ドラマーが聴覚障害に見舞われる『Sound of Metal』が9月6日に、トロント国際映画祭で披露された(日本公開未定)。監督は『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』の脚本や、第二次世界大戦に関するドキュメンタリー映画『Loot』の監督を務めたダリウス・マーダー。本作は監督初の長編劇映画になる。主演は『ナイトクローラー』でジェイク・ギレンホール演ずる主人公の助手役を演じたリズ・アーメッド。俳優の他にはラッパーとして活動している。(1)

 物語は、アーメッド演じる主人公の耳が聞こえなくなったことによる人生の様々な変化を描く。監督は本作の着想を、耳の聞こえない友人と仕事をした経験と、そこで出会ったJuciferというスラッジ・メタルバンドから得たという。Juciferは夫婦の二人組プロジェクトだが、『Sound of Metal』においても、主人公と恋人がラウドな音楽を演奏するデュオとして活動している。尚、タイトルこそ『Sound of Metal』だが、主人公の音楽は正確にはメタルではないという。(2)(3)

 音が題材になっているからか、音響面には力が入っているようだ。ある者は音を篭らせたり、消したりすることで、主人公の感覚に観客を引きずり込む効果を生んでいると指摘する。インタビューで音響について問われた監督は、撮影前に音響担当と撮影監督の三者で入念に話し合いをしたと回答している。また、映画はクローズキャプションを利用して、耳の聞こえる観客と聞こえない観客の双方に対応できるものにしているそうだ。(2)(4)

 主演のアーメッドは、本作の制作について「四週間で撮影を行い、各シーンにつき2テイクしか撮らなかった。だから全員が全ての瞬間に全力を投じることができた。」と語る。また本作については、「これはラブストーリーであり、音楽映画であり、人々がどのようにコミュニケーションを行うかについての映画でもある。」と述べている。(1)

 

(1)https://variety.com/2019/film/news/marders-riz-ahmed-starring-sound-of-metal-explores-deaf-identity-1203319640/

(2)https://www.imdb.com/title/tt5363618/videoplayer/vi2258943769

(3)https://www.hollywoodreporter.com/review/sound-metal-1238063

(4)https://www.slashfilm.com/sound-of-metal-review/

 

貳方勝太 (にのかたしょうた)迷える社会人。大学在学時は映画の制作に耽るなどして徒らに過ごし、現在は重度のヘヴィ・メタル好きが高じて作曲に手を出す。好きな監督はハル・ハートリーやマルコ・ベロッキオなどなど。文化に触れる時間を確保するのが日々の課題。


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