Netflixは、今夏に控えるシーズン3の公開を前に、オリジナル人気シリーズ『13の理由』シーズン1の一部のシーンを削除することを決定した。同名のヤングアダルト小説を映像化したこの作品では、高校生のハンナ・ベイカーの自殺と、彼女の死が同級生に与える影響を描いているが、自殺防止を目的とする慈善団体The Samaritansや、精神医学の専門家から、「自殺をセンセーショナルに描いている」と批判を受けていた。若年層の自殺防止に取り組む団体Papyrusの代表であるGed Flynn氏は語る。「(このシリーズを視聴する若者やその両親たちは)この番組を見ることは、自殺がロマンチックかつセンセーショナルに描かれていることの危険性に気づくべきだ」。[1][2]

 このような批判を受け、本作のライターであり、自身の自殺未遂についても公表しているNic Sheff氏は、Vanity Fairのブログの中でこのように書いていた。「私にとって、これは自殺というものが実際どういうものなのかを見せる完璧な機会だと思えた──静かな永遠の眠りにつくものという神話を打ち消し、燃え盛るビルからもっと恐ろしいものの中に飛び込んでいく時に、何が起こるという現実を視聴者に見せる機会だと」。Sheff氏はさらに言う。「死というものを見せないということの方が、圧倒的に無責任に感じられた」。[2]

 今年初めに発表されたThe Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatryによるレポートによると、シーズン1開始後一か月間の10代の自殺者は28.9%増えた。レポートでは、ドラマとの明確な因果関係はないとしながらも、共著者はメディアに向け、傷つきやすい人たちに対する影響を踏まえ、「前向きで配慮のある」態度を求めた。[1]

 Netflixは、今回のシーンの削除に関する声明の中で「多くの若者たちから、このドラマのおかげで、抑うつ状態や自殺や助けを求めることについて、初めて話をすることができるようになった、という声を聞いた」とし、危険を感じたら、Netflixが用意したサイトを訪れて欲しい、としている。[3]

 既存の映像メディアに比べ、躍進著しい動画配信だが、配信にあたってのガイドラインやルール作りにおいては、まだ対応が後手に回っている部分も多い。その分、自由な表現が担保されているともいえるが、今後、さらに多くの配信事業者の参入が予想される中、影響力を持ったメディアとして、どう発展していくのか、今後に注目したい。

[1]

https://amp.theguardian.com/tv-and-radio/2019/jul/16/netflix-cuts-controversial-suicide-scene-from-13-reasons-why?CMP=twt_gu&utm_medium=&utm_source=Twitter&__twitter_impression=true

[2]

https://www.theguardian.com/media/2017/apr/21/netflix-13-reasons-why-condemned-for-romanticising-suicide

[3]

The Samaritans公式サイト:https://www.samaritans.org/

Photo by Dawid Labno on Unsplash

佐藤更紗

国際基督教大学卒。映像業界を経て、現在はIT業界勤務。目下の目標は、「映画を観に外へ出る」。


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