クリストファー・ノーランとベネット・ミラーが語るスタジオでの会議について

昨年『インターステラー』が大ヒットするなど、なにかと話題を呼ぶクリストファー・ノーラン監督についてはこれまで何度か取り上げてきました。現在開催中のトリベッカフィルムフェスティヴァルでは、そんなノーラン監督の講演がベネット・ミラー監督(『フォックス・キャッチャー』)の司会により行われたようです。今回は、Indiewire誌にまとめられたものから、その講演についてご紹介しようと思います。

記事によれば、ノーラン監督の初めて映画を見に行った体験は『白雪姫』の再公開でした。監督は、そのときあまりの恐さに映画館で前の座席の下に潜り込んでしまったとのこと。初めて映画を撮ったのが7歳のときで、父の8mmカメラを借りフィギアを動かしながら一コマずつ撮影してストップモーションムービーを作ります。そのあとスター・ウォーズを見てこんな映画を作りたいとも思ったようです。

そうした監督の原点となる話から今度は制作の話、とくにスタジオシステムについての話になって行きました。まずはノーラン監督が、スタジオで雇う側と雇われる側の間には矛盾がある、つまり自由に仕事をして欲しい面とそうでない面がある、という話をしました。それに対して、ベネット・ミラー監督が以下のように続けることになります。

「『マネーボール』の会議で、エイミー・パスカルやスタジオの人たちと、脚本を読み合わせていました。円になって意見を共有したとき、私は彼らの考えをひとつひとつ論理的に否定しました「これは違う、何故なら」と続けて。思うに、それはとても重要なことだったのです。ですが、5分としないうちにエイミーが私を連れ出してこう言ったのです。「一度だけ言います。スタジオの人間は監督に4.5%程度の影響しか与えちゃいけないものだから。でも、こうした会議ではスタッフがそれぞれ自分がスマートでイケてるって気分にさせてあげて。」そのあともスタッフは私を責めましたが、それでも私は理由を述べて意見を切っていきました。みなさんはどう思ったか分かりません、ただし私は彼女のように言ってくれるひとが必要です。」

ノーラン監督もスティーヴン・ソダ―バーグ監督との間で学んだことを語ります「私はスティーヴン・ソダ―バーグ監督から学びました。彼は『インソムニア』でとても親切に制作総指揮をしてくれています。スタジオにはヒエラルキーがあって、みんな自分の仕事を持っています。あなたに助言を与えるひとです。ソダ―バーグ監督は、そのなかで妥協せずに創造的な仕事をする、という生産的な態度を突き詰めました。驚くべき、そして素晴らしい出来事、それは他人の視点を尊重するということです。助言は間違っていることもありますが、彼らは理由があって言っているわけで、それを明確にすることが必要です。ときにはエゴもありますが、しばしば創造的な理由がそこにあるのです。」

重要なことは以下のようなことだと、ノーランは語ります。「スタジオ内で不満が募れば募るほど、嘘でも良いから自信を保たなければならなくなります。不満が不満を呼びます。(…)ですから、たとえどれだけ不満をスタッフが示していても、なんらかの形で彼らを立ち直らせなければなりません。このことがとても重要になるのです。」

今のハリウッドのなかで、良し悪しは別として独自のスタイルを維持している二人の監督の制作には、意見を述べて理由を明確にし吟味していく、こうしたスタジオ内でのやりとりが鍵になっているのかもしれません。

参照記事 http://www.indiewire.com/article/tribeca-bennett-miller-gets-christopher-nolan-to-open-up-about-the-studio-system-and-his-biggest-fears-20150421


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