[226] 最後のフィルムとiphone6、それぞれの新作映画が完成


 

 
 先月、Vimeoにある映像作品がアップされた。 その作品は、2013年に富士フィルムが生産を中止した、映画用フィルムの、最後のひと束を使用して撮影された。(*1)

 “Amends”(“償い”の意)という題名のついた9分弱の作品は、スマートフォンなどのテクノロジーによってコミュニケーションにすれ違いが起こるあるカップルの物語を描いている。

amends

 2014年、富士フィルムが映画用フィルム生産を中止した次の年、この作品の監督・脚本のハンター・ハンプトンは、世界中で第三者によって流通されていた富士フィルムの映画用フィルムを、“ガイ”と呼ばれる人物から10本購入した。

 映画は、ある一組のカップルの関係をインターカットを利用しながら表現した作品で、そこに、婚約前に交わされた、彼らのこの上なく幸せな会話のヴォイスオーバーが重なる。ハンプトンが使用したアトーンXTRのカメラを通して、マリブビーチ、涼しげに照らされたアパートの一室、カフェ、中華料理屋、キッチンなどでの恋人たちの言い争いが映し出される。口論の原因は、旦那の妻への嫉妬で、具体的には彼女のスマートフォンへの嫉妬である(主に妻が夢中になっているのはインスタグラム)。不仲が深刻になるにつれ、彼らは許しと、妥協と、美しさと絆に気がついてゆく。

 内容は特に初めて目にするようなものではないが、フィルムというメディアを使用していることで、その美学的や知的な面では評価に値するであろう。
 
 No Film Schoolによるインタビューでハンプトンはこう語った。
「この物語はテクノロジーの物語であり、それをあえてフィルムで撮影することで、皮肉や風刺になる、と思ったんだ。」

amends (1)

 

 ハンプトンは、富士フィルムのフレームのなかで、優しく自然な環境の光というものをとらえ、フィルムというメディアの特徴を今一度我々に提示してくれている。

 

Amends“ 

Amends. from Hunter Hampton on Vimeo.

 

 

 

 一方、2014年に、全編iphone6で撮影された短編映画が製作された。(*2)
Blizzard Entertainmentに在籍中にTVシリーズ、サウス・パークの“Make Love, Not Warcraft”というエピソードを製作した中心人物のうちの一人として、エミー賞に輝いたこともある、NY 在住の映像作家/写真家トリスタン・ポープ。彼は、“Romance in NYC”という作品をihone6だけで撮影するという革新的な方法で作り上げた。

ダウンロード

以下、彼のこの作品の製作過程に関する発言を簡単にまとめた。

 幼い頃から、家族ムービーを撮るのは僕の役目だった。目立たずに撮影することで、家族のエッセンスをとらえることができていた。それは僕の恋愛関係にも受け継がれ、iphoneで、よく恋愛中の些細な一瞬を捉えていた。やがて、長年に渡る僕らのお互いへの愛を描写した、可愛らしいロマンチックな作品をつくるための充分な素材が集まったんだ。最終的には、この経験が僕のこころに火をつけた。もしかしたら、iphoneは僕の一番の武器なんじゃないかと思い始めたんだ。

 何年も、ボーイフレンドとガールフレンドの間の“毎日の”様子をとらえる作品を作りたいと思っていて、ゴールとしては「これ、覚えてる!」っていう感情を与え、安っぽくなりすぎない程度に「こんなこと出来たらいいな」と思ってもらうことだった。

 映画はPOV視点で撮影されていて、ボーイフレンドとガールフレンドが、観客を、彼らの楽しげなニューヨークでのある1日へと誘う。しかし、そこにはありふれたシチュエーションの中に存在するロマンティックなニュアンスが、美しいニューヨークを背景に描き出されている。

テクノロジーの限界を試すのが大好きなんだ。プロ仕様のカメラを何台も持っているけれど、僕はいつも、このような映画に対しては、大きすぎるし侵略的であるとさえ思っていた。そして、ようやくiphone6にたどり着いたんだ。iphone6のカメラとグラスの質は高いよ。1080pで見ようが4Kで見ようが、物語は物語だ。また、iphoneの持つ視野(FOV)は、現実世界のロマンチックな視線とよく似ている。「ここ、行ったことある!」とか「いいなぁ!」と感じてもらえるような瞬間を作り上げたいんだ。

 光量の低さやスクリーンに映した時の解像度などの限界が、iphoneにはある。でも、撮影を行うにつれて、それらの障害は恋人同士の近い関係を表現するのに適していることに気がついたんだ。Appleが提供するハードウェアや、ISO感度を固定することができるMovie Proといったアプリは大いに役に立った。MovieProは、アプリがクラッシュしても素材が消えないように毎回キャッシュするように設定されているので、映像が無くなったりすることが無く、撮影をスムーズに行うことができた。
 さらに、横移動撮影をする時に使ったGlidecam、固定ショットのときに使用し、ズームイン、ズームアウトをしながらキスシーンを表現するのにも使ったBlackwing、〝ボーイフレンド・アングル〟なる上からのアングルを生み出したGorillaPodなどのツールも駆使して撮影を行った。

ダウンロード (1)

 iphoneで映画を撮影することによって、技術的な面よりも物語そのものへと集中することができるようになったんだ。人の多い地下鉄や服屋やレストランなどのロケーションでの撮影も、誰にも迷惑をかけずに行うことができる。重い機材やレンズ交換などの無い撮影は、とても自由だったよ。(*2)

“Romance in NYC” Trailer

Romance in NYC Trailer 2014 from Tristan Pope on Vimeo.

 勢いが衰えたように見えるフィルム、世界中の人々が一人に一台持っている携帯端末。メディアの姿は違えど、出来上がったものは、映画に変わりない。 どちらも刺激的で、興味深い。これから、既存の枠に囚われない映像作品がどんどん生まれてくるだろう。

(*1) http://www.indiewire.com/article/watch-this-short-film-was-shot-on-the-last-batch-of-fuji-film-20150525
(*2) http://www.indiewire.com/article/this-romantic-short-film-was-shot-entirely-on-an-iphone-6-20150217

松崎舞華 日本大学芸術学部映画学科3年 。猫も好きだけど犬派、肉も好きだけど魚派、海も好きだけど山派。普通自動車免許(AT限定)所持。得意料理: たらこスパゲッティ。趣味: 住宅情報サイト巡り


コメントを残す