イタリア映画祭2019で上映された『帰ってきたムッソリーニ』が2019年9月20日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町にて公開。それに先駆け、イタリアの映画監督ルカ・ミニエーロにインタビューを行った。

あらすじ
イタリアの独裁者ムッソリーニが、亡くなった1945年から70余年後、現代によみがえった。スキンヘッドに軍服、ファシスト党の統帥と呼ばれる男。誰もが知るその姿に、最初、人々はそっくりな芸人と思いムッソリーニを見て笑っていた。しかし次第にカリスマ性のある演説に魅了され、その人は絶大な人気を得ていく。ムッソリーニが現代で企てる野望とは――?(公式サイトより)

―ムッソリーニはイタリアで好感を抱いている人も多いわけですが、彼を批判的に描くことに恐れはありませんでしたか?
イタリアの場合はマンションの下の押しボタンのところに名前を書いたりするのですが、自分の名前を消して番号だけにしました。一応そういうことはしましたけれど、脅迫は受けませんでした。というのも、私自身、いわゆる社会派と言われるような監督ではないですし、今回ここでファシズムに対する自分の意見を述べるために映画を制作したのではありません。政治的な意味でのファシズムに関する議論にも意識的に参加しませんでした。また、批判がなかった理由として、この映画でも描いたのですが、イタリア人の政治への生ぬるさもあると考えています。「もう年金がなくなるよ」と言われたら、2週間ぐらい騒ぐかもしれないですが、その程度で、されるがままになっている無気力なイタリア人なので、そんな脅迫さえもなかったですね。

―今作で、なぜ政治的な問題を扱ったのでしょうか?
そうですね、まずファシズムについて考えてもらうということではなくて、今現在起きているポピュリズムであるとか、人種問題であるとか、そういったものを考えてもらいたいと思いました。それから、ファシズムの時代からまだ70年しかたっていないのに、多くの人がその歴史的な事実を忘れてしまっています。歴史を忘れると悪いことが繰り返されるという人もいますから、そういったところも含めて考えてもらいたいです。

―もしこの映画のように、現在のイタリアにムッソリーニのような強いメッセージ性を備えた人が現れたとしたら、イタリアの国民はそこに引き寄せられてしまうでしょうか?
最初に映画が公開されたときにちょうど選挙の前だったのですが、ムッソリーニが今生きていたら選挙で勝つだろうねと話していて、それが映画のタイトルになりました。それからしばらくたって考えてみると、今の世界で本当の権力者は、マスメディアではないかなと思います。1回そういう人が現れて祭り上げられてもすぐにまた落とされるというので、マスメディア次第でどんな人がリーダーになるかわからないですよね。

―映画にはソーシャルメディアも登場しますが、監督はメディアに対してどのような意見をお持ちですか?
ソーシャルメディアの利用者には、少し問題を感じています。映画に登場する女性を見た目が気に入って撮ったのですが、彼女が後になって「『帰ってきたムッソリーニ』を見た人が、私が出ていたと言うのよ」と言っていました。彼女は、ソーシャルメディアは頻繁に使っていますが、自分が出演する映画は観ていないのです。

―日本で9月に公開されるに当たって、伝えたいことはありますか?
やっぱり自分にとってすごく遠い国で上映されるということは、興味深いですね。今、日本に魅惑されています。どうして日本に惹かれるかというと、いわゆる西洋化された社会ですが、伝統をそのまま引き継ぐのではなく、伝統を革新しながら、それを自分たちの中で育てているところがすごく面白いと思うのです。実はあまり旅行をするのは好きではないですが、日本はすごくエキゾチックで、楽しんでいます。

公式サイト
http://www.finefilms.co.jp/imback/

『帰ってきたムッソリーニ』
9月20日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町にて公開
監督:ルカ・ミニエーロ 出演:マッシモ・ポポリツィオ、フランク・マ
ターノ、ステファニア・ロッカ
2018/イタリア/カラー/イタリア語/96分 原題SONO TORNATO 英題I’m Back
後援イタリア大使館、イタリア文化会館 映倫 G 配給ファインフィルム
ズ www.finefilms.co.jp/imback
(c) 2017 INDIANA PRODUCTION S.P.A., 3 MARYS ENTERTAINMENT S.R.L.

兒玉奈々
World News担当。映画に出てくる女優さん、ダンスシーン、音楽が大好きです。


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