NY TIMES紙が、「ニューヨークで公開される映画をすべて批評することを取りやめる」との新方針を打ち出した。5月21日、Varietyが報じた。

Meet The Oscars Opening

NY TIMES・映画批評チーフのA.O.スコット氏いわく「毎年公開される新作が増加するなか、そのボリュームを考えた結果、これまでの“全作品を批評する”という方針を捨てるに至った」。しかし「できるだけ多くの作品の批評はしていくつもり」、「新方針はケースバイケース、変更する可能性もある」とも述べた。今回の方針は、今年初めには既に社内で議論されてはいたとのことで、この度ついに決定がなされた。

これにより今後大きく影響を受けるだろうと予想されるのが、単館系配給会社・VOD販売会社と、アカデミー賞のドキュメンタリー部門だ。

NY TIMES紙はこれからもメジャー作品、話題作、オスカー関連作品の批評は熱心に続けるだろう。しかし、単館系映画配給会社やVOD会社は、基本的には映画の宣伝文句としてNY TIMES紙の点数に大きく頼っている。すべての作品が批評されないとなると、真っ先に切られるのは小規模作品やDVDスル―作品であり、それらを扱う彼らにとっては大きな痛手となる。

また、米アカデミー賞ドキュメンタリー部門の応募資格には劇場公開されることに加え、「新聞もしくはLA TIMESに批評が掲載されていること」が必須条件とされている。NY TIMES紙の批評をすべての作品が得られないとなると、資格をもたない映画が頻出し、ドキュメンタリー部門へのノミネートは狭き壁となる。「タイムズで批評される映画は依然として“お墨付き”とされる。今回の方針変更は必要なかったはずだ」と、関係者は語る。

NY TIMES紙の今回の決定は、NetflixやAmazonといったストリーミング・サービスの登場と、デジタル制作で年々増え続ける作品数によるものだろう。今後NY TIMES紙の批評は正当性を持てるのか、それとも逆に権威と化すのか、注目しいたいところである。

New York Times Changes Film Review Policy, Can’t Guarantee Coverage(Updated)

http://variety.com/2015/film/news/new-york-times-changes-film-review-policy-cant-guarantee-coverage-1201502465/

Hoe NY Times New Review Policy Could Hurt Docs’ Oscar Chances

http://www.thewrap.com/how-ny-times-new-review-policy-could-hurt-docs-oscar-chances/?utm_source=&utm_medium=&utm_campaign=

New York Times Cuts Movie Reviews in Blow to Independent, Documentary Films

http://www.thewrap.com/new-york-times-cuts-movie-reviews-in-blow-to-independent-documentary-films/

内山ありさ World News部門担当。1991年生まれ、広島出身、早稲田大学卒。学生時代は東京国際映画祭の学生応援団として六本木を奔走。この春より映画配給会社勤務。特技は80年代洋楽イントロクイズ。


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