先日、8月29日から開幕する第76回ヴェネツィア国際映画祭のラインナップが発表された[1]。日本でも、是枝裕和監督の『真実』がオープニング作品として上映されることや、塚本晋也監督が審査員を務めることが多くのメディアで報じられている。そんな中、コンペティション部門に選出された女性監督による作品が少ないことが話題になっている。

今回、コンペティション部門に選ばれた21作品のうち女性監督によるものは、サウジアラビア出身のハイファ・アル=マンスール監督の “The Perfect Candidate” とオーストラリア出身のシャノン・マーフィー監督の“Babyteeth” の2作品のみである(ちなみに昨年は1作品だった)。

Shannon Murphy “Babyteeth”

映画祭のアートディレクターであるアルベルト・バルベーラは、このような問題が提起されることを明確に認識していたようである[2]。彼は、女性による作品の提出数自体が少ないことを指摘しており、また作品の選定は性別ではなくあくまで作品の質に基づくべきだと主張している。「今年はヴェネチア・クラシック部門を除く全ての部門で、女性監督は24%を占めている。昨年は20%だった。今年は1860作の作品が提出されたが、そのうち女性監督によるものは24%未満だった……、単に(女性の)割合を増やすためだけに、女性監督の映画を取り上げるということを私は絶対にするつもりはない」[3]

Haifaa Al Mansour

また、バルベーラは、パブロ・ラライン監督の“Ema”や、航空写真家であり環境保護活動家でもあるヤン・アルテュス=ベルトラン監督のドキュメンタリー “Woman”等といった、男性監督による「女性」をテーマにした出品作品について言及している。彼は「(これらの映画における)女性の姿は、男性によって描かれたものだとしても、過去には珍しかったような、女性的な世界に対する新たな感覚を表している。これは、おそらく(男女平等運動における)近年の論争が、我々の感性と文化に影響を与えてきたことを示しているのだろう」と述べている[2]。

さらに、彼は女性監督による作品が短編映画部門では50%、VR映画部門では68%の割合を占めていると説明し、「新しい世代では何かが変化してきていることを表している」[3]と指摘している。

参考記事

[1] https://www.indiewire.com/2019/07/venice-film-festival-2019-lineup-1202160673/

[2] http://)https://variety.com/2019/film/news/venice-film-festival-competition-gender-disparity-alberto-barbera-1203279271/

[3] https://variety.com/2019/film/news/venice-film-festival-alberto-barbera-gender-parity-netflix-roman-polanski-hollywood-1203279528/

その他

https://www.hollywoodreporter.com/news/venice-film-festival-just-2-female-directors-competition-lineup-1226339

https://www.thewrap.com/venice-film-festival-lineup-backlash-2-female-directors-roman-polanski/

伊藤紗瑛
東京出身。現在都内の大学院修士課程でフェミニズムの研究をしています。映画と読書と音楽と散歩と犬が好き。


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