今年のアカデミー賞でレジーナ・キングが助演女優賞を受賞した、バリー・ジェンキンス監督作『ビール・ストリートの恋人たち』、同じくアカデミー賞で脚色賞を受賞した、スパイク・リー監督作『ブラック・クランズマン』。圧倒的に白人監督による白人俳優の映画が受賞することが多かったアカデミー賞、つまりハリウッドも、だいぶ変わってきているように思われる。しかし、Varietyが独占的に報じた、被爆者である佐々木禎子を描いた『サダコと千羽鶴』の著者であるエレノア・コアを主人公とした映画が製作される、というニュースに対し[1]、白人中心的ではないかという批判が寄せられている。

 『プライベート・ライアン』のプロデューサーでもあるイアン・ブライスがプロデューサーを務め、エヴァン・レイチェル・ウッドがエレノア・コアを演じ、寺島しのぶが出演することも発表されているこの作品。[1] しかし、このニュースに対し、アジア系アメリカ人を中心とし、多くの批判が寄せられた。「多くの日本人の犠牲者が出ているのに、生存者にインタビューした白人女性を主人公にしている」「語られるべき物語は幾千とある。アメリカの白人のフィルターを通したものではなく」。[2]

 批判を受け、監督のリチャード・レイモンドはHuffPostに対し、「全てのフィードバックに目を通し、懸念は理解している」とし、作品はタカユキ・イシイによる『One Thousand Paper Cranes: The Story of Sadako and the Children’s Peace Statue』をベースとしており、「サダコの視点から描かれ、日本人キャスト、日本で撮影される」と語った。このレイモンドの声明に先立ち、社会学者のNancy Wang Yuenは語っている。「こういったタイプの物語は、基本的に犠牲者を上に置くものではなく、『ヘルプ~心がつなぐストーリー~』のように、主人公が記録しようとした有色人種の女性たちよりも、主人公の白人女性の声の方を大きく描くものだから」[3]

[1] https://variety.com/2019/film/news/evan-rachel-wood-jim-sturgess-shinobu-terajima-in-sadako-sasaki-eleanor-coerr-film-ian-bryce-independent-1203204260/

[2]  http://www.papermag.com/evan-rachel-wood-hiroshima-1-2636547769.html

[3]  https://bit.ly/2QcDGTr

画像:T GrandによるPixabayからの画像




佐藤更紗

国際基督教大学卒。映像業界を経て、現在はIT業界勤務。目下の目標は、「映画を観に外へ出る」。


コメントを残す