[243]映画業界に多様性を!


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 時は2015年、しかしいまだハリウッド映画の多くは白人男性による、白人男性を描いた物語である。そんな中でも映画業界、そしてそこから生み出される映画そのものに変化の兆しが見られることは幸運と言えるだろう。

サンダンス・インスティチュート(1981年、俳優・映画監督のロバート・レッドフォードによって設立の非営利団体。インディペンデント映画や映画作家を支援、作品を世界に広める活動を行う)のエグゼクティブ・プロデューサーであるケリー・パトナムは、多様な視点、新しい物語を持った映画作家の促進に力を注いできたが、その上で業界の未来に希望の兆しをみている。

「我々は現在、多様な声・視点の必要性に気付きはじめ、その分岐点にいるようだ」「数年前まで、このような論点がこれほど公になることはなかった。問題は業界全体に及ぶもので、すぐに改善されるものではないということを多くの人が理解していなかったのだ」「私達が取り組むべきは、映画産業に関わるそれぞれの部署、そこにある才能と機会を繋ぐパイプラインをつくること、そうすることで多種多様なメッセージに耳を傾けることが出来る」

「多様性ことが重要である」と発信するパトナムが、今回は特に女性映画作家の活躍に特化していくつかのヒントを挙げている。

1コネクションをつくる

女性の映画作家同士、繋がり合うこと。我々のリサーチによると、男性は早い段階から業界内で強固なネットワークを築き上げていることが多く、そこで情報や専門技術の伝承が行われているのに比べ、女性作家はそのようなネットワークを持たないことが多い。 これに対して良い例がある。約1年半前、サンダンス出身の作家を中心にニューヨークで結成された’フィルム・ファタールズ’と呼ばれる女性映画作家のグループだ。その活動は瞬く間に広がり、今やアメリカ全土、更にはメンバーが映画祭サーキットで出会った新たな作家を通じて、トロント、ロンドン、シドニーなど国外にまで広がりを見せ、一つのムーブメントとなっている。

2 サポートを求める  

女性の映画作家に向けたサポートを利用する。例えばサンダンスインスティチュートでは各種のサポートを提供している他、これらのサポートのインターネットデータベースも作成中である。

サンダンス映画祭シニアプログラマーであるキャロライン・リブレスコはこう語る。「ジェンダーに関するハリウッドの統計が残念な結果であることは周知の事実である。ここ10-12年のハリウッド映画トップ100作品の内、たった4.2%が女性監督によるものであった。ではここサンダンスではどうだろうか?この12-13年の間サンダンスに出品したアメリカ人作家のうち、25%が女性であり、私達はその事実を誇りに思う。インディペンデント映画は女性が映画の世界に入る為の扉である。」

「3年前我々はサンダンス・ウーマン・イン・フィルムLAと手を組み、ウーマンズイニシエティブという活動を始めた。目標は25%という数字を50%まで引き揚げることだ。女性作家達にとって、サポートの存在は大きい。サンダンスインスティチュートラボを見ていると、彼女達は男性作家と同じように映画を完成させ、同じ比率でトップ10と言われる映画祭にその作品を送り込んでいるのだ。つまりサポートさえあれば、男性作家と同じように力を発揮できるということである。」※1

3新しいストーリーを

典型的な「女性映画」の枠からはみ出す作品こそが望まれている。例えばアナ・リリ・アミリプールの『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』(A Girl Walks Home Alone at Night)などは素晴らしいヴァンパイア・コメディーである。またメジャーな作品ではキャスリン・ビグローの「ハート・ロッカー」などが思い当たる。これらはあくまで2つの例に過ぎないが、我々は女性達から典型を超えた幅広いストーリーが生み出されることを期待しているのだ。

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4才能を把握する

エージェント、映画会社、制作会社などが協力して本物のパイプラインを作ることだ。そうすることで幅広い才能を把握し、一つの制作チームを作る上で、先入観や暗黙の了解などを排除することができる。あまり経験のない白人男性が良い仕事を与えられるのに対して、女性や人種的マイノリティーがチャンスを与えられることは今現在極めて稀な状態である。

5多様性のある制作チームを

現場責任者、監督、プロデューサー、その他人選に発言権のある全ての人は、スタッフ、脚本チームの中に多様性を求めるべきである。

「しかしこれら多様化を促す力は、制作側ばかりではなく映画ファンの手にも握られているのだ」とパトナムは強調する。語られるべき良き物語、そして幅広い意見や物の見方を求める観客は、そのメッセージを映画館、その他全てのメディア上で行う選択を通して発信すべきである。それらを求める強い声を、伝えるべきなのである。

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4の項目内で例として挙げられていたアナ・リリ・アミリプールの『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』は、9月から日本での公開も決定しており、Indie Tokyoも Power Push #01として紹介している作品です。特集ページもあるので是非チェックしてみてくださいね!

http://indietokyo.com/?page_id=1368

それでは最後に、記事の中に出てきた女性映画作家グループ’フィルム・ファタール’について少し紹介しておきましょう。Film Fatales(フィルム・ファタールズ) ≠Femme Fatale(ファム・ファタール)を名乗るなんて、活動を心から楽しんでいる感じがして素敵です。

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フィルム・ファタールズの創始者であるリア・ミヤホフは、「この団体はとても草の根的で、映画作家による映画作家の為の団体だ」と語る。グループの特徴はそのDIY精神にあり、基本活動は月に一度、メンバーの家で行われるミーティングだ。そこから活動のアイディアが生まれてくる。

 メンバーの制作をお互いに協力し合うだけではなく、脚本家グループではお互いの作品を読み合い、アドバイスをする。誰かが特定の内容について学びたいと言えば、それに詳しいメンバーがワークショップを開催する。このように「実質的かつ実用的なサポートとコミュニティーを、即興的に提供し合う場」だという。

 ジーナ・デイヴィス研究所によるジェンダー学の調査をみると、人口の約半分は女性であるという事実に反し、スクリーンに映し出される物語のうち70パーセントは男性に関する物語である。カメラの後ろにいる女性の数は、カメラの前に立つ女性の数にも明らかな影響があるからである。つまり女性監督だけではなく、女性に関する物語も欠落しているのだ。(更にその中でも2014年にリリースされたトップ100の映画 に出てくる全ての女性登場人物のうち、僅か4%がアジア人である。私達が最後にアジア人女性、いや男性を含め、アジア人をスクリーンで見たのはいつだろう?※2)   

world news ' I believe in Unicorns'

 主催のリア・ミヤホフはフィルム・ファタールズによる活動の影響として「たくさんの人、特に多くの女性が、誰かから映画作りの許可を与えられるのを待っている姿を目撃してきた。しかし彼らは自分で自分に許可を与えたのだ。そのおかげで女性作家から生み出される作品の質が全体的に上がってきたのを感じる。同時に映画祭や劇場において、女性作家による作品を観る機会も増えてきた。私の生きている間には起らないと思っていた変化が、今実際に起っているのだ」と語っている。※3※4

 今回は特にジェンダーに注目した内容になりましたが、性別だけではなく、人種や文化も含め、多様性の中から生まれてくる声を汲み取れる世界になればいいなと願います。

 

http://www.elle.com/…/keri-purnam-hollywood-diversity/

※1 1http://www.sundance.org/initiatives/womens-initiative

※2 http://blogs.indiewire.com/womenandhollywood/ny-asian-film-fest-lineup-emerging-women-directors-focus-on-korean-female-filmmakers-20150619

※3 http://www.indiewire.com/article/attention-female-filmmakers-the-film-fatales-are-here-to-help-you-20150316

※4 http://blogs.indiewire.com/womenandhollywood/working-together-to-make-change-the-film-fatales-panel-at-the-2015-athena-film-festival-20150217

 

 

梶原香乃
World News担当。東京下町生まれ。高校からイギリスに留学、ロンドンのドラマスクールにて芝居を学ぶ。はらわたのある映画女優を目指して日々奮闘中。憧れはマリオン・コティヤールとキャサリン・ハンター、そして高峰秀子さん。国を超えて仕事ができるようになりたいな!なるぞ。


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