スティーブン・ソダーバーグ監督の最新作「ザ・ランドロマット-パナマ文書流出-」は2016年に流失した「パナマ文書」いわゆる富裕層の税金逃れを率いた実態のない法律事務所モサック・フォンセカ社について取り上げたコメディ映画。数週間前にヴェネチア国際映画祭でプレミア上映され、多くの反響を呼んでいる。

本作でメリル・ストリープはテキサス出身の架空の未亡人を演じており、亡くなった夫の銀行口座を調べるうちに、ゲイリー・オールドマン演じるモサックとアントニオ・ヴァンデラス演じるフォンセカの2人の悪事を曝していく。

-映画のような話だが、これは実話だ

キューブリック作品のストレンジラブ博士を引用するが、本作の作風はそこから着想を得ているようで、監督のスティーブン・ソダーバーグは以下のように言った「ダークコメディは視聴者たちの関心に残るだろう多くの機会があるだろうし、私たちにこういった類の、ほとんどジョークのような複雑な経済活動を[モチーフに]使う機会を与えてくれる、ほとんどオチのための設定ですよ」公開された予告編では、世界各地の富豪たちが頭を抱える様子がテンポよく映されている。

300人を超える国際調査報道ジャーナリストらにより違法な租税地が明らかになったことをストリープが強調したことが日曜日にヴェネチア国際映画祭で行われたプレミア試写会では話題になった。「この映画はおもしろく、テンポよく、暗いユーモアを愉快に、全員の演技によって、作りあげています。多くの被害者は一言を発したジャーナリストたちです」

2017年にマルタ人の調査報道ジャーナリスト、ダフネ・カルアナ・ガリツィア氏が自宅の外で車爆弾により殺害されたことについてストリープは例を示しました。「人が次々に殺されているなかでもジャーナリストたちは言葉を発し続けています。この映画はおもしろく、愉快ですが、そう意味でとてもとてもとても重要です」

同氏はマルタ北部の自宅から、外出のため自家用車で走り出した直後、運転席の下に仕掛けられていた爆弾が爆発した。HuffPostによると、カルアナ・ガリツィア氏は47件の名誉毀損訴訟を抱えていたようだ。殺害の10日前、欧州評議会がカルアナ・ガリツィア氏に行った聞き取りによると、カルアナ・ガリツィア氏への攻撃は訴訟にとどまらず、自宅への放火、銀行口座の凍結、メディアやネットを通じた誹謗中傷など、様々な形で行われてきた、という。

-追求は止まらない

本作の原案になった”The Laundromat”著者のジェイク・バーンスタイン氏は、タックスヘイブンに関するよくある誤解について以下のように語った「すごしやすくて暖かい、ヤシの木が生えているような場所でなく、巨額の脱税が行われている国のひとつはアメリカです」バーンスタイン氏は批判する、デラウェア州では、毎年匿名の石油会社が1億ドルの売り上げを上げている、恐らく他国の陽の当たらない(追求を逃れている)企業に対して基金が行われているだろう。私たちの代理人としての政府により良い仕事をさせるため、人々に気づきを与えて要求を促すことが求められています

世界の主要な政治家が「パナマ文書」に名が挙がっていたことは話題となった、例えばアイスランドとパキスタンの総理は一族の資産を海外の租税地に隠した疑いがかけられ、辞任に追い込まれることとなった。パナマ共和国の不正を追求し続けたカルアナ・ガリツィア氏はあと一歩というところで殺害されました、しかしジャーナリストたちの連盟は声明を発表し、彼女の成果を引き継いでいます。

自身のキャラクターの動機について問われ、ストリープは言いました。「深い悲しみは偉大なる動機です。子供をパークランド高校の銃乱射で奪われた親たち、コネチカットのニュータウンで子供を射殺された親たちは止まらないでしょう。世界を変えようと止まらないのです。もしそれが個人的なことなら、あなたは止まらないでしょう、私たちはそういった頼りにできる人々を必要としています、私たち全員を救うために」

日本では大手の企業がパナマを租税地として合法的に利用していたことが発覚した、国税庁から監査を受けた企業がいまだにないこと(もしくは監査が明らかにされていないこと)は日本のジャーナリズムの弱さを語っている。企業数と金額の多さからすれば数億円単位の脱税があっても驚くことはない。ちなみに日本の政治家は支持団体に対する献金、という名の合法的な脱税行為が認められている。同じ家系の2世、3世議員が選出されるのにはそうした背景がある。

-Netflixが良作を輩出し続けている

ゲイリー・オールドマンは映画の配信形態について期待を抱いている。販売会社の配信大手Netflixは世界に影響を与える機会を生むだろう。「これだけ大変な出来事があって、できるだけたくさんの人に気づいてほしい。アートは変化をもたらすかって?もちろんさ、もし見てもらえればね。この映画はたくさんの人に届くよ」

HBO製作「Big Little Lies」シーズン2で成功を収めたばかりのストリープは、TVよりも映画を好む内心を繰り返した。「大きな画面で見てもらえたらいいですけど。しかし今の子供たちは気にしてないからね」

本作の公開日はアメリカでは今月27日、世界では1018日が予定されている。

The Guardian

https://www.theguardian.com/film/2019/sep/01/meryl-streep-on-the-panama-papers-people-died-to-get-the-word-out?CMP=Share_iOSApp_Other

ABC

https://www.abc.net.au/news/2019-09-05/san-francisco-declares-nra-a-terrorist-organisation/11483440

HuffPost

https://www.huffingtonpost.jp/kazuhiro-taira/panama-papers-journalist_a_23415732/


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