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 ウェス・アンダーソン映画における文学の影響に注目した記事を紹介しよう。

 ウェス・アンダーソンが描く世界には本がたくさん登場する。ウェスの映画のなかで、完全に一つの作品を原作としている映画はないが、ウェスは「本」そのものを映画に登場させたり、映画のストーリーをある文学を元にしたりという形で、その文学好きを表している。
 ウェスの初めの2作品、『アンソニーのハッピー・モーテル』と『天才マックスの世界』で、すでに文学の影響がちらり垣間見得る。『天才マックスの世界』はJ.D.サリンジャーの有名な『ライ麦畑でつかまえて』にインスパイアされたといわれる。彼が大成した3作目、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ(’01)』は、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』というタイトルの本の中のお話という入れ子構造になっている。この構造は『グランド・ブダペスト・ホテル(’13)』でも見られる。『ムーンライズ・キングダム(’12)』の主人公スージー・ビショップは年がら年中本を読んでいる。また、シュテファン・ツヴァイクなどの作家から影響を受けていることもわかる。

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 このようなウェスの本好きにフォーカスしたビデオエッセイがこのたび公開された。小説や映画についてのブログサイト、The A to Z Reviewにあげられた、ウェス・アンダーソンの映画に登場する「本」をテーマにした粋なビデオエッセイだ。投稿者はThe A to Z Reviewの運営を行うルイス・アゼヴェド。それがこちらの動画である。

ルイス・アゼヴェドによると、このプロジェクトのポイントは主に二つ。まず一つ目。動画前半では本を持った登場人物の手や本を登場人物が本読み上げている姿を映し、ウェス作品のキャラクターたちがいかに本を読んでいるか、ひいてはその映画制作者がいかに本に囲まれた子ども時代を送ってきたのかがよくわかる。二つ目は動画後半にて、ウェスの映画が新しくなるほどナレーションも多くなることを強調している。とくに『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』、『ムーンライズ・キングダム』、『グランド・ブダペスト・ホテル』の映画構造とナレーションに注目。映画が一冊の本のような構造をとっていること、本をそのまま映像化したかのようなナレーションの入れ方を紹介している。

 作品に登場する本のタイトルや、本を映す意味を考えたら、ウェスの世界をさらに楽しめること間違いなしだ。The A to Z Reviewの今後のビデオエッセイも楽しみだ。

http://blogs.indiewire.com/theplaylist/watch-video-essay-pays-tribute-to-the-books-in-wes-andersons-films-20150702
http://www.theatozreview.com/2015/06/25/books-in-the-films-of-wes-anderson/

原山果歩 World News部門担当。横浜国立大学教育人間科学部人間文化課程所属。ウディ・アレンとウィキッドとチーズと緑色。マイブームはガーリー映画。


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