高校卒業を目前に控えた少女たちの思春期らしい恋愛や葛藤を描いた青春映画 “Booksmart”。オリヴィア・ワイルド監督による本作が、デルタやエミレーツ、エティハドなど複数の航空会社の機内で、オリジナル版から同性間のラブシーンをカットした形で提供されていたことが先日発覚した。[1]

カットされたものの中には、主演のケイトリン・ディーヴァー演じるエイミーとその女子クラスメートのキスシーンが含まれていた。一方、この映画では異性間のキスシーンは一切削除されていないという[2]。

 

問題発覚後に開催されたガヴァナーズ賞授賞式のレッドカーペット上で、ワイルドは次のように語った[3]。

「私には理解できません。映画には航空会社ごとに検閲があり、それを決定する何らかの管理委員会があるのでしょう。私たちは映画を特定の方法でレーティングしています。X指定されたものでなければ、飛行機のなかで間違いなく受け入れられるはずです」

「身体が半分に砕かれるという狂気じみた暴力が許容されているにもかかわらず、二人の女性のラブシーンは映画から削除されました。そのシーンは、キャラクターたちの旅には欠かせないものです。私には理解できません、胸が張り裂けそうです。この件の真相を探求しようと思います。私はみなさんに映画全体を経験してほしいのです」

ワイルド同様、出演者たちもショックを露わにした。

主演のディーヴァーは「馬鹿げていて、言葉も出ないです。おかしくなりそうなニュースです」と嘆いた。同じく主演のビーニー・フェルドスタインは「私たちはこの問題を正すために捜査中です。私たちの映画は、若者のクィアな体験を美しく表現しています。私はクィアな人間です。だから問題の真相を探っているのです」と述べている。

 

この件を受けて、デルタ航空は本作の編集の見直しを決定した。[4]

同社は、削除されたシーンの内容を確認せずに編集版を提供してしまったと説明している。 [5]

スポークスパーソンのエマ・プロティスによると「大抵の場合、配給会社は劇場で公開されたオリジナル版と編集版の二つを我々に提供してきます。我々は編集版を選びましたが、ようやく現在、我々のガイドラインでは認められている内容が不必要に消されていることに気がつきました。今後、このようなことを二度と起こさぬよう努めてまいります」とのこと。

さらに彼女は「現在、我々は『ジェントルマン・ジャック』『四角い恋愛関係』『ムーンライト』といった作品を機内で放映しています。また、過去の多くの作品から、我々はLGBTQ +のラブ・シーンを決して排除しているわけではないということが分かるでしょう」と述べており、このような問題が生じたことは不本意だったと説明している。

 

◼︎参考記事

[1]

https://www.indiewire.com/2019/10/olivia-wilde-booksmart-airline-edited-lesbian-sex-scene-1202185502/

[2]

https://front-row.jp/_ct/17314907 (日本語)

[3]

https://variety.com/2019/film/news/booksmart-airline-censorship-olivia-wilde-kaitlyn-dever-beanie-feldstein-1203385951/

[4]

https://www.buzzfeednews.com/article/adambvary/delta-booksmart-rocketman-same-sex-love-scenes

[5]

https://variety.com/2019/film/news/delta-same-sex-love-scenes-booksmart-rocketman-1203390882/


伊藤紗瑛
東京出身。現在都内の大学院修士課程でフェミニズムの研究をしています。映画と読書と音楽と散歩と犬が好き。


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