“Shit People Say To Women Directors (& Other Women In Film)”

 

略してSPSTWD。

簡単に訳すと、“クソ野郎たちが女性監督に向かって言ったこと”。

この刺激的な名前を掲げたある一つのTumblr ページが、今注目を浴びている。

 

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「誰もお前と一緒に働きたくなんかない」

「生意気だ」

「もっと笑えよ」

「文句を言うな」

 

これらの言葉は、そのTumblrに書かれた数々の言葉のうちの一部である。(*1)

 

このブログは、匿名グループによって運営されており、今年四月の末にひっそりと立ち上げられた。しかし、またたくまに、女性監督やTV・映画業界で働く女性たちが、自分自身の業界での扱われ方についてのフラストレーションや怒りを爆発させることができるインターネット上の場所として、知名度が高まっていった。ページは、TV・映画業界の女性なら誰でも利用することができる。(*2)

 

これを作った人物は、このTumblrは“映画で生活していくための努力をしているなかで長年女性達が経験してきた、最低最悪な事実を洗い流すための集団日記”であり、“私たちにとってどれだけ業界が居心地の悪い場所であるか、笑いあいながら語ることができるある種の隠れ家”のようになればいいと考えています、私たちの望みは、少しでも女性たちにストレス発散してもらうのと同時に、蔓延する問題を明らかにすることです、と述べた。

 

ブログは、予測を越える速さで人気を集めた。 最初は、彼女たちの業界で働く知り合いの女性たちからストーリーを集められればいいと思っていた。しかし、大衆から予想以上に大量の投稿があり、文字通りたった一晩だけで1年分くらいの内容のもの受け取ることになったのだ。

 

彼女たちは、その膨大な投稿の数に圧倒された。作家・脚本家、プロデューサー、美術、撮影監督・カメラマン、製作アシスタントなど、全ての映画製作の分野から、数百人もの女性が投稿している。

 

映画学校の生徒から、この道30年のベテラン監督まで、誰もが自分達のストーリーをどうしても伝えたいと思っているの。彼女たちの多くが、今までこれらの体験を誰にも話したことがなく、肩の荷が降りることによって感じる大きな安心感を得ることがなかった、と創設者たちは語る。

 

 

__なぜSPSTWDをはじめたのですか?

 

長年、女性は映画を撮れないと言われてきたことや、変わることのない雇用状況の悪さ、変化が起こるまでに時間が掛かりすぎていること、馬鹿げた意見の多さ、などが影響したからかもしれません。これといってどれが一番の理由であるということではないのです。私たちに個人的に伝えられたストーリーの蓄積が、私たちにブログの開設を促したと言った方が正しいかもしれせん。

 

__なにを目標にしていますか?

 

性差別は、最も社会的に認められている差別意識のうちの一つであり、映画やテレビ業界に蔓延している悪い習慣なのです。全米監督協会の前会長が、男女平等問題は簡単に解決することのできない制度的な問題であることを認めました。そこには、大きな雇用機会や収入の差だけでない圧倒的な隔たりがあるのです。実際、サイレント映画期には2015年現在より多くの雇用機会が女性に与えられていました。いま、全ての現役映画監督のうち、女性監督が占める割合は、テレビ界に14%、映画界に至ってはたったの8%しかありません。最近になって業界の男女差別の実態を明らかにする研究が幾つか行われたとはいえ、事態は一向に良くなる気配がありません。何かがなされなければなりませんでした。“Shit People Say To Women”は、ある種の危機介入なのです。私たちは、このブログがこの複雑化した問題を解決することはできないと気がつきました。しかし、絶対にしなければならない、ずっと昔に行われるべきであった話し合いを始めるための、スタートポイントにはなるのです。

 

 

__なぜ匿名で運営されているのですか?

 

女性たちは、これらの問題について、意見を言わずじっと沈黙するように脅されてきたようなものなのです。なぜなら、“内部告発者”と見なされ、つま弾きにされたり、過小評価されたり、コネを作ることができなくなったりすることを恐れていたからです。私たちは、監督レキシー・アレキサンダーと脚本家ジュリー・ブッシュが、映画業界の性差別の実態を暴露した、尊敬に値する本を出版した時に、まさにこれらの行為が行われるのを目撃しました。彼女たちの同僚は、やはり同じ恐怖を感じたのか、数人だけしか彼女たちを応援しませんでした。おそらく彼女たちは、彼女たちを“男嫌いのフェミニスト”や、“トラブルメーカー”と非難する人から攻撃をうけたのでしょう。実際のところ、誰も (勇敢な心を持つアレクサンダーやブッシュを除く) 、公然と声を上げることができないのです。報復に対する恐怖は深刻です。ある一人の女性が匿名でTumblrに体験談を投稿したあと、そのブログには彼女の名前が記載されていないにもかかわらず、‘誰かが自分の正体を見破ってしまうのではないかと恐れている’という内容の投稿をしたのです。個人が隠し立てをせずに、性差別の問題について堂々と意見を述べることができるようにするためにも、活動に加わることを選んだ女性達のアイデンティティーの保護は、最も優先されるべき事柄なのです。

 

現在も、Tumblrには沢山の投稿が行われており、その勢いはとどまることを知らない。 インターネットの匿名性や拡散性を利用して、業界の性差別問題を表面化してみせたSPSTWDの活動は、今後も続いていくだろう。

 

*1) http://shitpeoplesaytowomendirectors.tumblr.com/

*2) http://www.indiewire.com/article/shit-people-say-to-women-directors-highlights-sexism-in-the-film-and-tv-industry-20150429

 

 

松崎舞華 日本大学芸術学部映画学科2年 。猫も好きだけど犬派、肉も好きだけど魚派、海も好きだけど山派。普通自動車免許(AT限定)所持。得意料理: たらこスパゲッティ。趣味: 住宅情報サイト巡り


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