[202]独仏映画助成金のリアルな金額


[World News #202]独仏映画助成金のリアルな金額

3月27日にパリで行われたドイツ‐フランス連合基金委員会の今年度初会議で、計12,000,000ユーロ(約1億5千万円)が助成された。

まずは、所謂ベルリン派の作家であるクリストフ・ホッフホイズラー監督がフランスで撮影予定の『あなたの微笑みを見た』(原題”Je t’ai vu sourire“)に325,000ユーロ(約4,100万円)が支払われる。
『ピアニスト』で知られるイザベル・ユペールを主演に迎え、1941年に占領下のフランスでドイツ兵の為に写真技術を向上させた写真店の女性オーナーのドラマを描く。ドイツ人刑事がフランスで起きた連続少女殺人事件を解決するために、写真を必要としたことから事件に巻き込まれることになった女性の話だ。
『サン・ローラン』などで知られるベルトラン・ボネロ監督の『パリはお祭り』にも同額が支給される。この映画は、パリを駆け巡るメトロや道路が構成する迷路を少年たちが冒険するさまを描く。この作品に関しては、もうすぐ広告ビジュアルが街々を震撼させる予定だ。

ブリュノ・デュモン監督の”Ma Loute”には275,000ユーロ(約3,300万円)が与えられる。ジュリエット・ビノシュとファブリス・ルチーニという二人のフランス映画界のスターが演じるコメディー。20世紀初頭という動乱時代を舞台に、北フランスの海水浴場の住民たちのとるに足らない事件と若者の悲恋のエピソードを交互に映し出す。
歴史映画である『若かりしカール・マルクス』にも同額が配給される。アウグスト・ディールとアレクサンダー・フェーリングがカール・マルクスとフリードリッヒ・エンゲルスの青年時代を演じる。

詳細は以下の通りである。
『あなたの微笑みを見た』(原題:”Je t’ai vu sourire”)
監督: クリストフ・ホッフホイズラー
ドイツ側プロデューサー: Heimatfilm GmbH Co.(35%)
ドイツ基金: 150.000 ユーロ(約1800万円)
フランス側プロデューサー: MACT Productions SA, Paris (65%)
フランス基金: 175.000 ユーロ(約2200万円)
『パリはお祭り』(原題:”Paris ist ein Fest”)
監督:ベルトラン・ボネロ
ドイツ側プロデューサー: Pandora Filmproduktion GmbH ( 20%)
ドイツ基金: 150.000ユーロ(約1800万円)
フランス側プロデューサー: Rectangle Production, Paris und New Picture, Paris (80%)
フランス基金: 175.000ユーロ(約2200万円)
“Ma Loute”
監督:ブリュノ・デュモン
ドイツ側プロデューサー: Twenty Twenty Vision Filmproduktion GmbH, Berlin ( 20%)
ドイツ基金: 100.000ユーロ(約1250万円)
フランス側プロデューサー: 3B Productions, Paris (80%)
フランス側基金: 175.000ユーロ(約2200万円)
『若かりしカール・マルクス』(原題:”Der junge Karl Marx“)
監督: ラウール・ペック
ドイツ側プロデューサー: Rohfilm GmbH (26%)
ドイツ基金: 100.000ユーロ(約1250万円)
フランス側プロデューサー: Agat Films & Cie (49%)
フランス基金: 175.000ユーロ(約2200万円)
ベルギー側プロデューサー: Artémis Productions, Brüssel (25%)
比較してみて、ドイツ側の出資は監督がドイツ人だったり、ドイツの歴史をテーマにした映画であったとしても極めて少ない。両国間の映画に対する姿勢がここからも見て取れる。ちなみに、フランスはどの映画にも一律同額を出している。
次回のドイツ‐フランス協定の基金の提出期限は2015年6月1日で、基金の集会は7月6日にベルリンで行われる。(*1)
余談だが、オーストリア人コメディアンであるジョセフ・ハーダーによるこんな冗談がある。
「俺たちはオーストリアではスターだけど、ドイツではアートハウス映画俳優扱いだ。でも、映画市場が中くらいの国より小さい国で映画製作をする方がいい。小さい国では基本的に予算がないので、クソみたいなスポンサーに気を遣わなくていいからだ。お金がないと人は工夫をするし、そのなかで芸術は発展する。ドイツでは映画がたくさん作られている時期があったが、今は見る影もない。ドイツのクソみたいな映画は商業主義の産物だけど、俺たちの国のクソみたいな映画は単純に、俺たちに能がないってことなのさ。」(*2)
では、映画大国フランスではどうなるのだろうか?

映画を作るのにはもちろんお金が必要だ。
これらの映画が日本で公開されることがあれば、上記の内訳をぜひ頭の片隅においてみてほしい。誰が誰にどのくらい気を使っているのか?という点に注目して映画を観るのも面白いかもしれない。

(※ ユーロ、円の換算は4月14日現在のもの。1ユーロ126円として計算しました。)

*1.http://www.filmportal.de/nachrichten/deutsch-franzoesische-foerderkommission-vergibt-insgesamt-12-millionen-euro?hc_location=ufi
*2. http://www.spiegel.de/kultur/kino/das-ewige-leben-waldstaetten-und-hader-im-interview-a-1024695.html

藤原理子
World News 部門担当。上智大学外国語学部ドイツ語学科4年、研究分野はクリストフ・シュリンゲンズィーフのインスタレーションなどドイツのメディア・アート。上智大学ヨーロッパ研究所「映像ゼミナール2014」企画運営。ファスビンダーの『マルタ』のような結婚生活をおくることを日々夢見ております。


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