「サケボム、サケボム、サケサケボーム!!」
こんな掛け声とともに、アメリカで広まっている日本酒×ビールのカクテル「サケボム」の楽しみ方をご存知でしょうか!?
仕組みは至って単純で、ビールが入ったジョッキに渡した割り箸2本の上に日本酒を注いだおちょこを乗せ、冒頭の掛け声を合図にテーブルを思い切り叩きます。すると、振動で割り箸がはずれ、おちょこが爆弾のようにジョッキに落ちることで、「サケボム」一丁出来上がり!
急速に酔いが回るので注意が必要ですが、パーティーなどで場が盛り上がること間違いなし。アメリカでは日本酒があれば必ずと言っていいほど、見受けられる光景だそうです。(*1)
さて、前置きが長くなりましたが、このカクテルの名前を冠した日米合作のロードムービー「サケボム」(原題:Sake-Bomb)の全国ロードショーがいよいよ今月24日から始まります!
監督は2000年に渡米後、岩井俊二、紀里谷和明両監督らのもとで研鑽を積み、14年目にして本作で長編デビューを果たしたサキノジュンヤさん(33)。「サケボム」は、世界の才能が集う登竜門で、米三大インディーズ映画祭の一つに数えられ、テキサス州で毎年3月に開催されるSXSW(サウス・バイ・サウスウェスト)映画祭で昨年、プレミア上映されたのを皮切りに、ロサンゼルス・アジアン・パシフィック映画祭で最優秀脚本賞、サンディエゴ・アジアン映画祭で最優秀作品賞を受賞するなど快進撃を遂げました。
とはいえ、完成、公開に至るまでの道のりは決して平坦なものではなく、アメリカでは、「総人口の数%にしか満たないアジア系を主役にしても、誰も見向きしないという固定概念が強い」のが現実。(*2)その意味で、突然、別れを告げていなくなった恋人を追いかけ、日本の片田舎の酒蔵から生まれて初めてアメリカへやってきたナオトと、その恋人探しを手伝う羽目になったひねくれ者の日系アメリカ人のいとこ、セバスチャンの凸凹コンビによる珍道中を描いた本作は、同国におけるアジア人の姿を真正面から捉えた意欲作と言えるでしょう。
こうした設定の背景には、在米14年に及ぶサキノ監督の実感がこもっており、「アジア系移民が観ても面白いものを作ること」を意識。また、人種を超え、「アメリカ人を笑わせること」も目標の一つで、その願いは見事、全米各地の上映でかなえられたそうです。(*1)
日系アメリカ人のジェフ・ミズシマさんが脚本家を務め、日本からはプロデューサーの妹尾浩充さんのほか、俳優の濱田岳さんらが参加。決してネイティブではない濱田さんが無事、ほぼ全編英語のセリフを乗り切り、アメリカで洗礼を受けた本作の逆輸入が、日本市場においてもカンフル剤の役割を果たすことが期待されます。
公開を記念して15日、都内でサキノ、紀里谷両監督らによるトークイベントが行われ、サキノ監督は、もともと1億円と見積もっていた予算が、アジア人2人組が主演するといったハードルの高さから、最終的に4分の1以下となるに至った経緯を明かしました。派手なシーンをカットし、会話重視の構成にしても、人件費に響くのを避けられず、「映画学校時代のネットワークがあったからこそ実現できた」と言います。
紀里谷監督も、技術面の難易度が下がり、インディー・フィルムメーカーにとってのチャンスが広がる一方で、日本の映画産業に新しいことにチャレンジするための研究開発(R&D)予算が少ないことを挙げ、「洋画、邦画と言っていること自体がおかしく、括りからの脱却が大事」と指摘。これからのクリエーターに対し、国内市場にとどまらず、「ロマンチシズムではなく、死活問題として外を見ていかないと」と、海外も視野に入れた作品づくりの必要性を強調しました。
トークイベントでは、質問タイムに参加者が突如、持参した「サケボム・セット」をゲストに振る舞い、サキノ監督(写真右)自らサケボムを実演してみせるサプライズも。会場の空気が一気に和み、酒と旅と映画は心をつなぐとの信条を、筆者もいっそう深めました(笑)
イベントは外国映画の魅力を伝える企画の一環で、会場となった西麻布のダイニング・バー「VERANDA」が100日間限定で「CINEMA LOUNGE 100」としてオープン。場内にはハリウッド・スターらのオートグラフが展示され、毎週火曜に映画監督やプロデューサーら多彩な顔ぶれによるトークイベントが行われています。フードやドリンク・メニューも作品とコラボしており、つい目移りしてしまいそうです。写真では、お気に入りスターのコースターを並べてみました。特設ラウンジは、6月5日まで。(*3)
バック淳子
https://www.facebook.com/atsuko.tsuji.311
<筆者プロフィール>
大学卒業後、記者として勤務。国際報道などに携わる。この夏よりロサンゼルスに映画留学予定。
<過去の記事>
[World News #008]~ブリット・マーリングの魅力と魔力に迫る!~
https://www.facebook.com/inside.indietokyo/posts/495023197293649
(*1)
「サケボム」プレスシート
(*2)
「アメリカ映画の暗号を読み解く ~人種のカオス編~」(越智道雄著、アルク)
(*3)
http://cl-100.com/


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