米司法省は、Netflixをはじめとする配信サービスをアカデミー賞の選考対象から除外するというルール変更を行うかもしれないという、映画芸術科学アカデミーに対し、独占禁止法に違反する可能性があるとして、警告を行った、とVarietyが報じた。Varietyによると、司法省反トラスト局長が、アカデミーCEOに対し、新しいルールは「競争を抑圧しかねない」とする書状を送ったとされる。アカデミーの広報担当者は、書状を受け取ったことを認め、すでに返答を送ったとし、4月23日に行われる定例会議で検討を行うと述べている。[1]

 この書状は、今年のアカデミー賞で、監督賞、外国語映画賞、撮影賞を獲得した『ROMA/ローマ』がNetflix製作であることを受け、配信で公開された作品を除外しようというルール変更を、アカデミー会員であるスティーブン・スピルバーグが推し進めようとしているというニュースを受けて、アカデミーに対して出されたようだ。[1]

 今や配信サービス業者による映画製作はNetflixだけに限らず、Amazonもすでにいくつかの作品を製作している。Netflixも当初の方針を軟化させてきており、『ROMA/ローマ』は数週間限定で劇場公開されている。しかし、コンテンツ部門の代表がBloombergに語ったところによると、これ以上長期で劇場公開を行っていく予定はないとのことだ。[2]

 この司法省の動きに対し、批判の声も上がっている。The Hollywood Reporterは次のように指摘する。独占禁止法は、本来、消費者の利益のために市場競争を促進するためのものである。アカデミー賞からは、消費者は直接影響を受けず、スタジオこそが自社作品の公開方法やタイミングに関して影響を受ける立場であるため、本来の意図とは外れるように見える。また、同時に、アカデミーが短編映画を除外しようとしてきたことや、Netflixに反対する映画館経営者たちに対しては、何も対処しようとしてこなかったことにも疑問が残るとする。[3]

 配信サービス業者製作の映画が多く製作されるようになったことで、アカデミー賞や各映画祭だけではなく、既存のスタジオを中心とした映画業界自体が対応を迫られているが、今回、司法省による介入があったことで、より一層、今後、映画業界がどう対応していくのか、動向が注視される。

[1] [2]

http://fortune.com/2019/04/02/netflix-oscars-academy-awards-antitrust-doj/

[3]

https://www.hollywoodreporter.com/thr-esq/justice-department-backs-netflix-oscars-feud-but-is-an-antitrust-issue-1199000

佐藤更紗

国際基督教大学卒。映像業界を経て、現在はIT業界勤務。目下の目標は、「映画を観に外へ出る」。


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