先日、トロント国際映画祭でのワールドプレミア上映に先立ち、マーク・カズンズのドキュメンタリー映画 Women Make Film: A New Road Movie Through Cinemaの トレイラーが公開された。

この映画は、女性監督の視点から映画史を語ることを試みており、アニエス・ヴァルダやビンカ・ゼリァズコヴァ、田中絹代などの183人の女性作家による700点以上の作品を引用している。全編で14時間にわたる大作であるため、映画祭では5つのパートに分けて上映されるとのことだ。

以下、  カズンズ監督へのインタビュー記事から、 Women Make Filmの内容と目的がよく伺える箇所をいくつか抜粋して紹介したい。

ナレーター「ほとんどの映画は男性によって作られている。古典映画と呼ばれる作品の多くは男性によって作られている。130年間、世界中で何千人もの女性たちもまた映画を作ってきた —- 最高の作品だってある。彼女たちはどんな映画を撮ったのか?どんな技術を使ったのだろうか?私たちは彼女たちから映画について何を学べるのだろうか?」

Women Make Filmを撮ったきっかけ

「少年時代、私はハリウッド映画やメインストリームの映画——『スターウォーズ』や『ジョーズ』、『グリース』などに夢中でした。しかし、20代になって聞いたこともないような素晴らしい映画や監督を知り始めました。これがきっかけとなり、私はアフリカ映画に向かったり、 The Story of Film(※2011年に制作された映画史に関する15時間超のドキュメンタリー作品)を作ったりしました。そして、それ以来、私は世界中どこに行っても同じ質問をしてきたのです。 “あなたにとっての偉大な女性映画制作者は誰?”と」

「その答えは明らかになってきました。アルバニアでは、Xhanfize Kekoの映画を観ました。ブルガリアでは、ビンカ・セリァズコヴァのことを聞きました。しかし同時に、(…)女性監督の名が挙げられていないポーランド映画史や、素晴らしい監督である田中絹代の名がない日本映画史などを知ったのです。そのため、これらの女性映画製作者を発見することの喜びは、公平な競争の場がないことへの怒りと、彼女たちが忘れ去られていることへの不公平さとないまぜになりました。称賛と怒りが、ロケットの燃料となったのです」

「プロデューサーのジョン・アーチャーとクララ・グリンに相談し、私たちはこれまで隠されてきた素晴らしい映画に関する自由な作品を作ることに決めました。私たちは委託されていたわけではないし、財政的な支援者もいませんでした。何年もの間、私たちはシステムの外で働いたのです」

■映画で採用したアプローチ

「最初から私は、この映画は作品や映画や映画のシーンに関するものであって、理論的なものではなく、フィメール・ゲイズやメール・ゲイズについてのものでもなく、監督の人生についてのものでもないということを分かっていました。これらはすべて有効なアプローチですが、私たちはもっとシンプルなことをしたかったのです。私たちは、#MeTooの時代に “これは私たちが負っている偉大な女性監督の作品だ”と言いたかったのです」

「私は、40のテーマと40の章を考え出しました。どのように映画を作るのか、どのようにトーンを設定するのか、どのように登場人物を紹介するのか、どのように素晴らしいトラッキングショットを撮るのかなどといったものです。後ろの章では、仕事、親としての地位、家庭、政治、セックス、SF、コメディー、死、愛、ダンスなどを取り上げました」

「映画を観ながら、私たちはこれらのテーマを説明する優れたシーンを探しました。女性監督たちがどのように革新を起こしたのか、映画という媒体を上手く使ったのか、あるいは上手く物語を語ったのかを示そうとしました。正直なところ、私たちは作品の質の高さに観客を驚かせ、 “なぜ彼女の名前を知らないのだろう?”と自問させたかったのです」

ナレーションは、女優のティルダ・スウィントン、ジェーン・フォンダ、デブラ・ウィンガー、シャルミラ・タゴール、アジョア・アンドー、ケリー・フォックス、タンディ・ニュートンが担当

■より多くの女性の映画制作者が業界に参加するために

「完全な意識改革が必要です。この変化は始まりました。本質的には、映画に男性というものは存在しないのですが、(…)金を稼ぐ男性たちが映画を男性中心的な領域にしたのです。コンテンツを選んだり、ディレクターを雇う女性がもっと必要でしょう(しかし、映画会社において有力な地位に立つ女性は、他の女性を雇っているわけではありません)。排除に挑み、映画という芸術や娯楽のあり方を変えなければなりません」

■この映画で達成したいこと

「ある意味、これは一種の激励です。当初のタイトルは、 “Women Making Films”でした。しかし、(ナレーターである)ティルダ・スウィントンが “Women Make Film”に変えました、まるで最初の単語の後ろにカンマがあり、3番目の単語の後ろに感嘆符があるかのように(Women, Make Film! — 女性たちよ、映画を作ろう!)。私たちは、この映画が勧誘キャンペーンであるかのように、この呼びかけが気に入りました。また、これは偉大なる映画の祝典です(…)私たちは、暗闇の中の人々、あらゆるジェンダーの人々を楽しませ、喜ばせたいのです」

 

 

以下の記事に掲載されたインタビューを参考・翻訳した

https://www.screendaily.com/features/venice-qanda-mark-cousins-on-female-directors-doc-we-want-it-to-be-an-eye-opener/5132176.article

https://variety.com/2018/film/news/filmmaker-mark-cousins-explores-unsung-women-of-film-in-new-doc-1202934321/

その他参考サイト

https://variety.com/2019/film/news/women-make-film-epic-documentary-mark-cousins-trailer-toronto-1203316520/

https://www.indiewire.com/2019/08/mark-cousins-women-make-film-documentary-narrators-1202165942/ 

https://www.indiewire.com/2019/08/tiff-documentaries-2019-women-make-film-1202164317/

 

伊藤紗瑛 東京出身。現在都内の大学院修士課程でフェミニズムの研究をしています。映画と読書と音楽と散歩と犬が好き。


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