

World News担当。東京下町生まれ。高校からイギリスに留学、ロンドンのドラマスクールにて芝居を学ぶ。はらわたのある映画女優を目指して日々奮闘中。憧れはマリオン・コティヤールとキャサリン・ハンター、そして高峰秀子さん。国を超えて仕事ができるようになりたいな!なるぞ。

 


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